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脱税が発覚する端緒の一つとなる反面調査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
A株式会社は事業を拡大することに成功し、不況下でも順調に売り上げを伸ばしていきました。A株式会社の代表取締役は、税負担を回避してさらに利益を上げようと考え、売り上げの一部を計上せずに、会社とは別の口座にプールしていました。売り上げの一部を除外し始めてから数年が経ったある日、取引先であるB株式会社に税務調査が入りました。B株式会社の担当者の話によると、A株式会社との取引についても聞かれているようでした。
(この参考事件はフィクションです)
脱税事件で生じるリスク
A株式会社が行った売り上げの除外は、本来申告すべき内容を申告せずに納税を免れる虚偽無申告ほ脱犯にあたり、典型的な脱税の手法といえます。申告内容の不審点から脱税を疑われた場合、税務署による税務調査や国税局による査察調査につながっていきます。
申告内容に誤りがあると判明した場合、本来納めるべき税金を納付しなければならなくなるのはもちろんですが、法定期限までに納付がされていなければ延滞税がかかりますし、別途、加算税を課される可能性もあります。参考事件のA株式会社の場合、支払いを免れていた法人税(本税)のほか、延滞税や過少申告加算税、重加算税が課される可能性があります。
税務調査や査察調査では収まらず、国税局に告発されてしまうと、刑事事件となります。刑事事件となった場合、告発を受けた検察庁によって代表取締役ら役員が逮捕されることもあります。検察庁に起訴された場合は刑事裁判が行われ、有罪となれば多額の罰金や実刑を含む懲役刑が言い渡されることになります。
反面調査に警戒を
税務調査は脱税の疑いがある納税義務者に対してだけ行われるわけではありません。時には納税義務者と取引関係のある者にも行われ、これが反面調査と呼ばれています。
反面調査の対象としては、取引のある企業や銀行などが挙げられます。参考事例のB株式会社に対して行われた税務調査は、A株式会社についての聞き取りもされているため、反面調査である可能性が高いと考えられます。脱税の疑いがある企業に発覚することがないよう、反面調査は秘密裏に行われますが、調査が行われた取引先から税務調査があったことを知ることもあります。
反面調査は、脱税の疑いがある納税義務者に対して税務調査を行うための下準備です。そのため、いずれは脱税の疑いがかけられている納税義務者のもとにも税務調査が入りますし、場合によっては最初から国税局による査察が行われる可能性もあります。
脱税事件になってしまうと、延滞税や加算税の負担や多額の罰金が科されるリスクがあることは説明しましたが、それ以外にも問題があります。税務調査や査察においては、会社にとって重要な書類が多数押収されることになりますし、役員が逮捕されてしまえば、事業の継続そのものが困難になってしまうおそれがあります。また、国税局による告発や検察庁による起訴は報道もされるため、取引関係のある企業や銀行から抱かれる印象の悪化も無視できません。
反面調査が行われているかを知ることができるかは偶然にも左右されますが、参考事件のA株式会社のように、取引先から税務署の動きを知ることもあり得ます。反面調査がされていると判明した場合、速やかに脱税事件に詳しい弁護士に相談することが重要です。早期に法律の専門家である弁護士の助力を得られれば、税務調査や査察における適切な受け答えができるよう対策が立てられますし、修正申告によって告発や起訴を回避する可能性を高めることにもつながります。
修正申告などの場面では主に税理士が動くことになりますが、裁判となった場合は弁護士による対応が必要です。反面調査の段階から告発や起訴も見据えた法的アドバイスを弁護士から受けることで、脱税事件の全体図を俯瞰した対応が可能になります。取引先に対する反面調査が行われていると分かった場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。