
名義預金の申告漏れ、相続税法違反に問われたが無罪に(フィクションです)
ある日、一家の大黒柱のお父さん、56歳が急逝しました。お父さんは、いわば、一人親方で建築の仕事をしていて、お爺ちゃんから相続した財産を併せて、3億円ほど持っていました。そのうち、奥さんの名義で1500万円、子供達3人にそれぞれ500万円ずつ預金されたものがありました。
奥さんは、突然の夫の死に直面し、慌てふためきましたが、一番上の長男がまだ中学生だったので、なんとか喪主をつとめて葬儀を済ませました。そのあと、奥さんは、生前にお父さんが税金の申告などをお願いしていた税理士さんに、相続のことを相談にいきました。奥さんは、税金のことはほとんどわからなかったので、その税理士さんの言われたとおり、お父さん名義の預金残高証明書を取るなどしていました。そして、なんとか相続税の申告と納付を済ませたのです。
ところが、その後、税務調査が入り、名義預金について指摘を受けました。名義預金とは、もともと亡くなった被相続人がお金を出しているのですが、その預金口座の名義が妻や子供となっているような預金のことです。こうした名義預金は、被相続人以外の者が名義人であっても、被相続人が元手を出しているような場合は、原則として、被相続人の相続財産として加えて相続税を計算する必要があります。
この件では、奥さんが、自分の名義や子供達の名義になっている預金は、お父さんの財産ではないと考えて、最初から申告しませんでした。
この点について、弁護人は、奥さんは、そもそも相続税に関する知識などがほとんどなく、むしろ無頓着であったこと、奥さんが亡き夫の仕事を手伝っていたことなどから、亡き夫から奥さんの分や子供の分もちゃんと貯金しておいたと聞き及んでおり、それらの預金は、夫の預金ではなく自分と子供達の預金であると思っていたこと、税理士から名義預金についての明確な指導がなかったこと、税務調査において、殊更に名義預金を隠すなどぜずおり、それらの事実は当局によって容易に発見できる状況にあったことなどを主張立証しました。
その結果、裁判所の判断としては、意図的に相続税を脱税しようとしたものではないとの判断で無罪となりました。
脱税とは
脱税は、相続税に限らず、所得税も法人税も同じですが、「偽りその他の不正の行為」により税を免れることで成立する犯罪です。この「偽りその他の不正の行為」というのは、脱税の意図をもって、税務署などが税金を課することができなくなったり著しく困難になったりするような何らかの偽計その他の工作、つまり意図的なごまかしの行為のことを意味します。
ご紹介した事例では、その前提となる事実からして、奥さんに、わざと相続税を脱税しようとする意図はなかったと認定されたもので妥当な判断だと思われるものでした。
誤った申告が全て犯罪となり処罰されるわけではありません。それにもかかわらず、国税当局や捜査当局が、これは脱税だと判断し、厳罰を求めてくることがあります。
このような事態に至り、国税の調査や査察が入るなどした場合は、いち早く、脱税事件を専門的に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談にこられることをお勧めいたします。
