輸出免税制度を悪用した消費税不正還付とは? 不正還付の手口と刑事リスクを弁護士が解説

輸出

1 輸出免税制度とは

日本国内で仕入れた商品を海外に輸出する場合、商品を仕入れた際に収めた消費税は、後の申告により還付される仕組みがあります。

これをいわゆる輸出免税制度などといいます。日本の消費税が課税されるためには、その取引が、①「日本国内において」②「事業者が事業として」③「対価を得て行う」④「資産の譲渡等」であるという4つの要件を全て満たす必要があります。

日本国内において仕入れた商品を海外に輸出する取引は、これらの4つの要件を全て満たしますが、商品は消費される国で課税されるべきであるという「消費地課税主義」という考え方によって、本来、輸出取引については、免税取引とされ、消費税を課さないこととされているのです。

2 不課税、非課税、免税の違いと輸出取引について消費税還付が認められる理由

ところで、消費税が課されない取引には、この免税取引のほかに、不課税取引非課税取引があります。

不課税取引は、給与や賃金のように、上記4要件のうちの②「事業者が事業として」行う取引という要件が欠ける、又は寄付金のように③の「対価を得て行う」取引という要件が欠けることから、そもそも端から課税取引ではないものです。

これに対し、非課税取引は、上記4要件を備えるものの、社会政策的な観点などから消費税を課税しない取引です。
この非課税取引については、商品を仕入れた際に収めた消費税を事業者自らが負担しなければなりません。

消費税には仕入税額控除という制度があります。

この制度は、消費税が、事業者が国内において行った課税資産の譲渡等を課税の対象とする多段階課税構造をもっているため、事業者間の取引において発生する税の累積を回避するために、仕入取引に含まれる消費税額を控除することができるとする制度です。

非課税取引は、税の累積を考慮する必要がないため、この仕入税額控除が認められないのです。
ところが、輸出取引の場合、輸出取引に係る消費税は免税となっていますが、この輸出取引にかかる商品の仕入れには消費税が課せられており、事業者間の取引において税が累積していく仕組みは他の課税取引と何ら変わりありません。
他方で、輸出事業者は、国外において商品を消費する最終消費者に対し、自ら負担した仕入税額を転嫁することもできません。
そこで、こうした輸出取引には、消費税の免税を認める一方で、商品の仕入れの過程で生じた仕入税額控除分を申告によって後に事業者に還付することが認められているわけです。

3 輸出免税制度を悪用して消費税の不正還付を受けた事例

⑴ 金地金の輸出販売を仮装した事案

日本国内で金地金取り扱業者に金地金を販売していた事業者が、それらの国内販売について、虚偽の請求書を作成するなどの方法により、海外にある法人に輸出販売したかのように仮装し、架空の免税売上を計上する方法により、消費税を免れるとともに、不正に消費税の還付を受けている事案がありました。

金地金に関する上記のような事案は、取引金額の規制などから、今後は、漸次減少傾向にあるようですが、近時の不安定な国際情勢を要因とする金の価格高騰などから新手のスキームが出てくることも考えられるところです。

⑵ 受託業者が海外法人からの受託を仮装した事案

臨床検査業務の受託を行う業者が、海外法人に対して、虚偽の請求書を作成して、海外法人に対して、架空の支払手数料を計上する方法により、消費税を免れるとともに、不正に消費税の還付を受けていた事案が報告されています。

(いずれも「令和3年度 査察の概要」令和4年6月東京国税局査察部より)

そのほか、最近では、高級腕時計を海外に輸出・販売したように偽装して、消費税の不正還付を受けたという事案も発生しているようです。

4 まとめ

輸出免税制度それ自体は、消費地課税主義や国際競争力の強化の要請などから定められたものであり、また、これに伴う消費税の還付も、多段階課税構造を有する消費税の性質から、税の累積を回避し公正妥当な課税の実現を図るための制度です。これを不正な手段により悪用することはもとより許されませんが、こうした制度をよく理解せず、不正な手段を指南する業者のやり方に巻き込まれるなどすることもあるかもしれません。
また、免税税の還付という一見魅力的な制度であるため、ついつい、国税にバレることはないだろうと安易に考えて誘惑に流され、不正な手段に手を染めることもあるかもしれません。

そうしたことから、国税の調査や査察が入るなどした場合は、いち早く、脱税事件を専門的に取り扱う当事務所に相談にこられることをお勧めいたします。

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