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【はじめに】
FXは小さな利益でも積み上がるため、申告漏れが起きやすい投資です。
国内の店頭FX(外国為替証拠金取引)の利益は、税務上「先物取引に係る雑所得等」として扱われ、他の所得とは区分して課税されます。
この区分は「申告分離課税」で、給与などと合算して税率を計算するのではなく、一定の税率で別枠計算する方式です。税率は原則として所得税15%と地方税(住民税)5%で、これに復興特別所得税が上乗せされます。
「先物取引に係る雑所得等」とは、一定の先物取引に関する所得をまとめて計算するための所得区分です。損失が出た年でも、同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で損益通算ができたり、一定の要件で翌年以後3年間の繰越控除ができたりします。
ただし、これらは申告を前提にした制度なので、手続を誤ると不利益が大きくなります。
本記事では、FX投資の課税リスクと刑事化の落とし穴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
会社員のCさんは、マイホーム購入後に初年度の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるため、所得税の確定申告をしました。
その年、店頭FXで12万円の利益がありましたが、「給与以外の所得が20万円以下なら申告不要」と思い、申告書に記載しませんでした。
ところが、確定申告をする以上、その年の所得は原則として申告書に反映させる必要があり、後日、税務署から年間取引報告書(年間損益の資料)などの提出を求められました。
(事例はフィクションであり、実在の依頼者、その他個人、会社、団体とは一切関係ありません。)
【解説】
この事例の落とし穴は、「20万円以下なら申告不要」という話を、どんな場面でも使える一般ルールだと誤解してしまう点です。
給与所得者について、一定の場合に「給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要」とされる整理はあります。
しかし、これは「そもそも確定申告をしなくてよい人」に関する省略の考え方であり、控除を受けるために確定申告をする場合まで、無条件に“免除”してくれるものではありません。
住宅ローン控除の初年度は、控除を受けるために確定申告が必要になります。
このように「控除を受けるために確定申告をする」と決めた以上、申告書にはその年の所得を原則として反映させる必要があり、FXの利益だけを外すと申告漏れになり得ます。
さらに、所得税の確定申告を省略できる場合でも、住民税(市民税・県民税)は別途申告が必要になることがあります。
自治体によって案内は異なりますが、「給与所得者で給与所得以外の所得が20万円以下の場合にも、市民税・県民税の申告が必要」と明記している自治体もあります。
つまり、「所得税は出さなくてよいと思った」というだけでは安心できず、住民税側で問題が残ることがあります。
【逮捕・起訴されるの?】
FXの申告漏れが直ちに刑事事件(逮捕・起訴)になるわけではありません。
多くは税務調査などで発覚し、本税の不足分に加えて延滞税や加算税(無申告加算税・過少申告加算税、事情により重加算税)が問題になる、という行政上の処理で終わります。
ただし、事情によっては国税局査察部(いわゆるマルサ)の調査対象となり、検察庁への告発を経て刑事手続に進むリスクが高まります。
国税庁も、査察制度は「悪質な脱税者に対して刑事責任を追及」することを目的とすると説明しています。
刑事手続に進みやすい典型パターン
1)「隠ぺい・仮装」などの工作がある
・帳簿や資料を作り替える
・架空の取引を入れる
・名義や口座を使い分けて所得を隠す
このような行為は「隠ぺい・仮装」と評価されやすく、悪質性が強いと見られます。
また、重加算税は、納税額を少なく見せるための隠ぺい・仮装があった場合に課され得る重い加算税です。
2)「税を免れる目的」が疑われる(故意の無申告)
単なる失念ではなく、利益が出ていることを知りつつ申告を避けた事情があると、処分が重くなる方向に働きます。
特に、説明を求められても資料を出さない、虚偽の説明をする、といった対応は不利になりがちです。
3)金額が大きい、反復している、社会的波及が大きい
申告漏れ額が高額であるほど、悪質性の評価は厳しくなりやすいです。
複数年にわたり同様の無申告を繰り返している場合も、偶然のミスではないと見られやすくなります。
また、世間の注目が集まりやすい業態や、同種の脱税が広がりやすい類型では、見せしめ的な波及効果も意識され、告発に至るケースがあります。
【対応策】
まず、年間取引報告書、年間損益、入出金履歴などを集め、利益と損失を確定させます。そのうえで、状況に応じて期限後申告や修正申告を行い、納付まで含めて早めに整えることが重要です。
国税庁も、税務署から調査の事前通知が来る前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税が軽くなる取扱いを示しています。
「いつ」「何を」「どこまで」申告していないのかを整理し、説明できる形にすることが、不要な疑いを招かないための実務上のポイントです。
税務(計算・申告)と、刑事化リスクの見立て(告発や捜索差押えを見据えた対応)は、論点が違うため、役割分担して整理すると安全です。
【最後に】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件の弁護活動を中心に取り扱う法律事務所ですが、税法についても知識・経験のある弁護士がそろっています。
税務調査が刑事手続に発展する局面では、特に捜査対応や身柄事件(逮捕・勾留)への備えが必要になることがあります。そのため、事実関係の整理や提出資料の作り方、取調べ対応など、刑事弁護の観点から助言できる体制を整える必要があります。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
