【制度解説】相続時精算課税という制度を知っていますか?どのような制度かについてメリットとデメリットを解説

相続税

相続時精算課税とはどのような制度かについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がメリットとデメリットを解説します。

相続税

相続時精算課税とは何やら難しそうな言葉ですが、相続税の申告納付方法の一つと考えてもらえばよいでしょう。

通常、相続税は、どなたかが亡くなったときに、その亡くなった方(被相続人といいます。)の財産を相続により取得した配偶者や子供など(相続人といいます。)に対して、その取得した財産の価格に応じて課される税金です。
民法という法律に、「相続は死亡によって開始する。」と定められていますが(民法882条)、相続税は、まさに、この被相続人の死亡をきっかけとして、その死亡時の被相続人の遺産総額から基礎控除を経て課税遺産総額を出し、この課税遺産総額に対し法定相続人ごとの法定相続分に対して相続税額が算出されてこれを合算した相続税の総額に対して各相続人の遺産取得割合に応じた相続税額が算出
れ、これを各相続人が申告納付することになるわけです。(国税庁HP「相続税の計算」参照)

贈与税

他方、被相続人などになりうる立場の人(被相続人等といいます。)が、亡くなる前に、相続人など(相続人等といいます。)となりうる立場の人にあらかじめ財産を渡すことを贈与といいますが、これにも贈与税という税金がかかります。贈与は、被相続人が亡くなる前にその財産の一部を相続人等に渡しているわけですから、見方をかえれば、被相続人等が生きている間の相続の前倒しともいえるわけです。

そうすると、被相続人が亡くなる前に、相続人等に対して多くの財産を贈与すると、それだけ被相続人等の遺産総額が減って、結局、相続税の総額もそれだけ減ってしまうことになります。このような相続税の負担における不公平を解消するため、こうした贈与については贈与税が課せられることされており、そのような意味から贈与税は、相続税をおぎなう税金という意味で、相続税の補完税という言い方もされています(こうした贈与税の性質から、単独の贈与税法という法律ではなく、相続税法の中に定められており、一税法二目と呼ばれています。)

このように相続税と補完関係にある贈与税ですが、相続税に比べると、基礎控除が110万円と低額であり、税率がとても高いことから、従来は税負担の重い贈与を避けて、相続の機会、つまり被相続人等が死亡するのを待って資産の移転が行われてきました。
しかし、超高齢化社会を迎え始めている現在のわが国においては、これを放置していては、高齢者の保有する資産活用は滞り、日本経済の活性化のためにも好ましいものではなりません。そこで、創設されたのが、相続時精算課税制度です。(国税庁HP「財産をもらったとき」参照)

相続時精算課税のメリットとデメリット

この制度は、特定の関係にある贈与者(被相続人等)受贈者(相続人等)と間で、贈与を行うに当たり、贈与税の申告とともに相続時精算課税選択届出書を提出すると、贈与額のうち2500万円(特別控除)に110万円(基礎控除)を加えた2610万円が控除されます。
つまり、年間2610万円までの贈与であれば贈与税は課されないのです。ただこの制度は、贈与時に課税されないということであり、相続が発生した後は、贈与した財産を相続財産に合算して相続税が計算されますので、結果的には贈与税が課せられないだけで、相続税は科せられますので、直接的に節税になるというものではありません。しかしながら、本来の相続財産を、相続が開始される前に、贈与税の負担を軽くしてこれを必要とする若い世代に有効に活用させることができるという意味ではとても意義のあるものです。
少し注意すべき点としては、一度、相続時精算課税制度を利用とするとあとで変更ができなくなることのほかに、一定の小規模宅地について相続税評価額を最大80パーセントまで減額できる小規模宅地等の特例が利用できなくなることなどのデメリットもあります。

平成27年に、相続税の基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」から「3000万円+600万円×法定相続人数」に大幅に減額されました(「相続税はややこしい?②」も参照)。核家族化が進み法定相続人自体が少ない中で、ある程度の金融資産を持ちこれに不動産を加えるとあっというまに基礎控除額を超えるケースは、今や一般のサラリーマンや個人事業主に広がっているといっても過言ではないでしょう。こうした中で、相続時精算課税制度などは、これからますますもって欠かせない節税対策の智恵となることでしょう。

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