脱税事件における刑事手続の特徴

刑事事件

脱税で刑事事件化した場合の特色や、刑事裁判において減刑を求めるうえで有利になる事情について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

脱税に関する罰則規定

法律上、正式な定義があるわけではありませんが、脱税とは、不正の目的をもって払うべき税金の納付を免れたり、本来受けられない還付を受けたりすることを指します。
それゆえ、脱税を行った場合、法人税法や所得税法といった、各種税法に違反していることになります。法人税を例に挙げると、架空の経費計上のように、虚偽の申告内容によって納税を免れた場合(虚偽過少申告ほ脱犯)は、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と罰則が規定されています(法人税法159条1項)。税法ごとの罰則については、こちらの記事もご参照ください。https://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_syurui/

脱税と刑事事件の関係

もっとも、あらゆる脱税が刑事事件として扱われるわけではありません。脱税事件として刑事事件化するのは、国税局によって検察庁に告発された場合です。税務署による税務調査や、国税局による査察調査を実施した場合でも、検察庁への告発がされなければ、刑事事件にはなりません。
脱税の金額や手法によっては、各調査を行ったうえで、修正申告を促されて終わりということもあります。このように,脱税を行ってしまった場合でも、必ずしも刑事事件化するわけではありません

脱税事件における刑事裁判の特徴

検察庁に告発されてしまうと、通常の刑事事件と同様に、逮捕や勾留といった身体拘束や、取調べが行われることになります。
告発を受けても起訴されない場合はありますが、ひとたび起訴されてしまうと、ほぼ例外なく有罪になってしまうのが脱税事件における刑事裁判の特徴です。検察官が起訴できる事件を選別しているため、通常の刑事裁判でも有罪率は高いですが、脱税事件ではその傾向がより顕著になります。
国税局による令和4年度の発表資料においても、一審判決すべてに有罪が言い渡されており、有罪率は100パーセントになっています。
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sasatsu/r04_sasatsu.pdf
すなわち、脱税事件で検察庁に起訴されてしまうと,個人については懲役刑が,法人に対しては罰金刑が必ず科せられることになります。

脱税事件の刑事裁判で有利になる事情

懲役刑に執行猶予がつかなければ、刑務所へ服役することになります。また、脱税事件では高額な罰金も科せられます。そのため、服役の回避や罰金の減額を求めるためにも、脱税事件において裁判所に考慮される有利な事情(情状)が何かを把握しておくことは、極めて重要になってきます。
脱税事件の刑事裁判において、実際に裁判所が判決理由の中で有利な事情として言及したものとしては、以下のような事情があります。まず、脱税以外の通常の刑事事件とも共通する事情としては、事実を認めて反省していることや、前科がないこと、個人については監督者の存在があることなどが挙げられます。
脱税事件に特有の事情としては、告発後の取調べといった捜査のみならず、それ以前に行われた税務調査の段階で積極的に協力したことも、有利な事情として考慮されています。
再犯防止の観点からは、経営体制の改善も有利な事情となります。具体的には、脱税に関与した者が役員を辞して代表者を刷新したこと、外部から顧問や監査役、監査法人を招くといった事情が考慮されます。
脱税は国の課税権を侵害するという意味では財産犯でもあるため、事後的な被害(損害)の回復、すなわち、修正申告を行うことで本税や重加算税などの各種附帯税を納付したことも有利な事情とされます。なお、判決の時点で納付が完了していなくても、納税のための資金を準備していることも考慮されています。
このように、脱税の刑事裁判において有利に考慮される事情は、ある程度の類型化はできます。もっとも、具体的な刑事裁判においてどのような判決が見通されるか不安な場合は、弁護士に相談することが重要です。早期に相談を行えば、刑事事件化に至る前に解決が図られるケースもあります。脱税をしてしまってお悩みの場合は、まずは弁護士にご相談ください。

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