詐欺で得た利益と所得税~②~

前回に引き続いて、詐欺によって得た利益と所得税の関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、ペナルティや刑事罰について解説します。

無申告のペナルティ

詐欺によって得た利益も課税対象となるため、一時所得か雑所得か関係なく、確定申告をして納税する必要があります。
Aさんは遊興費などにすべて使い切ってしまっていますが、だからといって申告をしないでいると、加算税や延滞税というペナルティを受けることになります。

①無申告加算税
確定申告期限内に申告をしていない場合、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税は、原則として、納税すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額になります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合、納税すべき税額は1545万4000円でしたので、約300万円が無申告加算税として本来納税すべき税額に加算されることになります。

②重加算税
仮装隠ぺいなどの方法により、無申告であることが悪質性が高いと判断された場合に、無申告加算税に代えて課せられます。
重加算税は無申告加算税の基礎となる税額の40%に相当する額が課せられることになります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合には、1545万4000円の40%が重加算税として課せられる税額となりますので、約620万円を本来納税すべき税額に加算して納めなければならなくなります。

③延滞税
納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
税率は、納税すべき日から2か月までは7.3%、2か月を過ぎると14.6%が本来納税すべき金額にかかってきます。

刑事事件化する場合

本件のAさんには、税務調査が入っていますが、悪質性が高かったり脱税額が巨額になる場合には、査察調査に発展することもあります。
査察調査は税務調査と違い、強制的に調査をすることができ、最終的には刑事告発に至る場合が少なくありません。実際、査察調査から刑事告発される割合は約70%と言われています。

本件のAさんが問われることになる犯罪としては、詐欺のほかに、所得税法違反と地方税法違反が考えられます。

①詐欺を問われる場合
Aさんが詐欺に問われる場合、一般的には被害者からの被害届などを受理した警察が捜査を行います。
Aさんが詐取した金額からすれば、逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。
逮捕された後は、最大20日間に及ぶ被疑者勾留中に警察による取り調べなどが行われ、最終的には検察官が起訴・不起訴を判断します。
検察官が起訴するより前に、被害者に詐取金の全額を弁償し、示談が成立していれば、不起訴となる可能性もありますが、示談がなければ起訴される可能性が高いといえます。
起訴されると保釈が許可されない限り、身体拘束を受けたまま裁判を受けてもらうことになります。
Aさんの場合、判決が出る前までに被害金の全額弁償ができていれば、執行猶予付きの判決を受けることができる可能性が高くなりますが、被害弁償ができていなければある程度長期の実刑判決を覚悟しなければならないでしょう。
このように、詐欺に問われる場合には、警察の捜査を受けること、示談ができるかどうかによって処分が大きく変わることが特徴といえます。

②所得税法違反、地方税法違反に問われる場合
Aさんの場合、所得税の申告をしていないということは、住民税の納付も行っていないでしょうから、所得税法違反のほかに地方税法違反にも問われる可能性があります。
Aさんが所得税法違反や地方税法違反に問われる場合、基本的には査察調査ののちに国税局から告発を受けた検察庁が捜査を担当します。
逮捕される可能性も高いですが、逮捕された場合には、捜査を検察庁が担当している関係で留置される場所は警察署ではなく拘置所となります。
その後は詐欺の場合と同様に取り調べなどを受けて起訴・不起訴が決まります。
加算税を含めて脱税した税額のすべてを納付し終わっているといった事情があるなど事後的にでも悪質性を低くする活動ができた場合には、不起訴となる可能性もあります。
起訴をされた場合には、詐欺と同様の手続きで最終的には判決を受けることになります。
税法違反の場合の特徴として、懲役刑だけではなく罰金刑を併科することができることが挙げられます。
そのため、仮に懲役刑の部分に執行猶予が付されたとしても罰金刑が併科されて罰金刑部分に執行猶予が付されていない場合には、罰金は支払う必要があります。
このように、税法違反の場合には、検察庁が捜査を担当すること、示談ではなく税納付による被害回復を図ること、罰金刑を併科できることが特徴といえます。

まとめ

Aさんのように詐欺などの犯罪によって得られた利益も課税対象になりますので、確定申告をしていなければ、詐欺の罪とは別に所得税法違反など税法違反の罪にも問われてしまう可能性があります。
そのため、犯罪行為によって利益を得ている場合には、その犯罪だけではなく税金の問題についても考慮しておく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

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