クリニックの脱税はどう処罰される?実刑判決の事例とリスクを解説

病院

クリニックが脱税するとどうなるかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、具体的な事例を紹介します。

事例の内容、判決結果等

今回紹介する事例は、平成5年に判決のあった事例で、Aクリニックの名称で泌尿器科、形成外科等を扱う診療所を営む医師であるB氏が、昭和63年から平成元年にかけて包茎手術等により多額の自由診療収入を得たにもかかわらず、それら自由診療収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、虚偽所得税確定申告書を提出して、所得税脱税したという事例です。

本件の脱税額は、2年分の合計で4億8000万余りに上り、ほ脱率も2期通算で約94パーセントと高率でした。また、脱税の態様は、雑誌等の広告により多数の患者を集めて行った包茎手術が自由診療であることから、その手術代の一部を除外したというものであり、B氏自ら経理担当者に指示して、まず発覚しにくい現金払い分を除外し、さらに分割払い分の分も除外した上、金庫や仮名・借名口座を含む数口の預金口座に分散隠匿し、カルテもB氏所有のマンションに隠匿するというものでした。さらに、犯行の動機を見ると、提携診療所の開設の状況や、B氏を実質経営者とする医療関係会社の設立の状況等をみると、B氏の事業欲が脱税の動機の大きな部分を占めているのは否定しがたく、本件犯行の動機に酌量の余地は乏しいものでした。

一方、ほ脱された本件2年分の本税については既に完納され、重加算税等についても相当部分が納付済みであり、現在もB氏は残額の納付に努力していること、B氏は前科前歴もなく、犯行を素直に認めて本件を真摯に反省悔悟していると認められること、B氏は本件で逮捕・勾留され、その他本件の発覚により、既にある程度の社会的制裁を受けていることなどがB氏に有利な事情でした。

判決においては、このようなB氏に有利な諸事情を十分斟酌しても、本件犯行は、その脱税額、ほ脱率、犯行態様・動機等からして、悪質な事案であり、大きな社会的非難を免れないものであるとして、B氏を懲役1年4月及び罰金1億円に処しました(なお、検察官の求刑は、懲役2年及び罰金1億3000万円でした)

自由診療収入の申告と管理について

自由診療クリニックで最も注意すべきは、自由診療収入を正確に申告・管理しているかです。保険診療は制度上、不正が起こりにくい仕組みになっています。一方、自由診療は患者から直接現金やカードで受け取るため、計上漏れや過少計上が発生しやすいと見られています。そのため自由診療が多いクリニックの場合、税務調査の際にも自由診療の売上計上漏れがないかなどについては特に厳しくチェックされる傾向があります。
本件事例は、このようないわば申告に当って不正が発生しやすい自由診療収入を多額に得たことから、悪い気持ちを起こし脱税に及んだ事例と言えるでしょう。

脱税事案では実刑判決もあり得る

本件事例では、実刑判決という重い判決が出ていますが、例えば令和6年度中に1審判決のあった脱税事件99件では、うち13人(約13パーセント)が実刑判決を受けています。この実刑率自体決して低いものとは言えないと思います。一般に、ほ脱額が合計3億円を超える場合には、全額納付しても実刑判決となる場合が多いとも言われており、この点、医療行為の収入は金額が大きいだけに、要注意です。

最後に

クリニックにおいて脱税が疑われた場合には、早期に弁護士に相談し、たとえ起訴されるに至っても実刑判決という重い判決を受けることがないよう、また、そもそも起訴や刑事告発を避けられるよう活動してもらうことが極めて大切です。

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