確定申告をしなかったことが重大な犯罪になる場合とは

刑事事件

確定申告を怠った場合の刑事責任について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 事例


一人親方として、内装工事などを行っていたAさんは、売上の管理を怠っていたため、売上を、自身の名義の口座に入れてもらう場合もあれば、妻であるBさんの口座に入れてもらうようにしていました。
Aさんは、開業以来、自身の名義の口座に入った分のみについて確定申告を行ってきましたが、次第に、申告して納付するのは馬鹿馬鹿しいと考えるようになり、令和○年分は確定申告をしませんでした。

2 確定申告をしないとどうなる?


所得税の納税義務は期間の経過によって成立し、一定の確定手続を経て納付すべき税額が確定します。
納付すべき税額を確定させる手続が確定申告と呼ばれるものです(所得税法120条1項)。
会社員のように源泉徴収される人は、その収入のみであれば確定申告を行う必要はありません。
しかし、今回の事例のような個人事業主として収入を得ている人や、会社員であっても副業や投資などで収入があった人については、確定申告を行う必要があります。
正当な理由がなく確定申告を行わない人については、単純不申告罪として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとされています(所得税法241条本文)。
また、故意に確定申告書等を提出しないことにより租税を免れた場合、単純不申告逋脱(ほだつ)罪として、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または罰金を併科)に処するとされています(所得税法238条3、4項)。

3 Aさんはさらに重い罪に問われる?


ところが、Aさんのような人が、上記の犯罪ではなく、(狭い意味での)逋脱罪(以下、単純に「逋脱罪」というときは、狭い意味での逋脱罪をいいます。)とされた事例があります。
この場合の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(または罰金を併科)とされています(所得税法238条1項)。
逋脱罪とは、「偽りその他不正の行為により」、所得税を免れた場合をいいます。
「偽りその他不正の行為」とは、逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行うことをいいます。
そうすると、Aさんは、売上の一部を妻名義の口座に入れてもらっていたにすぎず、税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行ったとはいえないようにも思われます。
しかし、判例は、売上を帳簿に正確に記載していたところ、その一部を仮名・借名の預金口座に入金保管した事例で、逋脱罪の成立を認めました(最高裁平成6年9月13日決定・刑集48巻6号289頁)。
この決定では、「仮名又は借名の預金口座に売上金の一部を入金保管することは、税務当局による所得の把握を困難にさせるものであることに変わりはなく、ほ脱の意思に出たものと認められる以上、所得秘匿工作に当たる」としています。

4 予想される問題点・弁護活動


ここで注意すべきなのは、売上を仮名や借名の預金口座にて入金管理していたことで直ちに逋脱罪に該当するわけではないと考えられることです。
当然ですが、たまたま手違いでそうした預金口座に入金されていたということであれば、逋脱罪が成立しない可能性もあり、結局はケースバイケースと言わざるを得ません。
Aさんは、税務調査や査察を受け、さらには検察官へ告発されるということが考えられます。
そうした手続の中で、税務署、国税庁、検察庁にどのように説明していくかというのは非常に重要になり、弁護士によるアドバイスを事前に聞いて、そうした調査などに対応していく必要があります。

5 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反など多数の事件を取り扱っています。所得法違反の疑いがあるとして税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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