Archive for the ‘消費税・相続税’ Category

金地金の密輸は告発されやすい?

2023-01-18

金地金の密輸は告発されやすいのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

金地金の密輸

金地金を海外から日本に持ち込む場合、①重量が1kgを超える又は②他の物との合計金額が20万円を超えるときには、税関に申告して税金を納める必要があります。
金地金の密輸とは、この申告をしないために消費税の納付を免れることで、消費税分の利益を得ることができるという仕組みになっています。
具体的な例で考えてみましょう。
1kg当たり500万円の金地金を5kg(2500万円相当)を輸入する場合、本来であれば税関で消費税10%に当たる金額(250万円)を納付する必要がありますが、これを納付せずに国内に持ち込み、国内で消費税相当額250万円を上乗せして売却することにより、密輸入者は250万円の利益を得ることができます。
きちんと納税をして売却しても売却益を得ることができますが、消費税分の利益と比べれば微々たるものとなってしまいます。
そのため、金地金の密輸は後を絶たず、財務省は金地金の密輸に対して2017年以降「ストップ金密輸」という対策を打ち出しており、それに伴い、関税法や消費税法の罰則が強化されています。

金地金密輸の告発事例

令和4年11月9日に財務省が行った報道発表によれば、令和3年の告発事例として以下の2事例が紹介されています。
①航空機旅客による金地金の密輸
Aらが、シンガポールから入国する際に、金地金約18kgを税関長の許可を受けることなく輸入し、消費税等約649万円を不正に免れた事案の告発
②航空貨物を利用した金地金の密輸
Bらが、中国からの航空貨物(スマートフォンホルダー)により、金地金約7kgを税関長の許可を受けることなく輸入しようとし、消費税等約467万円を不正に免れようとした事案の告発

金地金の密輸は告発されやすい

金地金密輸の告発事例で注目すべきは、免れたとされている金額です。
一般的に、査察調査などを経て告発される事案では、免れている税額が3000万円を超えていることが多いとされています。
当然それよりも低い金額で告発されることもあり、2019年7月1日に仙台地裁で下された判決にかかる事例では、逋脱税額が約1500万円でした。
しかし、上記で取り上げた告発事例では、逋脱税額が約649万円や約467万円と非常に少額にもかかわらず告発されているということになります。
この背景には、税関が金密輸への対策を強化していることに加え、国税庁も消費税事案を重点事案として積極的に告発している現状を踏まえたものと考えられます。

金地金の密輸については、関税法上の無許可輸出入罪、消費税の逋脱罪、地方税の逋脱罪の3つの罪が成立することが多いとされています。
この3つの罪は観念的競合となり最も重い刑により処断されることになるため、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科となります。
そして、罰金の上限額については、貨物の価格の5倍が1000万円を超える場合には貨物の価格の5倍、脱税額の10倍が1000万円を超える場合には脱税額の10倍まで上限を引き上げることができることになっています。

金地金の密輸事件については、告発されやすく、逮捕される可能性もあります。
不安な方は早めに弁護士に依頼をして、身体拘束からの解放や不起訴の獲得、実刑判決の回避などに向けた対策をとるのが有効です。

インボイス制度が一人親方に与える影響

2022-11-23

インボイス制度が導入されることにより、建設業などの一人親方や小売店などの個人事業主にどのような影響が出るのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

インボイス制度とは

インボイス制度は、2023年10月1日から導入される新しい仕入税額控除の仕組みです。
インボイスとは、「適格請求書」という意味で、インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。
「仕入税額控除」とは、納付する消費税額を算出する際に、売り上げの消費税額(売上税額)から仕入れや経費の消費税額(仕入税額)を差し引くことができますが、この仕入税額を差し引くことをいいます。
仕入税額控除を受けるためには、現在は「区分記載請求書等保存方式」が採用されており、一定の事項が記載された帳簿の保存と区分記載請求書等の保存が必要でしたが、インボイス制度が導入されると区分記載請求書等の保存に代えて、適格請求書(インボイス)等の保存が必要になります。
そして、適格請求書(インボイス)を交付することができるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られることになります。
つまり、買手は売手から適格請求書(インボイス)の交付を受けて保存しなければ、原則として仕入税額控除をすることができなくなるということになります。

仕入税額控除の具体例

A社(仕入先)から、B社(課税事業者)が本体価格10万円で商品を仕入れ、B社は消費者に本体価格20万円で商品を販売した場合を考えてみましょう。
消費税は10%(消費税と地方消費税を合わせたもの)なので、仕入れにかかる消費税額(仕入税額)は10万円の10%で1万円、販売にかかる消費税額(売上税額)は20万円の10%で2万円となります。

A社が適格請求書発行事業者の場合
A社からインボイスの交付を受けたB社は、従来通り仕入税額控除が可能となるので、売上税額の2万円から仕入税額の1万円を差し引いた1万円を消費税として納付すればよいことになります。
B社が納付すべき消費税額=売上税額2万円-仕入税額1万円=1万円
※この場合、仕入税額の1万円については、仕入先であるA社が納付することになります。

A社が適格請求書発行事業者ではない場合
B社はインボイスの交付を受けることができないため、仕入税額控除ができないことになります。
そうすると、売上税額=納付すべき消費税額となってしまい、B社は2万円を納付しなければならなくなります。
※なお、制度開始後6年間は、仕入税額の一定割合(令和5年10月~令和8年9月までは80%、令和8年10月~令和11年9月までは50%)を控除できます。

一人親方への影響

取引先から契約を切られる可能性
インボイス制度が導入されると、適格請求書を発行できない事業者からの仕入れは「仕入税額控除」が認められないことになります。
仕入税額控除が認められないことになると、取引先(仕入れる側)が納めなければならない消費税額が増えてしまうということになります。
そのため、適格請求書を発行できない事業者との取引を取引先がやめてしまう可能性があります。
課税事業者になる必要
①で適格請求書が発行できない場合には、取引先からの取引を切られる可能性があることがわかると思います。
そのため、適格請求書を発行するために「適格請求書発行事業者」となる必要性が出てきます。
しかし、適格請求書発行事業者になるためには、「課税事業者」である必要があります。
そのため、これまで年間の課税売上高が1000万円以下のフリーランスや個人事業主は、消費税の免税事業者として、消費税の納税が免除されていましたが、適格請求書発行事業者となるために、1000万円以下の売上高しかない個人事業主の方も課税事業者となる必要があります。
一人親方の方たちについても、課税売上高を1000万円以下に抑えることで、これまで消費税の免税を受けてきた方々も多いと思いますが、適格請求書を発行するためにその免税を受けられなくなる不利益が生じるということになります。
そのため、これまで消費税納税額の分だけ得をしてきた免税事業者である一人親方の方も、インボイス制度で適格請求書発行事業者になることにより納税義務が生じることになってしまいます。

インボイス制度の導入により、一人親方の方、特に免税事業者であった一人親方の方には大きな影響が出ることになります。
早めに取引先と取引内容の確認や交渉を行ったり、適格請求書発行事業者になるための申請などをする必要があるので、わからないことがあれば専門家に相談してみましょう。

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