【事件解説】東京国税局が不動産会社の実質経営者と公認会計士を告発

報道

港区白金の再開発事業にからみ不動産業者の実質経営者と公認会計士を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

不動産の売買で得た所得を隠し、約1億700万円を脱税したとして、東京国税局査察部は、不動産会社A社(東京都港区、解散)の実質経営者B氏と関与税理士だった公認会計士C氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発していたことがわかった。
関係者によると、A社は港区白金の再開発事業にからむ不動産取引などで多額の利益を上げたが、架空の経費を計上するなどの方法で、2021年8月期までの2年間に計約4億3700万円の所得を隠し、法人税約1億700万円を脱税した疑いがある。
隠した所得は、実質経営者B氏の口座や実質経営者B氏が代表取締役を務める別法人の金庫で管理していたとみられ、公認会計士C氏は、不正と知りながらA社の税務業務を担っていたという。
取材に対し、実質経営者B氏は、「国税局の指導に従い、修正申告を済ませた。今後は適切に申告納税する。」と答え、公認会計士C氏は「職業会計人としての責任を感じている。」と答えたという。
(2024年1月29日、読売新聞オンラインの記事より。一部改変)

法人税は法人の所得に課される税金

本事件の実質経営者B氏は、不動産業を営んでいたということですが、免れた税金は法人税となっています。
所得税も法人税も、同じく、「所得」に対する課税です。すなわち、法人税は、法人の「所得」税です。
所得の金額は、具体的には益金の額から損金の額を控除した金額のことになります。

名義上の代表者と実質経営者の違いとは

法人税法において、名義上の代表者と実質経営者の違いは重要です。ここでは、それぞれの役割と脱税に対する処罰について説明します。
名義上の代表者は、法人の登記簿の役職であり、会社法やその他の法令に基づいて選任された役員です。名義上の代表者は、法人の経営に直接関与せず、法人の名義を借りているだけである場合があります。
実質経営者は、法人の実際の経営に従事しており、その意思決定に大きな影響力を持っている者です。実質経営者は、法人の利益や財務に直接的に関与しています。
脱税行為に対する処罰は、名義上の代表者と実質経営者とでは異なります。実質経営者が脱税を行った場合、法人の経営に直接的に関与しているため、脱税額によっては、処罰される可能性があります。一方名義上の代表者の場合、法人の経営に実質的に関与している場合であれば処罰される可能性がありますが、法人の名義を借りているだけの場合、処罰の対象となることは少ないです。

刑事告発

本事件では、法人税法違反で東京地検に告発がなされています。
脱税の方法には種々ありますが、本件では、架空の経費を計上し、実際の経費より多い経費にみせかけるなどの方法で、所得を少なくして脱税をしていたと考えられます。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定しますが、国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約80%くらいといわれています。
なお、今回の報道では、既に修正申告を済ませているとされています。
修正申告とは、確定申告で過小な申告を行っていた場合に、正しい内容に修正して申告するものです。告発された後、検察官が起訴するか否かを決めますが、その判断に際し、既に修正申告をしているかどうかということは重要な事実です。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合、法人の実質経営者等には執行猶予付きの判決が下されますが、懲役刑のみならず、罰金刑が課される場合もあります。
罰金の額は、法人税や所得税の場合、脱税額の20~30パーセントであるのが通常であり、本事例では、約1億700万円の法人税を免れたということから、2000~3000万円くらいの罰金額が予想されます。

刑事告発を受けたら

脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。

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