Author Archive
【制度解説】逋脱犯の成立要件について
逋脱犯の成立要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
租税逋脱とは
租税逋脱(ほだつ)とは,いわゆる脱税行為を指し,一般に納税義務者が偽りその他不正の行為により税を免れることにより成立する犯罪です。現行法上,租税逋脱犯には,所得税,法人税,相続税,贈与税,消費税,酒税等の逋脱が犯罪としてありますが,事件数が多いのは所得税逋脱犯及び法人税逋脱犯です。
所得税や法人税の逋脱犯が成立するには,客観的要件の充足と主観的要件としてその認識(租税逋脱犯の故意)からなりますので,順にみていきましょう。
逋脱犯成立に必要な客観的要件
脱税行為となる不正の行為の態様を基に,逋脱犯は,①虚偽過少申告逋脱犯,②無申告逋脱犯,③税務調査に対し,不正工作する逋脱犯とにおおむね3つに分類されます。
これらの具体例として,①は所得金額を過少に記載した申告書を提出する行為,②は所得金額があるにもかかわらず正当な理由なく納税申告書を提出期限までに提出しない行為,③は税務署職員の調査に対し,嘘をつくなどの不正な工作をして税を免れる行為が,それぞれ典型例として挙げられます。
主観的要件
逋脱犯も一般の犯罪と同じく故意犯でなければ処罰されません(刑法38条1項)。したがって,逋脱犯が成立するためには,上記①~③の脱税行為に対する行為者の認識が絶対に必要とされます。
その認識の対象となるのは,①では,申告書に所得金額を過少に記載した事実,②では,所得金額があるにもかかわらず申告書を提出していない事実,③では,税務署職員に対し,虚偽の不正工作をしている事実がそれにあたります。
そして,当然ながら,これらの事実に対する認識が納税義務者や違反行為者に存しなければなりません。つまり,所得を得た者のほか,会社の代表取締等の代表者は,本来的にこれに当たり,さらに,上記①,③の行為をした会社の従業員も違反行為者となるでしょう。
逋脱犯の主体となる行為者は誰か
逋脱犯は,納税義務者等が故意に逋脱して成立します。そのため,上記の客観主観の両要件が成立するのと同時にその主体が逋脱犯行為者でなければなりません。これが所得税であれば,具体的に所得を得た者であり,株式会社の場合であれば,一切の権限を有する代表取締役(会社法349条4項)であることも明白です。さらにケースバイケースとなるものの,法人の場合には,その従業員である納税申告事務担当者も該当し得ることになります。
弁護士等に相談を
一見,単純明快な逋脱犯の成立要件ですが,法人等の場合は意外と複雑です。そして,脱税の嫌疑がかかり起訴されて裁判となれば,所得税や法人税の逋脱の場合,刑事罰として10年以下の懲役又は千万円以下の罰金(場合によっては併科される)が科されるおそれがあるほか,行政上の制裁として加算税等が賦課されることとなります。
逋脱犯には,このように複数の処罰が法定されており,関与者が重大な事態に陥ることが避けられないおそれがあります。そこで,修正申告による是正措置の可能性や本税の予納など法的手段を尽くした対応が求められますが,それには,できるだけ早く弁護士等への相談をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談は初回無料ですので、一度ご相談ください。
ペーパーカンパニーは脱税を疑われやすい!
ペーパーカンパニーは脱税を疑われやすいということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
ペーパーカンパニーとは
ペーパーカンパニーとは、一般的にダミー会社のように、登記上は存在するものの、その事業実態がない会社のことを指すものとして使われています。
しかし、登記上存在するものの事業は行っていない会社の中には、事業活動を行っていたが何らかの事情によって事業を休止しているだけの休眠会社や、特定の事業や特定資産保有のために設立された特別目的会社なども、ペーパーカンパニーの一種として考えられています。
ここで取り上げるペーパーカンパニーは、主に税負担を軽減するために設立された会社を考えていきます。
ペーパーカンパニーによる節税?
ペーパーカンパニーを税負担の軽減のために設立する主な理由は以下の3つが考えられます。
①法人税の軽減税率適用のため
法人税は法人の所得に応じて税額が決まりますが、資本金が1億円以下の中小企業の場合には、所得が一定額以下であれば軽減税率が適用されます。
そのため、複数の会社に利益を分散させて税率を下げることを目的として設立される場合があります。
②交際費の経費計上
中小企業の場合、交際費のうち接待飲食費の50%または年間800万円までは、交際費として経費計上できます。
このことを利用して、会社を増やして経費計上できる額を多くしようとして設立される場合があります。
③売却損で利益を減額
会社が不動産を持っている場合に、不動産の帳簿価格を下回る価格でペーパーカンパニーに不動産を売却することで、その差額が売却損となり、会社の利益から売却損を差し引くことで、会社の法人税算定の基準となる所得額を減らそうとする目的のために設立する場合があります。
また、ペーパーカンパニーの株式を親会社として保有している場合、ペーパーカンパニーの株式価格が下落した時点でそのペーパーカンパニーの株式を売却することでも売却損が出るため、同様に会社の法人税額を減らす目的でそのようなペーパーカンパニーを設立することもあります。
もっぱらこれらの目的のためにペーパーカンパニーを設立していると考えられる場合、もはや節税ではなく脱税として税務調査や査察調査を受ける可能性が高くなります。
しかし、ペーパーカンパニーの設立目的がどのようなものであるかは、実際に調査に入ってみないとわからないことも多くあります。
そのため、ペーパーカンパニーだと思われる会社を設立していると、税務調査を受けやすいといえるでしょう。
脱税を疑われたら
ペーパーカンパニーを利用して節税対策しようという触れ込みで、コンサルティングを受けた会社が、実際には脱税に当たるとして方法を指南したコンサルティング会社とともに告発された事件もあります。
休眠会社を持っているだけでは当然違法ではありませんが、設立以来事業実績がない会社であったり、事業実態に比して接待交際費が多く計上されていたりする場合には、脱税を疑われる可能性が高くなります。
いまだ税務調査の段階であったとしても、その調査でどのように回答するかやどういった資料を提出するかによって、悪質な脱税行為であるとして査察調査に移行してしまう可能性があります。
そうならないためにも、早めの段階から税理士や弁護士といった専門家に相談し、必要であれば修正申告を行ったり、必要な資料を準備したりして調査に適切に対応していく必要があります。
休眠会社を利用して取引を行った、節税のためにペーパーカンパニーを立ち上げたなど、不安に思われる方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では脱税に関する相談は初回無料です。
【裁判例解説】「偽りその他不正の行為」を行ったとは認められないとして無罪
「偽りその他不正の行為」を行ったとは認められないとして無罪となった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事案の概要
「夫が死亡したことによって全財産を相続したAが相続税を免れようと企て、相続財産から預貯金、株式等を除外する方法により相続税賦課額を減少させ、過少な金額を記載した内容虚偽の相続税申告書を提出し、もって不正の行為により、正規の相続税額との差額1億4090万円の税を免れた」として相続税法違反で起訴された事件
神戸地方裁判所が平成26年1月17日に宣告した判決では、Aの供述の信用性を肯定し、Aが「偽りその他不正の行為」を行ったとは認められないとして無罪となっています。
なお、同事件では検察官が控訴をし、控訴審ではAの供述の信用性が否定され、Aは逆転有罪となって、懲役1年6月執行猶予3年及び罰金2800万円が言い渡されています。
「偽りその他不正の行為」の意義
神戸地方裁判所の判決によれば、最高裁昭和42年11月8日大法廷判決により示されている「『偽りその他不正の行為』とは、逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるような何らかの偽計その他の工作をいう」との解釈を引用し、これを本件のような過少申告事案にあてはめると、「(過少申告逋脱罪の成立には、)単に過少申告があったというだけでは足りず、税を不正に免れようとの意図(逋脱の意図)に基づき、その手段として、申告書に記載された課税物件が法令上のそれを満たさないものであると認識しながら、あえて過少な申告を行うことを要し、反対に、行為者が、そのような意図に基づかず、例えば不注意や事実の誤認、法令に関する不知や誤解などの理由によって過少申告を行った場合には、『偽りその他不正の行為』にはあたらないと解するのが相当である。」と述べています。
本判決の意味
逋脱罪が成立するために必要な「偽りその他不正の行為」という要件について、
①税を不正に免れようとの意図(逋脱の意図)
②不法な過少な申告であることの認識
③過少申告の事実
の3つが必要としていると整理することができます。
逋脱罪の成立に関する故意の内容について、①及び②を必要としている点が重要なポイントとなります。
主観的な要素について、未必的な認識では足りず、確定的な認識が必要と考えているということができ、その意味で検察官が逋脱犯の立証をする上でハードルが高くなったといえるでしょう。
逋脱犯の弁護活動
この判決は、控訴審で逆転有罪となっていますが、控訴審では「偽りその他不正の行為」の意義について第一審判決の解釈を否定したわけではなく、Aの供述の信用性を安易に肯定して間違った事実を認定していることが問題視され、Aには確定的故意があったとして有罪となっています。
そのため、故意の内容として「偽りその他不正の行為」の認識がなかったという主張は、それが信用されれば無罪が勝ち取れる可能性があるということです。
供述の信用性の判断には、客観的証拠との一致だけではなく、税務調査や捜査における供述と変遷がないか、一貫しているかという点なども考慮されます。
ですので、調査や捜査の段階でどのように供述していくのかもしっかりと検討して臨む必要があります。
脱税を疑われた場合には、早急に専門家に相談し、適切なアドバイスをもらいましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料ですので、ご不安がある方は一度ご相談ください。
【告発事例紹介】国税庁発表の告発事例②
前回に引き続き、国税庁が6月14日に公開した令和4年度査察調査の概要で紹介されている告発事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
国際事案
事例5
E社及びF等は不正加担者と共謀し、同人が日本における代表者を務める外国法人に架空の支払い手数料等を計上する、あるいは暗号資産を取引所で譲渡した取引の主体を外国法人に仮装する方法などで、法人税又は所得税を免れていた。
解説
事例5で、支払い手数料を外国法人に支払ったように仮装した点は、その分を経費として計上することで過少申告となることはわかりやすいと思いますが、暗号資産の譲渡を外国法人が行ったように仮装したことも、本来であれば譲渡利益が発生しているはずなのにその部分を外国法人に割り当てていることにしているため、利益が出ていないとして過少申告をしているということになります。
国税庁は外国法人を利用したこういった国際取引についても重点事案として積極的に取り組んでいるため、国際取引だからといって安易に加担すべきではありません。実際に、この事例では加担者についても告発されています。
その他の社会的波及効果の高い事案
事例6
トレーディングカードゲームの小売を目的とする店舗を全国に展開し、各店舗においてイベントを行っているG社が、取引事実のない虚偽の領収書等を作成して、架空の仕入高を計上する方法により所得を秘匿し、法人税を免れていた。
事例7
Hは、多数の給与所得者を勧誘し、架空の事業所得の損失を計上して給与所得と損益通算することで所得税の還付を受ける不正手段を指南したうえ、内容虚偽の所得税の確定申告書を作成して同給与所得者に交付し、同人らの所得税を免れさせていた。
事例8
大手繊維会社の従業員Iは、下請業者から資金提供を受けていたが、親族が主宰する法人名で架空の請求書を作成し、当該請求書に基づき、下請業者から自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませるなどの方法により所得を隠匿したうえで、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せずに多額の所得税を免れていた。
解説
いずれの事例も架空の請求書や領収書を作成して、金銭を支払ったかのように仮装し、実際には金銭(所得)を隠していたという事例です。
隠匿していた所得の額が高額であったり、不正スキームの指南役がいたり、立場を悪用したりといった悪質性が高いといえる事案が告発を受けています。
トレーディングカードについては、一部レアカードが数千万円の値段が付いたり、最近では投資の対象となったりしており、社会的にも注目されている分野であると言えます。
こういった社会的に波及効果が高いと考えられている事案についても、告発を積極的にして公表することで将来の脱税を抑止しようという目的もあるため、注目されている業種の方については、しっかりと確定申告をしていく必要があります。
まとめ
2回に分けて、国税庁が発表した令和4年度査察調査の概要に紹介されている告発事例を見てきました。
告発を受けると刑事事件として刑罰を受ける可能性が出てくるだけでなく、重加算税などの追徴課税も課されることになります。
そのため、査察調査を受けることになった場合には、告発を見据えて早めに専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談は無料で行っておりますので、一度ご相談ください。
【告発事例紹介】国税庁発表の告発事例①
令和4年度査察調査の概要が6月14日に公表されましたが、そこで挙げられている告発事例を2回に分けて紹介します。第1回目は消費税事案と無申告事案について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説をします。
消費税不正受還付事案
事例1
日用品の輸出販売や輸出物物品販売場の経営等を行うA社が、取引事実がないにもかかわらず、不正加担者と共謀して、同人が主宰する法人から化粧品等を仕入れたかのように装い、架空の課税仕入れを計上し、当該化粧品等を輸出物品販売場において外国人観光客に販売したかのように装い架空の免税売り上げを計上する方法で、不正に消費税等の還付を受け、または受けようとした。
事例2
B社等数社は、不正指南者から指示されたとおり、B社等各社の代表者からパワーストーンを仕入れたかのように仮装し架空の課税仕入れを計上するスキームを利用して、不正に消費税等の還付を受けようとした。
解説
事例1及び2はいずれも架空の仕入れを計上する形で行われた、消費税の不正受還付事件です。
消費税の還付は免税などで本来であれば支払わなくてよかった消費税を支払っている場合、後から払いすぎた消費税分を返してもらえる制度です。
消費税の還付制度を悪用して不正に利益を得ることは、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案として、国税庁が毎年力を入れて調査をしている事案です。
架空の仕入れを計上することは、明らかに脱税意図があると認定される事情となるため、悪質性が高い事案であると言えます。
事例1では一部が、事例2では全部が未遂犯として告発されているようです。
また、事例2では、会社やその代表者だけでなく、指南役も告発されています。
無申告事案
事例3
親族の死亡に伴い多額の財産を他の相続人とともに共同相続したCは、相続財産である現金を複数の場所に隠匿したうえで、相続税の申告書を申告期限までに提出せずに、多額の相続税を免れていた。
事例4
ウェブサイト上で競艇予想情報の販売を行うDが、当該販売収入について所得税の申告義務を認識していたにもかかわらず、確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、所得税を免れていた。
解説
無申告事案とは、本来であれば確定申告書を期限までに提出したうえで納税すべきにも関わらず、申告をしないで納税すべき期限までに納税をしていないという事案です。
国税局や税務署は、様々なところから情報を集めており、たとえば事例3の場合で言えば、亡くなった被相続人の財産についての情報を事前に持っていた可能性があります。その持っていた情報と実際にCさん以外の共同相続人が申告した相続財産の額が大きくかけ離れていることから調査のメスが入れられた可能性があります。
また、インターネットサイトやSNSの情報なども税務署は積極的に集めており、事例4の場合にはそういったインターネットの情報からDさんの収益を割り出していた可能性があります。
このように、国税局や税務署が把握している財産や所得の情報と照らし合わせて税務調査などが行われることになり、うっかり忘れていたのか意図的に申告しなかったのかということを厳しき追及されてしまうことになります。
消費税事案や無申告事案は狙われやすい
消費税事案や無申告事案は毎年国税庁が重点事案として積極的に取り組んでいる事案です。
消費税の還付を不正に受けてしまっていた場合や申告期限までに申告ができていない場合には、早急に税理士や弁護士などの専門家に相談して対応してください。
早めの対応で告発を免れる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では初回の相談は無料です。
~国税庁発表の告発事例②に続く~
【国税庁発表】令和4年度査察の概要
国税庁が報道発表した令和4年度査察の概要について、要点をまとめてみました。
査察の概要とは
「査察の概要」は、毎年国税庁が前年度の査察調査に対する取り組みや実績を報道発表するための資料として作成されているものです。
査察調査の件数や告発件数、起訴された事件での有罪事案の紹介、不正資金の隠匿場所や告発の多かった業種などがまとめられています。
また、査察調査を行った事案についてが、その一部について事例付きで紹介されています。
令和4年度査察調査の概要は6月14日に公開されました。
令和4年度査察の概要
令和4年度の査察調査の概要としては、
①検察庁に告発した件数は103件、脱税総額(告発分)は100億円
悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施し、1件当たりの脱税額は9700万円。新型コロナの影響を受けた令和3年度と比較して、告発件数及び脱税総額とも大幅に増加し、告発率は74.1%と平成18年度以来の高水準に。
②消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、その他の時流に即した社会的波及効果の高い事案を積極的に告発
消費税事案では、不正受還付事案を多数告発。競艇情報販売をしていた個人事業者の無申告事案や大規模な国際事案を告発。そのほか、近年、市場規模が拡大しているトレーディングカード販売業者の事案、SNSを利用し多数の給与所得者に所得税の不正還付を指南していた事案や下請け業者から受けた資金提供を隠匿して自己の収入としていた元請け会社の従業員の事案など、社会的波及効果の高い事案を告発。
③一審判決61件全てに有罪判決が言い渡され、3人に対して実刑判決
実刑判決のうち、査察事件単独で最も重いものは懲役1年4月、他の犯罪と併合されたものは懲役2年8月だった。
という3項目が紹介されています。
重点事案への取り組み
重点事案への取り組みとして、以下の内容が紹介されています。
①消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、34件を告発。
消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、16件を告発。
②無申告事案
納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告による逋脱犯について、15件を告発。
そのうち、不正行為はないが、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告逋脱犯を適用した事案は6件。
③国際事案
経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を越えた経済活動が複雑・多様化しているところ、様々な国との取引が行われており、国際取引を利用した脱税への対応が求められている。このような状況の中、外国法人を利用して不正を行っていた事案や海外に不正資金を隠しているなどの国際事案で、25件を告発。
また、外国当局と不正事案に対する取組等について情報交換を行うなど、当局間の連携強化に取り組んでいる。
④その他の社会的波及効果の高い事案
トレーディングカード販売業者の法人税逋脱事案、SNSを利用して所得税の不正還付を指南し虚偽の還付申告書を提出させた所得税不正還付事案などを告発。
不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所
脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていたが、不動産購入や有価証券への投資のほか、高級品の購入や遊興費への費消なども見られた。
脱税によって得た不正資金の隠匿場所として、①床下に置かれた袋の中、②銀行の貸金庫の中、③クローゼットに置かれた金庫の中などに現金を隠していた例があった。
その他参考計表
①税目別の告発件数
所得税19件、法人税47件、相続税2件、消費税34件、源泉所得税1件
②告発の多かった業種
1位:建設業 22業者、2位:不動産業 13業者、3位:小売業 12業者、4位:人材派遣業 5業者
建設業、不動産業はここ数年1位2位を占めており、取り扱う金銭の額が多いことからも査察調査で狙われやすい業種といえます。
【制度解説】新NISAについて
新NISAが,2024年1月1日から始まります。現行のNISAがどのように変わるのかその制度内容について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
NISAとは
Nippon Individual Savings Accountの頭文字をから作られた略称であり,少額投資非課税制度という個人投資家のための投資に係る税制優遇制度です。
NISAによる税の優遇を受けるには,証券会社や銀行にそれらの各金融機関が提供するNISA口座を選択して口座開設すればOKであり,制度の枠内で税の優遇を受けることができるものです。
この場合,個人投資家が,非NISA口座で株取引や投資信託をしたときには,それらの金融商品から得られた配当金や譲渡益に対し,一定の税率(20.315%)に基づく課税がなされますが,開設したNISA口座内で金融商品を取引した場合,それから得られた配当金や譲渡益が非課税となります。
新NISAの制度概要
次のような点が主な変更点です。
⑴非課税投資期間の無期限化
現行では,イ:一般NISAが5年間,ロ:つみたてNISAが20年間と有期であるのに対し,新NISAではこの期間が撤廃されて無期限となりました。
⑵年間投資枠の拡大
現行の120万円(イの場合)ないし40万円(ロの場合)から,新NISAでは,制度の枠自体が一本化された上で内部的に振り分けられ,それぞれ240万円(成長投資枠)と120万円(積立投資枠)の合計360万円となりました。
⑶非課税保有限度枠の拡大
現行の600万円(イの場合,5年間分)ないし800万円(ロの場合,20年間分)から,新NISAでは生涯投資枠として,最大で合計1800万円(年間投資枠の5年分)と大きくなりました。
⑷生涯投資枠は回復すること
さらに,新NISAでは,上記の合計1800万円の最大枠は,例えば1000万円分の株式を譲渡した場合,翌年には,枠は800万円ではなく1800万円に回復します。
⑸利用可能年齢,保有口座数
これは現行と同じく日本に住む18歳以上の人(自然人)であること,NISA口座の保有は一人一口座しかできないことは変わりありません。
⑹なお,未成年者を対象とした現行のジュニアNISAは2023年で終了します。
貯蓄から投資へ
このようにNISAは,投資による収益を非課税とすることから,個人投資家のみならず,広く一般個人に対しても,投資を勧めてこれにいざなうものといえます。
そして,これは,政府を代表する岸田総理が,「新しい資本主義」を標榜して,国民一人一人に対し,保有の金融資産をほとんど利子を生じなくなってしまった貯蓄から,裁量取引によれば,比べ物にならないくらいの収益を生むことができる投資へと勧奨し,これにシフトさせることにより,個人の「資産所得倍増プラン」を実現させることにより,国税庁の提起した老後2000万円問題といった深刻な事態に対する一つの回答として推し進める制度といえます。
新NISA利用に伴う注意点
このように新NISAでは,国民一般の投資への関心を向けさせ,投資の実行を強く推進させるものとなっていることはお分かりいただけたと思います。
しかし,注意すべきは,新NISAの前提となる投資にはリスクが伴います。「投資に絶対はない」と言われるように,預金と異なり投資では,通常,元本保証もなく元本割れは当然のこと最悪,元本全消失に至る場合(ハイリスクハイリターン)があるということです。太利を狙わず,熟慮の上に慎重な投資活動となるよう心がけましょう。
また,生き馬の目を抜く金融市場において,今後,多種多様な金融商品が市場に多く供給されることが見込まれ,取引安全を保護する金商法の規制を潜脱した業者も出現し跋扈するなど,過大なあおり宣伝広告による金融商品等には十分な注意が必要となります。
正しい知識に基づき賢い資産運用になるようにしましょう。
もし,新NISAや金融商品をめぐる取引等に関し,迷いや疑問を生じた場合には,弁護士等に相談することをお勧めします。
【事件解説】仙台国税局が生コン業者を告発
震災復興工事の生コン業者を仙台国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
東日本大震災の復興工事などで得た利益の一部を申告せず、計約8000万円を脱税したとして、仙台国税局は、所得税法違反容疑などで、生コンクリート運搬業を営んでいたA氏を福島地検に告発したと発表した。
同国税局によると、A氏は2018~20年、生コン運搬業で得た所得約1億4400万円を申告せず、所得税約5100万円と消費税や地方消費税計約2900万円の免れた疑いが持たれている。
福島県では、東日本大震災による津波被害の復旧工事で生コンの需要が高まっており、運搬業の収入も伸びていたという。隠した金は、遊興費や生活費などに充てていた。
(2023年4月27日時事通信ニュースより。一部改変)
生コン運搬業
本事件のA氏は、生コンクリート運搬業を営んでいたということですが、免れた税金は所得税や消費税となっています。
事業を営んでいる場合には、法人税ではないかと思われる方もいると思いますが、法人税は、字のごとく「法人」にかかる税金です。
そのため、基本的に法人税は会社の収益にかけられる税金といえます。
会社ではなく、個人で事業を営んでいる個人事業主の方には「所得税」が課せられることになり、本事件のA氏も個人事業主であったと考えることができます。
A氏は生コンクリートの運搬業を営んでいたということですが、運搬業としては、ウーバーイーツなどの宅配業も含まれており、そう考えると、会社に所属せずに個人で運搬業を営んでいる人が相当数いることが実感できると思います。
個人事業主の確定申告
個人事業主の方が、その事業により収入を得た場合には、所得税や消費税、個人事業主税などを納める必要が出てくるため、確定申告が必要となります。
もっとも、個人事業主ではあるものの、会社から委託を受けて事業を行っており、会社からお給料という形で支払いが行われている場合、会社が年末調整をしてくれていることがあります。
年末調整がなされている場合には、所得税の確定申告をする必要はありません。
所得税などの確定申告については、収入だけでなく、経費なども計上する必要があります。
開業届を出し、青色申告の承認を得ている方の場合には、複式簿記方式が採用されることになるため、経費として計上するものについての領収書等をしっかりと保管し、提出していく必要があるなど、確定申告の手続きが煩雑にはなるものの、控除額が白色申告と比べて多いなど、メリットもあります。
確定申告の仕方がわからないなどの場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
刑事告発
本事件では、所得税法違反や消費税法違反で福島地検に告発がなされています。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。
国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約70%くらいといわれています。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合は執行猶予付きの判決が下されますが、罰金が併科される場合が多いようです。
罰金額は脱税額の20~30%くらいの金額とされる場合が多いです。
そのため、本事件では、有罪の判決が下された場合、所得税約5100万と消費税等訳2900万の合計約8000万円くらいの税金を免れているので、2000万~3000万円くらいの罰金が予想されます。
刑事告発を受けたら
脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、逮捕を避けることが出来たり、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を中心に扱っている事務所ですので、脱税事件の刑事手続にもしっかりとした対応ができます。
早急に弊所までお問い合わせください。初回の相談は無料です。
【事例解説】人気トレカ転売で申告漏れ
トレーディングカード(トレカ)の転売で得た利益について税申告をしていなかったとして、大阪国税局から税務調査を受けた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
事件の概要
「遊戯王」や「ポケモン」など人気アニメのトレーディングカード(トレカ)を転売していた神戸市の男性3人と会社1社が2022年、大阪国税局の税務調査を受け、合計1億円の申告漏れを指摘されていた。
関係者によると、神戸市に住む男性3人は、17~21年、インターネットサイトや中古品販売店で購入したトレカをネットなどで転売し、利益を得ていたが、確定申告を怠り、合計約8000万円の申告漏れを指摘され、無申告加算税を含む合計約1900万円を追徴課税された。
男性3人は税務調査に対して「申告方法がわからなかった」などと説明したという。
また、トレカ販売会社については、国税局が調査した結果、2年間売り上げの一部を除外するなどして利益を圧縮して申告しており、仮装隠ぺいを伴う所得隠しがあったとして、重加算税を含む約600万円を追徴課税された。
(読売新聞オンライン2023年4月6日の記事より抜粋)
トレカ転売
トレカには人気アニメのキャラクターや著名人の写真などのカードやそれ自体が対戦ゲームの主要な使用品となるカードなど様々なものがありますが、共通しているのは、所持しているカードを他人とトレード(交換)することができるという点にあります。
このトレードはあくまで交換なので、基本的に同価値のカード同士を交換することがもともとの意味で、お金を支払て購入することは例外的な場合といえます。
しかし、全体総数が少なかったりゲーム的に非常に強いカードなどは「レアカード」と呼ばれ、お金を支払ってでも手に入れたいという人が多くいるため、最近ではインターネットサイトを通じて高額で転売されるということも多くなってきています。
新品であれば数枚入ったパックで数百円で販売されているカードが、レアカード1枚で1000万円以上で取引されることもあり、投資や転売目的で購入されることも多くなっています。
トレカ転売で得た利益
トレカ転売で得た利益については、所得となります。
もっとも、転売価格すべてが所得税の課税対象となるわけではなく、カードを取得した時にかかった金額(仕入額)については経費として差し引くことができます。
そのため、所得税の課税対象となるのは、「転売価格-仕入にかかった経費」という計算式によって算出された金額ということになります。
トレカ販売を会社として行っていた場合には、販売によって得た利益に対して法人税が課税されます。法人税の課税対象も仕入にかかった経費などを差し引いた金額になります。
また、所得税や法人税に加えて、消費税など別の税金もかかってくることになります。
トレカ転売利益の確定申告
トレカ転売によって得た利益について、20万以上ある場合には、確定申告が必要となります。
確定申告を怠っていた場合には、税務署の税務調査などを受けることになり、本来納めるべきであった税額(本税)に加えて、無申告加算税や延滞税といった追徴課税が課せられることになります。
また、本事件のトレカ販売会社のように、確定申告は行っていたものの、売り上げの一部を除外するなどして、利益を実際よりも少なく申告していた場合には、過少申告加算税が課せられることになります。
さらに、無申告や過少申告の方法が、仮装隠ぺいを伴うような悪質性が高い行為によって行われていたとされた場合には、無申告加算税や過少申告加算税に代えて、重加算税が課せられる場合もあります。
重加算税が課せられる多くの場合は、国税局による査察調査を経て課せられることになるため、査察が入った場合には高額の追徴課税がなされることを覚悟する必要があります。
査察調査が入った場合には、重加算税などの追徴課税だけでなく、検察庁への刑事告発がなされる可能性も考えておかなければなりません。
本事件のトレカ販売会社やその代表者が刑事告発をされたかどうかについては報道では明らかではありませんが、仮装隠ぺい行為によって法人税を免れていたということであれば、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその両方が課されることになり、罰金の額は免れた税額まで上限を上げることが可能となっています。
刑事告発をされても、必ず刑事裁判になるわけではありませんが、告発からの起訴率は約70%と言われており、高い確率で刑事裁判で罪に問われることになります。
税務調査を受けたら
トレカ転売を個人で行っていたとしても、利益を多く得ていれば確定申告が必要となります。
本事件では「申告方法がわからなかった」と男性らは説明しているようですが、そのような説明は確定申告をしないことを正当化する理由にはなりません。
確定申告が必要か否か、必要だとしてどのように申告したらいいかを専門家に相談して検討してもらいましょう。
また、確定申告を忘れていたり、確定申告の内容が間違っていた場合には、早急に修正して確定申告をし直しましょう。
税務調査がすでに入っている場合には、税理士や弁護士などに相談し、専門家とともに調査に臨み、早めに修正申告をしたり、本税の納付を早急に行うなどの対応をすることで、査察調査を免れたり、刑事告発を免れられる可能性が高まります。
輸入と税金
貿易取引においても税金がかかってきます。今回は輸入にかかる税金について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
輸入品と税金
輸入品に課される税金として主なものは
①関税
②消費税
があります。
①関税には、法律に基づいて設定されている税率(国定税率)と条約に基づいて設定されている税率があります。
国定税率は、関税定率法と関税暫定措置法によって定められています。
②消費税には、国税としての消費税と、地方消費税があります。
税額の計算
①関税の税率計算
原則として輸入申告時の貨物の価格又は数量を課税標準とします。
課税標準額に対して、品目ごとに規定された関税率を乗じた金額が課税される関税の額となります。
物品の種類(素材や材質、製造方法)や輸入元の国・地域、用途によっても関税率が変わってきます。
また、無税とされている(関税率が0%)品目も多くあり、全体の約34%は無税品となっています。
②消費税の税率計算
消費税(10%)は、内国消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分けられます。
内国消費税は、CIF価格(端数処理前)と端数処理後の関税額の合計(千円未満切り捨て)に対して課税されます(100円未満切り捨て)。
地方消費税は、内国消費税額の78分の22に当たる額(100円未満切り捨て)です。
また、輸入品のうち飲食料品(外食・酒類を除く)については、軽減税率の対象となるため、消費税率が8%となるものもあります。
この場合には、内国消費税が6.24%、地方消費税が1.76%となります。
※課税価格が1万円以下の物品の場合
課税価格の合計額が1万円以下の物品の輸入については、一定の場合を除いて関税及び消費税が免除されます。
輸入品を引き取る際の手続き
輸入品を保税地域から引き取ろうとする者は、原則として品名等や関税・消費税の金額などを記載した輸入申告書を保税地域を所轄する税関長に提出し、輸入品を引き取る時までに関税と消費税を納付する必要があります。
あらかじめ税関長の承認を受けた特例輸入者又は輸入通関の手続きを認定通関業者に委託した特例委託輸入者は貨物を引き取った後に関税と消費税を納付することができます。
輸入事後調査
輸入された貨物にかかる納税申告が適正に行われているかを事後的に確認し、不適切な申告を是正し、適切な申告指導を行うことにより適正な課税を確保することを目的として、税関が行う税務調査を「輸入事後調査」といいます。
ここで不正が発覚した場合には、国税局の査察や刑事告発が行われることもあります。
また、税関とは別に税務署などが独自に税務調査を行うことも可能です。
まとめ
貿易取引においても、税金の問題は切り離せません。
しっかりと税金について確認し、申告をする必要があります。
万が一、間違った申告をしてしまったら、直ちに修正手続きを行いましょう。
