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【告発事例紹介】国税庁発表の告発事例②

2023-07-05

前回に引き続き、国税庁が6月14日に公開した令和4年度査察調査の概要で紹介されている告発事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

国際事案

事例5
E社及びF等は不正加担者と共謀し、同人が日本における代表者を務める外国法人に架空の支払い手数料等を計上する、あるいは暗号資産を取引所で譲渡した取引の主体を外国法人に仮装する方法などで、法人税又は所得税を免れていた。

解説
事例5で、支払い手数料を外国法人に支払ったように仮装した点は、その分を経費として計上することで過少申告となることはわかりやすいと思いますが、暗号資産の譲渡を外国法人が行ったように仮装したことも、本来であれば譲渡利益が発生しているはずなのにその部分を外国法人に割り当てていることにしているため、利益が出ていないとして過少申告をしているということになります。
国税庁は外国法人を利用したこういった国際取引についても重点事案として積極的に取り組んでいるため、国際取引だからといって安易に加担すべきではありません。実際に、この事例では加担者についても告発されています。

その他の社会的波及効果の高い事案

事例6
トレーディングカードゲームの小売を目的とする店舗を全国に展開し、各店舗においてイベントを行っているG社が、取引事実のない虚偽の領収書等を作成して、架空の仕入高を計上する方法により所得を秘匿し、法人税を免れていた。

事例7
Hは、多数の給与所得者を勧誘し、架空の事業所得の損失を計上して給与所得と損益通算することで所得税の還付を受ける不正手段を指南したうえ、内容虚偽の所得税の確定申告書を作成して同給与所得者に交付し、同人らの所得税を免れさせていた。

事例8
大手繊維会社の従業員Iは、下請業者から資金提供を受けていたが、親族が主宰する法人名で架空の請求書を作成し、当該請求書に基づき、下請業者から自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませるなどの方法により所得を隠匿したうえで、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せずに多額の所得税を免れていた。

解説
いずれの事例も架空の請求書や領収書を作成して、金銭を支払ったかのように仮装し、実際には金銭(所得)を隠していたという事例です。
隠匿していた所得の額が高額であったり、不正スキームの指南役がいたり、立場を悪用したりといった悪質性が高いといえる事案が告発を受けています。
トレーディングカードについては、一部レアカードが数千万円の値段が付いたり、最近では投資の対象となったりしており、社会的にも注目されている分野であると言えます。
こういった社会的に波及効果が高いと考えられている事案についても、告発を積極的にして公表することで将来の脱税を抑止しようという目的もあるため、注目されている業種の方については、しっかりと確定申告をしていく必要があります。

まとめ

2回に分けて、国税庁が発表した令和4年度査察調査の概要に紹介されている告発事例を見てきました。
告発を受けると刑事事件として刑罰を受ける可能性が出てくるだけでなく、重加算税などの追徴課税も課されることになります。
そのため、査察調査を受けることになった場合には、告発を見据えて早めに専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談は無料で行っておりますので、一度ご相談ください。

【告発事例紹介】国税庁発表の告発事例①

2023-06-28

令和4年度査察調査の概要が6月14日に公表されましたが、そこで挙げられている告発事例を2回に分けて紹介します。第1回目は消費税事案と無申告事案について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説をします。

消費税不正受還付事案

事例1
日用品の輸出販売や輸出物物品販売場の経営等を行うA社が、取引事実がないにもかかわらず、不正加担者と共謀して、同人が主宰する法人から化粧品等を仕入れたかのように装い、架空の課税仕入れを計上し、当該化粧品等を輸出物品販売場において外国人観光客に販売したかのように装い架空の免税売り上げを計上する方法で、不正に消費税等の還付を受け、または受けようとした。

事例2
B社等数社は、不正指南者から指示されたとおり、B社等各社の代表者からパワーストーンを仕入れたかのように仮装し架空の課税仕入れを計上するスキームを利用して、不正に消費税等の還付を受けようとした。

解説
事例1及び2はいずれも架空の仕入れを計上する形で行われた、消費税の不正受還付事件です。
消費税の還付は免税などで本来であれば支払わなくてよかった消費税を支払っている場合、後から払いすぎた消費税分を返してもらえる制度です。
消費税の還付制度を悪用して不正に利益を得ることは、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案として、国税庁が毎年力を入れて調査をしている事案です。
架空の仕入れを計上することは、明らかに脱税意図があると認定される事情となるため、悪質性が高い事案であると言えます。
事例1では一部が、事例2では全部が未遂犯として告発されているようです。
また、事例2では、会社やその代表者だけでなく、指南役も告発されています。

無申告事案

事例3
親族の死亡に伴い多額の財産を他の相続人とともに共同相続したCは、相続財産である現金を複数の場所に隠匿したうえで、相続税の申告書を申告期限までに提出せずに、多額の相続税を免れていた。

事例4 
ウェブサイト上で競艇予想情報の販売を行うDが、当該販売収入について所得税の申告義務を認識していたにもかかわらず、確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、所得税を免れていた。

解説
無申告事案とは、本来であれば確定申告書を期限までに提出したうえで納税すべきにも関わらず、申告をしないで納税すべき期限までに納税をしていないという事案です。
国税局や税務署は、様々なところから情報を集めており、たとえば事例3の場合で言えば、亡くなった被相続人の財産についての情報を事前に持っていた可能性があります。その持っていた情報と実際にCさん以外の共同相続人が申告した相続財産の額が大きくかけ離れていることから調査のメスが入れられた可能性があります。
また、インターネットサイトやSNSの情報なども税務署は積極的に集めており、事例4の場合にはそういったインターネットの情報からDさんの収益を割り出していた可能性があります。
このように、国税局や税務署が把握している財産や所得の情報と照らし合わせて税務調査などが行われることになり、うっかり忘れていたのか意図的に申告しなかったのかということを厳しき追及されてしまうことになります。

消費税事案や無申告事案は狙われやすい

消費税事案や無申告事案は毎年国税庁が重点事案として積極的に取り組んでいる事案です。
消費税の還付を不正に受けてしまっていた場合や申告期限までに申告ができていない場合には、早急に税理士や弁護士などの専門家に相談して対応してください。
早めの対応で告発を免れる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では初回の相談は無料です。

~国税庁発表の告発事例②に続く~

国税局から告発されたらどうなるの?

2023-05-03

国税局から検察庁に告発された場合にどうなるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

Aさんは、自らが代表取締役を務める甲会社の所得約1億3000万円を隠し、法人税約3500万円を脱税したとして、大阪国税局から大阪地方検察庁に告発されてしまいました。(フィクションです)

告発とは

告発とは、犯罪の被害者ではない第三者が捜査機関に犯罪が行われたことを報告し、犯人の処罰を求める意思表示のことです。
似た用語として、被害届の提出や告訴がありますが、被害届の提出や告訴は原則として被害者が行うのに対して、告発は被害者以外の第三者が犯人の処罰を求める点で違いがあります。
脱税事件においては、国税局査察部(いわゆるマルサ)が査察調査を行い、脱税の事実があり、その態様が悪質であったり、脱税額が多かったりした場合には、管轄の地方検察庁に対して告発を行います。
税金は国に対して納めるもので、国税局自体は被害者ではありませんので、被害届の提出や告訴ではなく、脱税した人を処罰してほしい場合には「告発」を行うことになります。
事例のAさんの場合は、大阪国税局が査察調査を行った結果、約1億円以上の所得隠しが発覚しており、悪質性が高いと考えられること、脱税額も3000万円を超えており多額と言えることから、刑事処罰を求めるために告発されたと考えられます。

告発されると

地方検察庁に告発されると、刑事事件としての手続きが始まります。
一般の刑事事件との違いとして、脱税事件の捜査は警察ではなく、検察官が行うことが挙げられます。
告発を受けた検察庁は、検察官が被疑者の取調べを行ったり、追加の証拠収集を行ったりします。
捜査を開始するにあたっては、逮捕される場合もあります。
逮捕されるか否かは、事件内容の軽重、証拠隠滅や逃亡のおそれの有無、共犯者の有無、自白しているか否かなどによって変わってきます。
たとえば、脱税額が巨額で、関係者が多数いる場合などは逮捕される可能性が高いといえます。
逆に、査察調査の段階から脱税の事実を認めて、脱税を指摘された部分についての税金を追徴課税も含めて納税済みである場合などは逮捕されない可能性が高くなります。
事例のAさんの場合には、脱税を指摘された部分について納税を一部でもしていれば逮捕を免れる可能性が高いと考えられます。

そして、捜査の上で、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。
不起訴となった場合には、罪に問われることはなく、身体拘束を受けていた場合には釈放されます。
一方、起訴された場合には、その後刑事裁判が開かれることになり、身体拘束を受けていた場合には、身体拘束が継続してしまいます。
起訴するか不起訴にするかは、事件内容の軽重、脱税額を事後的にでも納税しているか、前科前歴の有無などによって決まってきます。
なお、脱税事件の起訴率は約70%くらいです。
事例のAさんの場合には、脱税額が多く、所得隠しという悪質性の高い行為を行っていることから起訴される可能性が高いと考えられます。

告発されたらどうすべきか

告発をされた場合には、刑事事件となり、逮捕されたり、起訴されて裁判を受けることになったり、悪い場合では実刑になってしまう場合があります。
そのため、逮捕や起訴、実刑を避けるために、まずは脱税を指摘された部分について納税義務を果たしていくことが重要となります。
その他にも、証拠の隠滅や逃亡をしないことを誓約して、身元の引受人などの監督者を選任するなど逮捕を避けるための準備をするなど逮捕、起訴、裁判の各段階で必要な準備をしておく必要があります。
すべてを抱え込んでしまうと、刑事事件化したことによるストレスや不安で押しつぶされてしまい、十分な準備ができなくなってしまったり、そもそもどういったことをすれば有効なのかわからないといったことも考えられます。
そのため、告発されたら早い段階で専門家である弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を中心に扱っている事務所ですので、刑事事件に精通した弁護士が丁寧にアドバイスします。
ぜひ一度ご相談ください。

【事件解説】インフルエンサーに追徴課税

2023-03-22

インフルエンサー9人に対して東京国税局が追徴課税をした実際の事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

事件の概要

インフルエンサー」の女性9人が東京国税局の税務調査を受け、2021年までの6年間に合計約3億円の申告漏れを指摘された。
東京国税局から,税務調査を受けたのは,インスタグラムやYou Tubeなどでいわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる活動をする女性ら9名で,同女性らは,広告主から商品やサービスの宣伝業務を受注すると,広告主の商品である化粧品や美顔器などについて,実際にこれらを使用している写真などをSNS上に投稿するとともに,販売を促進する旨の分かりやすいコメントを載せることにより,同女らのフォロワーらに購入意欲を促進させるなどして売上げにつなげることで,広告主から,そのフォロワー数に応じた報酬を受け取り,多額の利益を上げていた。
同インフルエンサーらは,報酬の全部または一部を確定申告していなかったり,うち1名については,SNSを通じて販売したいわゆる情報商材の売上収入を,海外のペーパーカンパニーの収入と装って所得を隠すなどしていた。
(令和5年3月8日読売新聞オンラインの記事より抜粋)

税務調査

課税庁が,納税者の申告内容に疑問を感じた時に,事後の追徴課税の要否を判断するためなされるのが税務調査です。個人で対象となるのは,個人事業主,フリーランス,ITプログラマー,新規ビジネスモデルのアントレプレナーなど多種多様に及びます。これは憲法に規定された国民の納税義務に基づく課税行政の適正実現のために,所得の生じる事業に対し,過去5年(悪質ケースでは7年)まで遡って(国税通則法72条,73条),事業に関する帳簿書類その他の物件の提示若しくは提出を求め,事業者に対し,事業の収支関係等に関し質問することができるとするものです(同法74条の2)。
このような税務調査がなされれば,税務のプロによる調査からもはや逃れることはできないでしょう。
今回は,人気女性インフルエンサー9名に対し,東京国税局が税務調査をした結果,2021年までの6年間に計約3億円の所得申告漏れが判明しました。

インフルエンサーは狙われている

SNS上のインフルエンサーによる広告は,拡大を続けており,市場調査会社であるSNSマーケティング会社によると,2021年は前年の2倍以上のおよそ741億円の市場規模であり,予測によると,これが2027年には1302億円に上ると推計されています。
インフルエンサーはほとんどが個人で行ってることから、個人事業主ということになります。
企業とタイアップしたりスポンサード契約を結んだりしている場合もありますが、その場合でも個人事業主として扱われる場合がほとんどです。
今回の事件のように、広告によって得た収入は事業所得となり、所得税の確定申告が必要になります。
インフルエンサーの市場規模が年々拡大を続けている現状から、インフルエンサーは、国税局や税務署が特に注目している事業分野だといえます。
特にYouTubeやInstagramなどでは、フォロワー数が表示され、どれくらいの広告収入を得ているかが推測されやすく、税務調査に入りやすいといえるでしょう。

追徴課税

今回の事件では、インフルエンサー9人に対して、百数十万から約3000万円が追徴課税され、追徴税額は合計約8500万円に上るということです。
追徴課税とは、本来納めるべきであった税(本税)に加えて、無申告や過少申告に対するペナルティとしての加算税を加えたものです。
今回の事件では、報酬の一部を申告していなかった人には、過少申告加算税が、報酬の全部を申告していなかった人には無申告加算税が追加で徴収されていることになります。
また、今回の事件のうち1名のインフルエンサーは海外のペーパーカンパニーの収入と偽っていたとのことですが、これは悪質性の高い隠匿行為と評価される可能性があります。
悪質性が高い隠匿行為とされると、無申告加算税や過少申告加算税よりも加算される税額が重くなる重加算税が課せられる可能性もあります。
本来納めるべき税額に加えて、加算税が課せられますので、きちんと確定申告をして納税していれば課せられなかった多額の税金を追加で納めなければならなくなってしまいます。
税務署の税務調査より前に修正申告を行うことによって、こういった加算税を課せられることを防ぐことができますので、申告漏れに気づいた場合には、早めに専門家に相談して対処しましょう。

まとめ

今回の事件ではインフルエンサーに対する追徴課税がなされたという報道でしたが、うち1名については、悪質性の高い隠匿行為をしているとして重加算税の対象になる可能性があるだけでなく、刑事告発を受けて刑事罰を科せられる可能性もあります。
インフルエンサーはその社会的影響力から、税務署も目を光らせていますので、確定申告の内容に不安があったり、申告漏れが疑われてしまった場合には、早急に税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。
本記事を解説してくれた河田弁護士は「国民主権の下,国の存立を図るためには,国民一人一人が,その能力に応じて納税義務を履行し,国の財政を支えなければならないの当然となります。天網恢恢疎にして漏らさずのとおり,不正な申告や所得隠しはいずれ発覚することになりましょう。そうなれば,本来の税額に加えペナルティとして加算税の追徴を受けるなど金銭的に少なからずの損失を被ることになります。誰しも納税には負担を感じるものです。しかし,納税することが国の存立に寄与すると思えば,気持ちも変わるはずです。くれぐれも適正申告に務めたいものです。」と語っています。

【事件解説】所得税不正還付指南で刑事告発

2023-03-15

所得税の還付を不正に受ける方法を指南したとして刑事告発された実際の事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

事件の概要

「納めすぎた税金を取り戻そう」と全国の会社員にSNSで呼びかけ、不正な還付申告による脱税の手口を指南していたとして、東京国税局査察部が、東京都新宿区のコンサルタント会社の代表者Aを所得税法違反の疑いで東京地検に告発した。
Aは、東京や埼玉、愛知、岐阜、大阪、兵庫、福岡、熊本など19都府県の会社員ら109人に、架空の副業で計約7億2900万円の損失を出したように装わせ、計約4300万円分の所得税の還付を不正に申告させた疑いが持たれている。
(令和5年3月1日、朝日新聞DIGITALの記事から抜粋)

所得税の還付

会社員の方などは、給与から所得税が源泉徴収されています。
この源泉徴収をされた所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納めすぎた所得税の返還を受けることができます。このことを所得税の還付といい、還付を受けるための申告を還付申告と言います。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。

会社員の方の場合には、給与から所得税が源泉徴収されているため、基本的には所得税の確定申告をする必要はありません。
しかし、副業をしている方で、その副業で損失を出してしまった場合には、その損失部分を所得から差し引くことができるため、損失部分を含めて確定申告をすることで、納めすぎた所得税の還付を受けることができるのです。

刑事手続

Aさんは、所得税法違反で刑事告発を受けています。
刑事告発を受けた検察庁は、Aさんを被疑者として取り調べ、その後起訴することになります。

査察部から刑事告発をする場合には、事前に査察部と検察庁で協議を行い、告発をするかどうかを決定することがほとんどです。
そのため、刑事告発されると7割を超える確率で起訴まで至っています。

起訴されると、公開の法廷で裁判が開かれます。
今回のAさんの場合、架空の副業で損失が出たように装って還付申告をすることを指南していたということなので、「偽りの方法により所得税の還付を受けた」ということになり、所得税法238条1項の罪に該当すると思われます。
同条で規定されている法定刑は、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科」です。罰金については、情状によって、還付を受けた所得税の額に相当する金額以下まで科すことができます(同条2項)。

Aさんの場合には、脱税を指南していたという立場になるため、実際に不正に還付申告をした人たちとの共犯関係にあるということになりますが、申告書作成の手数料を受領したりもしていたようなので、共謀共同正犯として処罰されることになるでしょう。

実際に不正に還付を受けた会社員の方たちは、国税局から所得隠しを指摘されて、大半が重加算税を含む追徴課税を受け、修正申告と納税に応じているということですので、Aさんに対する判決については、執行猶予が付く可能性が十分にあると考えられます。
しかし、かなり多数の人に対して脱税を指南していたこと、受け取っていた手数料の総額が高額なことなど悪質性が高い事案であるともいえます。
そのため、執行猶予が付かず、実刑判決を受けてしまう可能性もあります。
また、罰金の併科も受けることになると考えられ、不正に還付を受けた金額が約4300万円ということからすれば、1000万円近くの罰金も併科される可能性が高いです。

まとめ

今回は、実際報道されている事件をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の末吉弁護士に解説をしてもらいました。
末吉弁護士は、「所得税の不正還付については、国庫に対する詐欺のようなものなので、国税局も本腰を入れて調査しますし、告発もされやすい部類に当たるといえます。そのため、もし不正還付に加担してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して告発をさけるための活動をしていくべきでしょう」と語ってくれました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。

【裁判例解説】脱税指南により支払ったコンサル料が損害として認められた事例

2023-02-22

脱税手法を指南したコンサルティング会社に支払った業務委託料を損害として認定した実際の事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

判決の概要

1.事案の概要
Aさんが代表取締役を務めるコンサルティング会社に、節税の手法に関する業務委託料(コンサルティング料)を支払ったBさんが、「指南された節税手法が違法な脱税手法であったのに、合法であるとの虚偽の説明をして、顧客に業務委託料を支払わせる事業を行うという任務懈怠行為に及んだ」と主張して、Aさんに対して会社法429条1項に基づく損害賠償として、コンサルティング会社に支払った業務委託料に相当する損害金約1482万円などの支払いを求めた。

2.判決
一部認容、一部棄却
※請求額の半分にあたる約741万円等の支払いを命じられた。

3.裁判所が認定した事実関係
・Aさんのコンサルティング会社は、節税のために利益を減らしたい顧客に対して、減らしたい利益と同じ額の請求書を発行し、その金額をコンサルティング会社に振り込んでもらい、その後、コンサルティング会社が取得するコンサルティング料を控除して現金を顧客に戻すという事業を行っており、顧客がコンサルティング会社に振り込む費用を顧客ではなくコンサルティング会社が用意する現金を利用することもあった。
・コンサルティング会社が提供する節税に関するコンサルティング業務は、実際には、顧客に課されるべき税金を減額する効果のないものであった。
・Bさんは、コンサルティング会社の従業員から上記コンサルティング業務は適法であると説明されて勧誘され、同社にコンサルティング業務を依頼することにした。
コンサルティング会社から現金8000万円を渡されたBさんは、自分の口座に8000万円を入金し、その口座からコンサルティング会社に8000万円を振り込んだ。
・Bさんは、コンサルティング料として、約1347万円をコンサルティング会社に現金で交付した。
・コンサルティング会社からコンサルティング料等として8000万円を請求する請求書がBさんに送られ、Bさんは確定申告で同請求書に基づき8000万円を経費として計上した。

4.裁判所が下した争点に関する判断
①争点1:Aさんに悪意又は重過失による任務懈怠があるかどうか
判断:コンサルティング会社の従業員が、適法な節税であるとの虚偽の事実を述べてBさんを勧誘して当該方法を実行させたのであるから、従業員の行為は不法行為に該当する。そして、従業員はコンサルティング会社の事業の一環として勧誘などをしているので、コンサルティング会社の代表取締役であるAさんには、従業員が違法に税金を免れる方法を適法な節税であると説明して勧誘したことについて、少なくとも重大な過失があったといえる。

②争点2:Bさんの損害額等はいくらか
判断:Bさんはコンサルティング料として約1347万円を支払っており、Aさんの任務懈怠行為により、同額の損害を被ったといえる。もっとも、8000万円を自ら負担していないにもかかわらず8000万円を経費として計上するという手法は、いかにも不自然不合理な内容の手法であるから、Bさんが違法な手法とまでは認識していなかったとしても、Bさんには相当な過失があるといえるため、5割を過失相殺する。

解説

今回の裁判例は、脱税指南を受けて実際に脱税をしていた人から、脱税指南をしていたコンサルティング会社社長に対して損害賠償を請求した事件です。
脱税指南をしていたコンサルティング会社と代表者については、令和元年及び2年に名古屋国税局により名古屋地方検察庁に告発がなされています。
令和3年6月に名古屋国税局が報道発表した資料によれば、「異業種交流会や節税セミナーなどと称して集めた複数の顧客に対し脱税を持ち掛け、顧客の脱税を指南することにより、多額の報酬を得ていたのに、法人税及び消費税の申告義務を認識しながら確定申告を一切せずに納税を免れていた」という内容で単純無申告逋脱犯として告発されています。

今回の裁判例で注目すべき点は、①コンサルティング業務の内容が脱税指南という違法な内容のものであった場合に、このコンサルティング業務を適法と虚偽の説明をして勧誘する行為が不法行為にあたるとされたこと、②会社の業務として行っていたことに対し代表者には重大な過失による任務懈怠責任が生じるとされたこと、③違法なものとの認識がない場合でも顧客側には5割の過失が認められたことです
なお、Aさん側は、Bさんの過失相殺以外に、Bさんが違法な手法とわかりながらコンサル料を支払っているとして民法708条類推適用の主張もしていたようです。
民法708条は不法な原因のために給付をした者はその返還を請求できないというもので、今回の手法を違法とBさんが認識していれば同条の類推適用もありえたといえます。
しかし、本件では、コンサル会社から税理士を紹介されたり、適法だとの説明を受けたりしていることからBさんには違法であるとの確定的な認識はなかったとされ、民法708条類推適用はされていません。

Aさんは名古屋国税局から刑事告発をされているため、刑事罰を受ける可能性があるほか、脱税した金額に対する追徴課税が課せられます。
この場合には、無申告加算税ではなく重加算税が課せられることになると思われます。
また、Aさんに刑事罰が科せられる場合には、罰金も併科される可能性が高いといえます。
そのため、Aさんは、罰金、追徴課税のほか、この裁判で認められた損害賠償金も支払う必要があるということになります。

国税庁が令和4年11月に発表した「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」において「経営コンサルタント」が第1位となっています
そのため、今後コンサルティング業界は国税庁が目をつけやすくなっている業界といえますから、脱税の疑いをもたれないためにも、税務処理は専門家を入れてこれまで以上に慎重に行っていく必要があるでしょう。

【裁判例解説】所得税法違反で建設会社従業員に有罪判決

2023-02-01

単純無申告ほ脱罪により有罪判決が下された実際の事件を例に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

判決の概要

①事案の概要
大手建設会社に勤務していたAさんが、特定の下請業者を選定する見返りとして、下請業者から2年間で合計1億9500万円の謝礼金を受け取ったのに、その謝礼金及び各年の給与所得について確定申告を行わずに所得税を免れていた。

②判決
懲役1年及び罰金2000万円
懲役刑につき3年間の執行猶予
(求刑:懲役1年及び罰金2500万円)

③量刑の理由
マイナス事情
・ほ脱税額が2年間で合計8300万円を超え、多額
・ほ脱率が通算95%を超える高率
・当初から裏金になるとの認識
・遊興費等に費消
・Aさんが積極的に主導したわけではないが、偽装工作を行って課税を免れようとした
プラス事情
・犯行を認めて反省の弁を述べている
・起訴後に修正申告を行い、ほ脱税額の半分を超える金額の本税を納付
・残りの税額についても納税の意思を示している
・前科前歴がない

解説

①単純無申告ほ脱罪
今回の判決は、令和3年に仙台地方裁判所で実際に下された判決です。
同判決において適用されている法律は、「所得税法238条3項」とされているので、この事件は所得税法違反事件の中でも「単純無申告ほ脱罪」に当たるとして判断がなされたということができます。
「単純無申告ほ脱罪」は平成23年の所得税法改正によって新設された罪で、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。
全く確定申告をしていないものを無申告といいますが、無申告について所得税法では、「単純無申告ほ脱罪」のほかに、無申告ほ脱罪と単純無申告罪が規定されています。

無申告ほ脱罪(所得税法238条1項)
偽りその他不正の行為により(中略)所得税を免れ」た場合の罪で、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。
単純無申告罪(所得税法241条)
「正当な理由がなくて(中略)申告書をその提出期限までに提出しなかった者」は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされています。
単純無申告ほ脱罪(所得税法238条3項)
偽りその他不正の行為があったとは言えないまでも、所得税を免れる意思をもって確定申告をしていない場合に当たる犯罪です。

②量刑についての解説
今回の事件では所得の金額が2億円ちかくあり、ほ脱税額も8300万円と非常に高額なため、告発・起訴はおよそ避けられない事件であったといえるでしょう。
また、判決の量刑理由の中で「偽装工作」を行っていたと言われており、「偽りその他不正の行為により所得税を免れた」として無申告ほ脱罪に問われてもおかしくなかったと言えます。
しかし、偽装工作を主導したのはAさんではないといわれていることから、「偽りその他不正の行為」をAさんが行ったとは認定できなかったか、検察官がその立証が難しいとして単純無申告ほ脱罪での起訴を行ったかということだと思います。
判決では「強い非難に値する」とも述べられており、悪質性が高いと裁判所は判断しているということができますが、反省をし修正申告をして実際に納付をしたり納付する意思を示していることが執行猶予を付ける決め手となっているといえます。

罰金については、「この種事犯が経済的にも見合わないものであることを感銘させるため」として罰金刑を併科しています。
ほ脱事件においては、ほとんどの事件で罰金刑が併科されており、罰金額は、ほ脱税額の20~30%くらいの金額となることが多いです。
なお、単純無申告ほ脱罪における罰金刑は所得税法238条3項によれば「500万円以下」とされていますが、同条4項によって「免れた所得税の額が500万円を超えるときは、情状により(中略)その免れた所得税の額に相当する金額以下とすることができる」とされています。
そのため、今回の事件でも500万円を超えて、「2000万円」という罰金刑を課すことができているのです。

③執行猶予を得るためには
今回の事件で執行猶予を得られたのは、反省していることだけではなく、修正申告をして実際に納税をしていることが大きかったといえます。
脱税事件では、納税義務を果たしていないことが非難の対象となるため、修正申告をして納税義務を果たす姿勢を示すことが何よりも大事でしょう。
また、今回の事件では起訴後に修正申告をしているようですが、税務調査の段階から修正申告をして納税義務を果たしていくことで、査察や告発を避けられたり、不起訴を勝ち取れたりといったメリットが生まれます。

脱税事件では、なるべく早い段階から税理士や弁護士などの専門家に依頼し、税務調査や査察、刑事裁判などに向けた活動をしていくことが重要です。
脱税事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

YouTubeの収入は確定申告必要?

2023-01-25

YouTubeでの収入は確定申告が必要か、確定申告しないとバレるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

YouTubeでの収入

YouTubeに動画をアップして広告収入を得ているYouTuber(ユーチューバー)は、近年子供のなりたい職業ランキングに登場するなど一般的になりつつあります。
また、新型コロナの影響により、YouTubeで動画を配信して収入を得ている方も増えてきています。
そんなユーチューバーの方は、一部の有名な方々を除くと、ほとんどがYouTubeから広告収入を得ていると思います。
広告収入についても、所得税の申告が必要となるのは当然です。
もっとも、広告収入のすべてに所得税が課せられるのではなく、収入から必要経費や控除額を差し引いた残りが所得税の申告が必要となる「所得」となります。
そのため、収入の額が控除される額(基礎控除は48万円)以下の場合には「所得」がないことになり、申告は不要となります。

YouTubeでの収入は税務署にバレる?

YouTubeなどのインターネットを利用している取引については、国税庁が積極的に調査を実施しています。
国税庁が発表している「インターネット取引を行っている個人の調査状況」という資料によれば、平成29年度におけるインターネット取引の実地調査件数は2015件で、コンテンツ配信やネット広告に関する件数は274件を占めています。
また、国税庁は「電子商取引監視チーム」を配置し、インターネット取引を中心に扱う専門官が監視を強化しています。
このように、インターネット取引については、国税庁が常に目を光らせている分野といえます。

そして、YouTubeの収入については、
①再生回数が表示される
②広告収入は電子送金される

ということから税務署はユーチューバーが収入をどれくらい得ているのか把握しやすいといえます。
再生回数が多く、相当程度の広告収入を得ているはずなのに、確定申告がなされていないと税務署が調査に入ることになります。

YouTubeの収入を確定申告していないと

YouTubeの収入を確定申告していないと「無申告加算税」が課せられることになります。
確定申告をしていた場合よりも多くの税金を支払わないとならなくなります。
また、意図的に確定申告をせず所得を隠していたということになれば、「重加算税」の対象となってしまう場合もあります。
さらに、無申告には刑罰も定められているため、刑事裁判にかけられる可能性もあります。

バレないから大丈夫と安易に考えていると、急に税務署が調査に来て、多額の課税がなされる場合があります。
また、チャンネルの継続が難しくなる可能性もありますので、確定申告を忘れてしまっていたという方は、早めに専門家に相談して修正申告などをしていきましょう。

金地金の密輸は告発されやすい?

2023-01-18

金地金の密輸は告発されやすいのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

金地金の密輸

金地金を海外から日本に持ち込む場合、①重量が1kgを超える又は②他の物との合計金額が20万円を超えるときには、税関に申告して税金を納める必要があります。
金地金の密輸とは、この申告をしないために消費税の納付を免れることで、消費税分の利益を得ることができるという仕組みになっています。
具体的な例で考えてみましょう。
1kg当たり500万円の金地金を5kg(2500万円相当)を輸入する場合、本来であれば税関で消費税10%に当たる金額(250万円)を納付する必要がありますが、これを納付せずに国内に持ち込み、国内で消費税相当額250万円を上乗せして売却することにより、密輸入者は250万円の利益を得ることができます。
きちんと納税をして売却しても売却益を得ることができますが、消費税分の利益と比べれば微々たるものとなってしまいます。
そのため、金地金の密輸は後を絶たず、財務省は金地金の密輸に対して2017年以降「ストップ金密輸」という対策を打ち出しており、それに伴い、関税法や消費税法の罰則が強化されています。

金地金密輸の告発事例

令和4年11月9日に財務省が行った報道発表によれば、令和3年の告発事例として以下の2事例が紹介されています。
①航空機旅客による金地金の密輸
Aらが、シンガポールから入国する際に、金地金約18kgを税関長の許可を受けることなく輸入し、消費税等約649万円を不正に免れた事案の告発
②航空貨物を利用した金地金の密輸
Bらが、中国からの航空貨物(スマートフォンホルダー)により、金地金約7kgを税関長の許可を受けることなく輸入しようとし、消費税等約467万円を不正に免れようとした事案の告発

金地金の密輸は告発されやすい

金地金密輸の告発事例で注目すべきは、免れたとされている金額です。
一般的に、査察調査などを経て告発される事案では、免れている税額が3000万円を超えていることが多いとされています。
当然それよりも低い金額で告発されることもあり、2019年7月1日に仙台地裁で下された判決にかかる事例では、逋脱税額が約1500万円でした。
しかし、上記で取り上げた告発事例では、逋脱税額が約649万円や約467万円と非常に少額にもかかわらず告発されているということになります。
この背景には、税関が金密輸への対策を強化していることに加え、国税庁も消費税事案を重点事案として積極的に告発している現状を踏まえたものと考えられます。

金地金の密輸については、関税法上の無許可輸出入罪、消費税の逋脱罪、地方税の逋脱罪の3つの罪が成立することが多いとされています。
この3つの罪は観念的競合となり最も重い刑により処断されることになるため、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科となります。
そして、罰金の上限額については、貨物の価格の5倍が1000万円を超える場合には貨物の価格の5倍、脱税額の10倍が1000万円を超える場合には脱税額の10倍まで上限を引き上げることができることになっています。

金地金の密輸事件については、告発されやすく、逮捕される可能性もあります。
不安な方は早めに弁護士に依頼をして、身体拘束からの解放や不起訴の獲得、実刑判決の回避などに向けた対策をとるのが有効です。

「お年玉」にも確定申告が必要か?

2023-01-11

「お年玉」にも確定申告が必要かどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

ジャニーズ事務所に追徴課税

2022年12月27日の報道によれば、ジャニーズ事務所とグループ会社2社が、所属タレントに渡していた「お年玉」を経費として計上し、所得税の源泉徴収を行っていなかったとして、東京国税局による税務調査で合計約4000万円を追徴課税されていることが分かったとのことです。
この報道によれば、「お年玉」を「交際費」として会社の経費に計上していましたが、実際には社長が会社の報酬から個人的に支出したもので経費には当たらないと判断されたようです。

この報道からは、会社の従業員に対して「お年玉」名目で金銭や物品を与えた場合、ボーナス(賞与)とみなされる場合や個人的な支出とみなされる場合があることに注意が必要であると言えるでしょう。
この報道のケースでは、実際には社長の個人的な支出にあたると判断されているため、本来であれば「お年玉」として支払っている金銭は社長の所得となっているはずであり、その分の源泉徴収を会社がしなければならなかったところ、会社の経費として計上していたために、源泉徴収義務を怠ったことになり不納付加算税などの追徴課税がなされたようです。
報道からはこれ以上のことはわかりませんが、会社の経費として計上していたということであれば、その分会社の収益は減額して確定申告を行っていると考えられるため、法人税について過少申告と言われる可能性もあると思われます。

お年玉をあげる側は、経費計上してもよいものかどうか慎重に判断することが必要でしょう。
税理士や弁護士など専門家に相談して申告漏れなどにならないように注意してください。

「お年玉」をもらった側は確定申告が必要か

では、お年玉をもらった側については、確定申告が必要でしょうか。
お年玉の性質によって場合分けをして考える必要があるでしょう。
①ボーナスとしての側面がある場合
ボーナス(賞与)としての側面がある場合には、所得税の確定申告が必要になります。
もっとも、サラリーマンの場合には源泉徴収を会社が行っているため、別途確定申告をする必要は基本的にありません。
ですが、お年玉としてもらったものが源泉徴収されているかについては確認しておいた方がよいでしょう。
仮に源泉徴収されていない場合には別途確定申告をする必要がある場合があります。

②もっぱら贈与としてもらった場合
お年玉は多くの場合は贈与としてもらっているでしょう。
この場合は贈与税の対象となる可能性があります。
注意が必要なのは、贈与税の対象となるのは、あくまでも個人から贈与により財産を取得した場合に限られることです。
仮に法人から贈与により財産を取得した場合には、贈与税ではなく所得税の対象となります。

贈与税は原則として、1年間に贈与を受けた金額が110万円を超えた場合にかかります。
そのため、贈与を受けた金額が110万円以下の場合には、贈与税の申告は不要になります。
気をつけなければならないのは、1年間の合計額で判断するという点です。
1回の贈与で10万円だったとしても、毎月もらっていれば1年間で120万円になるため、贈与税の申告が必要となります。

「お年玉」としてもらった場合には贈与税の申告が不要な場合も

もっとも、合計で110万円を超えていたとしても贈与税がかからない場合があります。
例えば、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものが挙げられます。
そして、この例外の中に「個人から受ける年末年始の贈答、祝物などのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」というのがあります。
そのため、例えばお正月に親族や友人200人から一人1万円ずつ「お年玉」としてもらった場合には、この例外にあたり、贈与税の申告をしなくてもよいことになります。

ですが、「年末年始」ではない時期にもらった場合には、「お年玉」としてもらったとしても例外に当たらないと判断されてしまう可能性が高くなるため、時期が重要になります。
また、たとえ年末年始に「お年玉」として一人から200万円をもらった場合も、200万円という金額は社会通念上相当とは言えないでしょうから、贈与税の対象となります。

「お年玉」は渡す側も渡される側も注意が必要です。わからないことがあれば、まずは専門家に相談しておくのがよいでしょう。

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