【制度解説】通告処分とは

通告処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも通告処分とは何でしょうか

通告処分とは、間接国税犯則事件(租税法に関する事件のことであり、個々の租税の賦課、徴収及び納付に直接関連する犯罪のことです。)で、情状が罰金以下の刑に相当する場合に、刑事手続きに先行して行われる一種の行政処分です。すなわち、通告処分は、刑事訴訟手続によらない行政上の科刑に代わる手続といえます。この処分は、かつては、国税犯則取締法に定められていましたが、現在は、国税通則法(2018年4月1日施行)に定められています。なお、関税法にも同様の規定が置かれており、間接国税扱いする地方税にも、この通告処分が適用になります。
ここで、間接税とは税金を負担する人と税金を納める人が異なる税金のことであり、間接税の代表として消費税がありますが、租税犯則手続上、間接国税として取り扱われる消費税は、課税貨物に課される消費税です。
また、酒税やたばこ税等も租税犯則手続上、間接国税として取り扱われます。

通告処分に基づく納付を履行すれば、検察官による起訴を免れることができる。

通告処分において重要なことは、課税庁が罰金などに相当する金額などを通告し、納税者がそれを履行すれば検察官に告発しないとされていること、すなわち、その場合には、検察官による起訴を免れるという点です。
国税通則法上、国税局長・税務署長は、租税に関する犯則事件の調査により犯則の心証を得たときには、その理由を明示して、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を、指定の場所に納付すべき旨を通告しなければならないとされています。
通告処分を受けた犯則者は、それを履行するか否かは自由です。しかし、通告を受けた翌日から20日以内に履行しなかった場合、検察官に告発されます。
また、通告しても履行する資力がないときや、悪質な脱税など情状が懲役刑にあたると認められるときには、通告処分をせずに直に通告されます。
なお、所得税や法人税など税金を負担する人と税金を納める人が一致する直接税の犯則事件の場合、通告処分は適用されません。したがって、この場合、直ちに検察官に告発されます。何故、直接国税と区別して間接国税にだけ通告処分が認められているかですが、間接国税の犯則事件は直接国税の場合と比べると件数が多く、通常の刑事事件によるより、行政による簡便な手続による方が犯則者の利益にかなうため、と説明されています。

通告処分の手続

通告処分は、通告書を作成し、これを犯則者に送達することによって行われます。通告書には犯則の理由、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を明示し、指定の場所に納付するように書面で通告することになっています。通告処分は、通告書が犯則者に送達されたときに効力を生じます

通告処分の問題点

行政権が、通告処分により、刑事訴訟手続によらない行政上の負担を課すことは、実質的に裁判を受ける権利を制限することにならないかという問題があります。この点は、最高裁の判例があり、最高裁は、通告処分の履行は、犯則者の自由意思に任されており、履行を拒否して、犯則事実の有無を裁判所で争うことができるので、裁判を受ける権利(憲法32条)を侵害していないとしています(最判昭和47.4.20・民集26巻3号507頁)。

最後に

脱税が発覚した場合、消費税等について通告処分に基く納付をすれば、検察官による告発・起訴を免れることができます。脱税について、刑事事件化するのを免れる方法などについてお悩みの方は、すぐに弁護士に相談しましょう。

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