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阪急阪神百貨店に追徴課税がなされたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
報道の内容
阪急百貨店や阪神百貨店の一部店舗で、消費税の免税が認められない日本に住む外国人に対し、免税の形で化粧品などを販売していたとして、大阪国税局がおよそ2億円を追徴課税した。
商品の転売が疑われる取引が相次ぎ、去年3月期までの3年間でおよそ20億円分について免税の要件を満たしてないと指摘された。
阪急阪神百貨店が運営する一部の店で、外国人観光客に化粧品などを販売する際に、パスポートなどで入国時期の確認をすることや、繰り返し大量に商品を購入していないかを確認することを怠り、不適切な免税販売が相次いで確認された。
大阪国税局の調査では、日本に住む中国人などが免税販売の要件の50万円に収まるように49万円台の購入を繰り返しているのが確認され、転売目的だった疑いがある。
(令和5年7月27日 NHK 関西 NEWS WEBより抜粋)
免税販売とは
通常、物品を購入する際には、消費税が課されますが、外国人旅行客などが購入する場合には、一定の要件のもと消費税が免税される場合があります。
このような消費税免税対象商品を販売することを免税販売といいます。
消費税の免税を受けるためには、①消費税免税店であること、②免税購入対象者であること、③免税対象商品であることなどの要件が必要になります。
消費税免税店とは
外国人旅行者等の免税購入対象者に対して特定の物品を一定の方法で販売する場合に、消費税を免除して販売できる店舗のことです。
一般型、手続委託型、自動販売機型の3種類がありますが、いずれの場合も申請が必要になります。
消費税免税店以外で物品を購入した場合には、仮にそれが免税対象商品かつ免税購入対象者であったとしても、免税とはなりません。
免税購入対象者とは
「外国為替及び外国貿易法」に規定されている「非居住者」が免税購入対象者となります。
たとえば、一般的な外国人旅行者は「非居住者」になります。
また、日本人であっても、2年以上外国に滞在する目的で出国して外国に滞在しており、かつ、一時的に日本に入国し、滞在期間が6か月未満で出国する者も「非居住者」に含まれます。
一方、外国人であっても、日本国内にある事業所に勤務する者や日本に入国後6か月以上経過している者は、免税購入対象者とはなりません。
免税購入対象者であるか否かを確認するために、パスポートの確認をすることが義務付けられています。
パスポートの①旅券の種類、②旅券番号、③指名、④国籍、⑤生年月日、⑥上陸年月日、⑦在留資格を確認することになっています。
日本に上陸して6か月未満であるかや免税ができる在留資格かどうかを確認します。
免税対象物品とは
通常生活の用に供する物品が国外に持ち出されることを前提に免税対象となりますが、一般物品と消耗品の区分により、免税要件や包装方法が異なります。
①一般物品(家電製品や衣類、宝飾品など)
同一の免税購入対象者に対して、同一店舗における1日の一般物品の販売合計額(税抜)が5000円以上のもの
②消耗品(食品類、医薬品、化粧品等)
同一の免税購入対象者に対して、同一店舗における1日の消耗品の販売合計額(税抜)が5000円以上、50万円以下の範囲内のもの
指定された方法による梱包が必要。
※指定された方法による梱包を行うことなどを条件に、一般物品と消耗品の合算が可能。
報道の事件では
報道された百貨店の事件では、日本に住む外国人が購入していたということですので、免税購入対象者に該当しない人に販売していた可能性が高いということになります。また、国内で転売する目的も疑われるということですので、国外に持ち出されることを前提としている免税対象物品にも該当しない可能性が高いということになります。
そのため、免税対象とならず、本来であれば消費税が課税され、販売店である百貨店は消費税を納税する義務があることになります。
今回は、この消費税分を納税していなかったため、追徴課税がなされたということができます。
免税販売で気を付けることは
免税販売をする上で気を付けないといけないことは、①しっかりと免税購入対象者に該当するかを確認すること、②購入目的を確認することです。
転売目的が疑われる場合には、販売しないという強い姿勢で臨む必要があります。
また、何度も同じ人が購入していないかなどのチェック体制を構築することも必要になります。
免税購入対象者に該当するか否かはパスポートをきちんとチェックすることが大事ですが、中にはパスポートが偽造の場合もあります。
販売店にとっては、これらのチェック体制を整えるための人的物的システムの構築にかかる費用や労力の負担などがネックになるでしょう。
しかし、販売店にとっては、消費税が免税されることによる大きなメリットもあるため、メリットとデメリットを比較して、消費税免税店の申請をするかどうかを決める必要があります。
消費税免税で不安がある場合には、税理士や弁護士など専門家にアドバイスをもらいましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料です。