【事件解説】海外取引をめぐる脱税事件の捜査を詳しく解説

脱税捜査

海外取引をめぐる脱税事件の捜査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。

事件の概要

甲は、PC関連機器の製造販売等を目的とするA会社の代表取締役として、同社の業務を統括していたものであるが、A社の業務に関して法人税を免れようと企て、令和3年7月7日から令和5年6月30日までの2事業年度において、外国(C国)所在のX社からゲームソフトの版権を購入したと仮装して架空外注加工費数億円を計上するなどの方法により所得を過少に申告して法人税を免れたという海外取引をめぐる事案です(実在しないフィクションの事案です。)

甲は海外取引であればバレないと思っていた・・・

本件の脱税スキームは架空外注加工費の計上による期末利益の圧縮という極めてシンプルなものではありましたが、甲としては、海外の取引先であれば、査察は反面調査が難しいであろうし、検察の強制捜査も海外には及ばないだろうと考えていたので、かなりの自信をもっていたようでした。確かに、査察の調査も検察の捜査も、主権の及ぶ国内での活動が原則です。しかし、査察や検察は、そんなに甘いものではありませんでした・・・この事案、どのように脱税工作が暴かれていったのでしょうか・・・。
その内幕を見ていきましょう,

こうして事実は明らかにされていった・・・

甲は、査察に対して、X社からゲームソフトの版権を購入したのは事実であり、これによって計上した経費は正しい会計処理によっていると主張し、その主張に見合う契約書やその版権によって作成したソフトウェアのサンプルなども提出するなどしていました。
しかし,査察は以下のような事実をつかみました。
①A社がX社宛てに送金した資金の送金名目が版権購入代金などではなく、事務用品購入、家具購入などとなっていたこと
②上記①のX社宛ての送金の一部が、外国銀行の甲名義の預金口座に移されて、株式購入に充てられるなどしていたこと
③甲が提出したX社との契約書に記載された契約金額と実際の支払額が一致しておらず、契約金額自体の合理的算出根拠が判然としないこと
などの事実が次々と明らかになっていきました。
そして、これらの事実調査と並行して、国際的に企業リサーチを行っている民間信用調査機関に調査を依頼したところ、C国にX社の商業登記はなく、会社番号もC国の現地法人である別会社であることが判明しました。

告発、そして検察による強制捜査・・・

甲は、虚偽弁解を維持し続けたため、査察から刑事告発をされ、検察の捜査が始まりました。そして、甲は逮捕・勾留されて、検事による取調べにおいて事実を追及され、結局、「A会社に多額の利益が出ていたことから、今後の事業拡張の資金に充てようと考えて、海外取引による架空計上であればバレることもあるまいとの甘い見通しから今回の事件を起こした」旨の自白をするに至り、結局、起訴されて、有罪判決を受けました。

まとめ

海外取引を利用した脱税は、発覚し難いように思いますが、紹介した事案のように、国税局による査察調査や検察による脱税捜査は、そんなに甘いものではありません。いったん犯則嫌疑者としての容疑がかけらると、水面下において相当期間にわたって重厚な犯則調査が行われ、事実関係がどんどん暴かれていきます。
このような段階に至っては、もはや税理士だけでは対応できません。犯則調査は将来の告発、起訴にもつながる重要な局面ですので、少しでも早く刑事事件を専門に取り扱う弁護士に相談し、弁護士と税理士がチームを組んで対応できる態勢を立てた方がよいでしょう。

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