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風俗嬢の脱税はバレると大変!!
風俗で働いている女性が脱税をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
東京都新宿区歌舞伎町にある風俗店で風俗嬢として働いているAさんは、店から労働の対価として現金を手渡しでもらっていました。
Aさんは、店と雇用契約を結んでいるわけではなく、アルバイト感覚で風俗の仕事をしていました。
現金を手渡しでもらっていたこともあり、確定申告をしなくてもバレないだろうと考えて、確定申告をしていませんでした。
そうしたところ、Aさんが働いていた店に新宿税務署の税務調査が入り、Aさんも税務調査を受けることになってしまいました。
不安になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用することにしました。
(フィクションです)
解説
風俗嬢の脱税がバレる理由
風俗嬢は多くの場合、店舗に所属していたとしても雇われているわけではなく、法律上は個人事業主として扱われることになります。
当然、働いて得たお金は所得となるため、所得税などの納税義務があり、確定申告が必要となります。
しかし、手渡しで現金をもらっている場合などは、確定申告をしなくてもバレないと思っている人が多いのではないでしょうか。
風俗嬢の脱税がバレる原因としては、
①店に税務調査が入ってバレる
②高額な買い物(家や車など)をしてバレる
③客や同業者などからの密告でバレる
④SNSなどの投稿によってバレる
といったことが考えられます。
①店に税務調査が入ってバレる
店に税務調査が入る場合には、そこで働いている人に支払っている給料などは経費となるため、税務調査の対象となります。
税務調査が入るときには、事前に内偵調査が行われる場合が多く、店のサイトで出勤を調べたり、実際に客として接客を受けたりして、資料を収集していきます。
それらの資料から風俗嬢の収入が発覚し、風俗嬢にも税務調査が入る場合があります。
②高額な買い物をしてバレる
税務署は口座情報についても手に入れています。
特に、家や車などの高額な買い物をしている場合には、確定申告をしていないのにそういった高額商品をかえる収入があるのはおかしいと目をつけられてしまう原因になります。
③客や同業者などからの密告でバレる
国税庁では、課税及び徴収漏れに関する情報提供を受け付けています。
国税庁のホームページには情報提供フォームが設置されており、情報提供者のプライバシーも守られる仕組みになっています。
④SNSなどの投稿によってバレる
SNSなどに豪華な食事や高級ホテルでの宿泊などの写真や文章を投稿していると、そこから疑いをもたれて調査が入る可能性もあります。
公開されている情報については、いつも目を光らせられていると考えた方がよいでしょう。
確定申告をしていないことがバレたら
収入があるのに確定申告をしていないことがバレた場合、本来納めるべきであった税金を払うことはもとより、ペナルティとしての加算税についても支払わなければならなくなります。
過去には1000万円を超える加算税を支払わなければならなくなった例もあります。
確定申告をしていない場合の加算税としては、①無申告加算税と②重加算税が考えられます。
①無申告加算税については、支払うべき税額の15%(50万円を超える部分については20%)が加算されます。
一方、②重加算税の場合には、①無申告加算税に代えて40%が加算されることになります。
仮装隠ぺいがあった場合など悪質性が高い場合には、②重加算税が課せられる可能性が高くなります。
単なる申告忘れなのか、隠そうとしていたのか調査などでどのように応答するかによって大きく変わってくるので、専門家に早い段階で相談しましょう。
また、悪質方法かつ高額な脱税となる場合には、刑事裁判にかけられて刑罰を受ける可能性もあります。
多くの場合には、執行猶予が付されますが、その場合でも罰金刑を合わせて受けることが多いです。
罰金刑を受けた場合、罰金と本来納めるべき税金および加算税などをすべて支払わなければならなくなるので、金銭的な負担は非常に大きなものとなってしまいます。
刑事裁判になってしまうような案件かどうかも含め、専門家に相談してアドバイスを受けてください。
もし確定申告を忘れていたとしたら、早めに修正申告をすることでペナルティを最小限に抑えることができます。
不安が少しでもあるのであれば、早めに相談してください。
架空外注費で法人税脱税
法人税の脱税について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
土木工事会社の代表者であるAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした工事の外注費を支払って計上したうえ、個人事業主からキックバックを受けていました。
この方法で1億円を超える所得を隠していたAさんは、大阪国税局の査察調査を受け、法人税3000万円を脱税したとして、法人税法違反の罪で大阪地方検察庁に告発されてしまいました。
(実際の事件をもとにしたフィクションです)
脱税の方法
事例のAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした外注費を支払って計上し、その後個人事業主からキックバックを受けています。
Aさんがキックバックを受けた金銭は、Aさんの収入(所得)となるため、Aさんにはキックバックを受けた金額に応じて所得税の確定申告をする必要があります。
Aさんが、所得税の確定申告をしていなかった場合には、Aさんが所得税の脱税をしていることになるのは、わかりやすいと思います。
しかし、今回の事例では、Aさんは法人税法違反の罪で告発されています。
法人税とは法人つまり会社が得た収益に対してかかる税金です。
キックバックをAさん個人ではなく、Aさんの土木工事会社が受けていた場合には、会社の収益といえるため、キックバックの部分は法人税の対象になり、確定申告をしなければ法人税の脱税になるでしょう。
では、キックバックはあくまでもAさん個人が受けていた場合はどうでしょうか。
この場合、問題となるのは、架空や水増しした外注費を計上しているところとなります。
今回の事例では、外注費については、個人事業主に支払われています。
しかし、支払われている外注費のうち架空や水増しされた外注費は本来であれば支払われない経費ということになります。
そうすると、架空や水増しされた外注費の部分については、実際に支払われていたとしても、経費計上してはいけない部分ということになります。
そのため、会社が得た収入から架空の外注費を経費として差し引いて確定申告していた場合には、本来であればその架空経費の部分は差し引いてはいけない部分となるため、架空経費の部分も含めて課税対象金額に含まれることになります。
そして、架空経費の部分については、確定申告から漏れていることになるため、過少申告をしていたということになります。
法人税脱税のペナルティ
Aさん及びAさんの会社が受ける脱税のペナルティについては、大きく分けて①加算税、②刑事罰の二つが考えられます。
①加算税
Aさんの会社の場合には、過少申告をしていたことになるので、過少申告加算税が課せられることになります。
過少申告加算税は、新たに納めることになった税金の10%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)が加算されます。
もっとも、Aさんの場合には、架空経費の計上という悪質性が高い方法によって過少申告をしているということが言えるので、過少申告加算税ではなく、重加算税が課せられる可能性が高いです。
重加算税は、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する金額が課されることになります。
②刑事罰
Aさんは告発を受けているので、今後は刑事事件としての捜査や裁判を受けていくことになります。
統計上、告発された事件の約70%は起訴されています。
今回の事例では、偽りその他不正の行為により法人税を免れたといえるため、罰則は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」となります(法人税法159条1項)。
ちなみに、罰金の額については、脱税額が1000万円を超える場合には、脱税額まで罰金の上限額を引き上げることができるとされています(同条2項)。
また、今回の事例では、会社代表者であるAさんが行っているので、会社に対しても罰金刑が科せられることになります(同法163条1項)。
そのため、起訴される場合にはAさんだけではなく、Aさんの会社も併せて起訴されることになります。
法人税脱税を疑われた場合の対応
法人税の脱税を疑われた場合には、まず実際に脱税といわれるような行為をしていたかどうかを自分たちでも調査しておく必要があります。
そして、税務調査などの調査では、脱税とはならないという根拠を示していくことが必要です。
もし、脱税に当たる行為をしていた場合には、それが意図的なものかどうかが重要なポイントとなります。
単なる申告漏れなどの場合には、脱税額が高額であったとしても査察や告発を免れることができる場合があります。
その場合でも、調査に対してどのように答えていくかが非常に大切になるので、早めに専門家に相談して方針を決めたうえで、調査に臨みましょう。
また、早めに修正申告をして納税義務を果たすことも、処分を軽くするために必要な行為です。
税理士や弁護士などに依頼して、修正申告をして、早めに納税をしましょう。
もっとも、脱税方法が悪質であるとか脱税期間が長かったり脱税額が高額であったりした場合には、告発までされる可能性が高くなります。
特に脱税額が3000万円を超える場合には、多くの事件が告発されていますので、刑事裁判を見据えて税理士だけではなく弁護士にも早めの段階から関与してもらっておくと安心です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱っているので、刑事事件化を見据えた弁護活動も行えます。早めにご相談ください。
詐欺で得た利益と所得税~②~
前回に引き続いて、詐欺によって得た利益と所得税の関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、ペナルティや刑事罰について解説します。
無申告のペナルティ
詐欺によって得た利益も課税対象となるため、一時所得か雑所得か関係なく、確定申告をして納税する必要があります。
Aさんは遊興費などにすべて使い切ってしまっていますが、だからといって申告をしないでいると、加算税や延滞税というペナルティを受けることになります。
①無申告加算税
確定申告期限内に申告をしていない場合、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税は、原則として、納税すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額になります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合、納税すべき税額は1545万4000円でしたので、約300万円が無申告加算税として本来納税すべき税額に加算されることになります。
②重加算税
仮装隠ぺいなどの方法により、無申告であることが悪質性が高いと判断された場合に、無申告加算税に代えて課せられます。
重加算税は無申告加算税の基礎となる税額の40%に相当する額が課せられることになります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合には、1545万4000円の40%が重加算税として課せられる税額となりますので、約620万円を本来納税すべき税額に加算して納めなければならなくなります。
③延滞税
納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
税率は、納税すべき日から2か月までは7.3%、2か月を過ぎると14.6%が本来納税すべき金額にかかってきます。
刑事事件化する場合
本件のAさんには、税務調査が入っていますが、悪質性が高かったり脱税額が巨額になる場合には、査察調査に発展することもあります。
査察調査は税務調査と違い、強制的に調査をすることができ、最終的には刑事告発に至る場合が少なくありません。実際、査察調査から刑事告発される割合は約70%と言われています。
本件のAさんが問われることになる犯罪としては、詐欺のほかに、所得税法違反と地方税法違反が考えられます。
①詐欺を問われる場合
Aさんが詐欺に問われる場合、一般的には被害者からの被害届などを受理した警察が捜査を行います。
Aさんが詐取した金額からすれば、逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。
逮捕された後は、最大20日間に及ぶ被疑者勾留中に警察による取り調べなどが行われ、最終的には検察官が起訴・不起訴を判断します。
検察官が起訴するより前に、被害者に詐取金の全額を弁償し、示談が成立していれば、不起訴となる可能性もありますが、示談がなければ起訴される可能性が高いといえます。
起訴されると保釈が許可されない限り、身体拘束を受けたまま裁判を受けてもらうことになります。
Aさんの場合、判決が出る前までに被害金の全額弁償ができていれば、執行猶予付きの判決を受けることができる可能性が高くなりますが、被害弁償ができていなければある程度長期の実刑判決を覚悟しなければならないでしょう。
このように、詐欺に問われる場合には、警察の捜査を受けること、示談ができるかどうかによって処分が大きく変わることが特徴といえます。
②所得税法違反、地方税法違反に問われる場合
Aさんの場合、所得税の申告をしていないということは、住民税の納付も行っていないでしょうから、所得税法違反のほかに地方税法違反にも問われる可能性があります。
Aさんが所得税法違反や地方税法違反に問われる場合、基本的には査察調査ののちに国税局から告発を受けた検察庁が捜査を担当します。
逮捕される可能性も高いですが、逮捕された場合には、捜査を検察庁が担当している関係で留置される場所は警察署ではなく拘置所となります。
その後は詐欺の場合と同様に取り調べなどを受けて起訴・不起訴が決まります。
加算税を含めて脱税した税額のすべてを納付し終わっているといった事情があるなど事後的にでも悪質性を低くする活動ができた場合には、不起訴となる可能性もあります。
起訴をされた場合には、詐欺と同様の手続きで最終的には判決を受けることになります。
税法違反の場合の特徴として、懲役刑だけではなく罰金刑を併科することができることが挙げられます。
そのため、仮に懲役刑の部分に執行猶予が付されたとしても罰金刑が併科されて罰金刑部分に執行猶予が付されていない場合には、罰金は支払う必要があります。
このように、税法違反の場合には、検察庁が捜査を担当すること、示談ではなく税納付による被害回復を図ること、罰金刑を併科できることが特徴といえます。
まとめ
Aさんのように詐欺などの犯罪によって得られた利益も課税対象になりますので、確定申告をしていなければ、詐欺の罪とは別に所得税法違反など税法違反の罪にも問われてしまう可能性があります。
そのため、犯罪行為によって利益を得ている場合には、その犯罪だけではなく税金の問題についても考慮しておく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
詐欺で得た利益と所得税~①~
犯罪行為によって得た利益も所得税の課税対象となるのでしょうか。
本日と次回の2回にわたって、詐欺の事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
大阪市福島区Aさんは、友人にうその投資話を持ち掛け、Aさんの話を信用した友人から投資に充てるためとして4500万円を預かりました。
Aさんは預かった4500万円を遊興費などに費消しましたが、友人をだまして得たお金なので、確定申告はしていませんでした。
後日、Aさんは大阪福島税務署から税務調査を受けることになり、今後のことが不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用することにしました。
(フィクションです)
解説
所得税法における所得の意義
日本の所得税法上は、所得について明確な定義規定はありません。
しかし、すべての経済的利益を所得とする、いわゆる包括的所得概念を採用しているものと解されています。
すべての経済的利益が所得であるとすると、違法または無効な行為によって生じた利益についても所得に含まれることになります。
この点について、所得税基本通達36-1は、「法第36条1項に規定する『収入金額とすべき金額』又は『総収入金額に算入すべき金額』は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」と規定しています。
したがって、本件のAさんが詐欺によって得た利益についても所得として確定申告をする必要があるということになります。
一時所得か雑所得か
詐欺によって得た利益についても所得税の確定申告が必要な課税対象となることはわかりましたが、確定申告をするにあたっては、詐欺によって得た利益が「一時所得」か「雑所得」かが問題となります。
なぜならば、一時所得と雑所得では税額を計算するベースとなる「課税所得金額」に大きな差がでるからです。
①一時所得の場合
(一時所得の金額-必要経費-特別控除額)×2分の1=一時所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、(4500万-0円-50万)÷2=2225万円となり、2225万円が一時所得の課税所得金額となります。
※一時所得の金額から経費を差し引いた金額が50万円以上の場合、特別控除額は50万円
Aさんに他に収入がない場合には、総所得金額も2225万円となるため、所得税の税率は40%となります。
また、この場合の所得税の控除額は279万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は2225万×0.4-279万6000円=610万4000円となります。
②雑所得の場合
雑所得の金額-必要経費=雑所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、4500万-0円=4500万円となり、4500万円が課税所得金額となります。
4000万円を超えている場合の所得税の税率は45%、控除額は479万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は4500万×0.45-479万6000円=1545万4000円となります。
このように、一時所得か雑所得かでは、所得税の額に2倍以上の差が出てしまうことになります。
では、本件のAさんの場合には一時所得と雑所得のいずれに当たる可能性が高いでしょうか。
この点について、最高裁は「所得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得および譲渡所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」と判示しています(最判平成29年12月15日)。
そのため、一時所得か雑所得かの区別は、ほかの8種類の所得に当たらないことを前提として、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」といえるか否かが主な基準となっているということができるでしょう。
本件のAさんの場合には、1度に4500万円をだまし取っているのであれば、継続的行為とは明らかにいえないので、一時所得に当たるということになるでしょう。
一方、何回かに分けてだまし取っていた場合には、行為の期間や回数、頻度そのほかの態様など判例が示している考慮要素をもとに判断していくことになり、一概にどちらに当たるということは難しいといえます。
一時所得に当たるのか否かについては、このように様々な考慮要素をもとに判断していくことになるため、一度専門家に相談してみるのがよいでしょう。
次回はペナルティと刑事罰について解説します。
~次回に続く~
暗号資産取引と所得税~②~
前回に引き続いて、暗号資産取引に伴う所得税に関する問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
暗号資産にかかる所得申告に関する問題
①いつの収入とすべきか
暗号資産取引を行ったことにより生じた利益については、原則として売却等をした暗号資産の引き渡しがあった日の属する年分として計上します。
ただし、選択によって売却等の契約をした日の属する年分として計上することもできます。
なお、暗号資産取引により生じた利益は、①その暗号資産取引自体が事業と認められる場合又は②その暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合を除き、雑所得に区分されます。
②暗号資産の必要経費
必要経費に算入できる金額は、①暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額及び②その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務において生じた費用の額です。
暗号資産の売却で必要経費となるものには、暗号資産の譲渡原価、売却の際に支払った手数料、インターネット等の回線利用料、パソコン等の購入費用などがあげられます。
もっとも、回線利用料やパソコン等の購入費用については、暗号資産売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費として算入することができます。
③暗号資産の評価方法の提出
初めて暗号資産を取得した場合や異なる種類の暗号資産を取得した場合には、取得した年分の確定申告期限までに、納税地の所轄税務署長に対し、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
暗号資産の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末時点で保有する暗号資産の表丘額については、「総平均法」または「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされており、暗号資産の種類(名称)ごとに選定する必要があります。
暗号資産取引の所得について確定申告をしていない場合
暗号資産取引では、上記のとおり肌感覚として所得を得ていないような場合でも所得として計上される場合があります。
そのため、確定申告が必要であるのに申告を忘れていたり漏れてしまっていたりする場合があります。
申告漏れ等に気づいた場合には、確定申告期限前であれば直ちに申告漏れのない確定申告を行ってください。
確定申告期限後であれば修正申告をする必要があります。
これを怠っていると税務調査や査察調査の対象となってしまう場合があります。
また、無申告の額が多かったり、悪質性が高いと判断された場合には刑事事件に発展してしまう場合もあります。
そうならないためにも、しっかりと確定申告をしていることが必要ですが、もしも査察調査や刑事事件になってしまった場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします
なお、暗号資産については、所得税だけでなく、法人税など関係してきますし、暗号資産交換業を営む場合には資金決済法違反とならないように登録をする必要もあります。
いまだ法整備が追い付いていない部分もある分野ですので、不安がある方は一度専門家の相談を受けてみてください。
暗号資産取引と所得税~①~
近年、ビットコインなどの暗号資産と呼ばれる仮想通貨を利用した取引も活発に行われるようになりました。
本日と次回の2回にわたって、暗号資産取引に伴う所得税に関する問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
暗号資産取引を行った場合の所得の計算方法
暗号資産は現金と同様に、取引に用いることができますが、現金と違い暗号資産の資産価値は大きく変動します。そのため、暗号資産を購入した際の暗号資産の価値と暗号資産を用いて取引を行った際の暗号資産の価値が異なる場合があります。取引時の暗号資産の価値が購入時よりも上回っている場合には、その差額が所得として扱われることになるため、注意が必要です。
また、暗号資産を低額や無償で譲渡した場合には、実質的に贈与したと認められる金額を所得の総収入額に算入する必要がある場合もありますので、併せて注意が必要です。
①保有する暗号資産を売却(現金に換金)した場合
保有する暗号資産の譲渡価額からその暗号資産の譲渡原価等を差し引いた差額が所得金額となります。
例)5ビットコインを500万円で購入し、そのうち1ビットコインを120万円で売却した場合
譲渡価額(120万)から譲渡原価(1ビットコインあたりの価額100万に売却した数量1ビットコインを掛けたもの)を引いた差額が所得金額となります。
120万-(500万÷5ビットコイン)×1ビットコイン=20万
この例の場合には、20万円が所得金額となります。
②暗号資産で商品を購入した場合
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したということになるので、商品を購入した場合の所得金額は①の場合と同様に、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
この場合、商品の価額=暗号資産の譲渡価額として考えることになります。
③暗号資産同士の交換を行った場合
保有する暗号資産Aを別の暗号資産Bと交換するということは、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したということになりますので、②と同様に、暗号資産Aの譲渡による所得金額を計算する必要があります。
例)100万円で購入して保有していた暗号資産Aで、120万円の価値がある暗号資産Bを購入した場合
120万(購入した暗号資産Bの価額)-100万(保有していた暗号資産の原価)=20万円(所得金額)
④暗号資産を低額又は無償で譲渡した場合
平成31年4月1日以降、個人が、時価よりも著しく低い対価による譲渡により暗号資産を移転させた場合には、その対価の額とその譲渡の時における暗号資産の価額との差額のうち、実質的に贈与したと認められる金額を雑所得等の総収入額に算入する必要があります。
「時価よりも著しく低い対価による譲渡」とは、時価の70%相当額未満で売却する場合をいいます。
また、「実質的に贈与したと認められる金額」は、時価の70%相当額からその対価の額を差し引いた金額と考えられます。
例)時価100万円の暗号資産を45万円で売却した場合
時価の70%相当額70万(100万×70%)-売却価額45万=時価の70%相当額との差額25万円
実際の売却価額45万+時価の70%相当額との差額25万円=総収入金額70万円
総収入金額70万-譲渡原価45万=所得金額25万円
という計算をして所得金額を出すことになります。
※暗号資産の取得価額
暗号資産の取得に際しては、手数料がかかる場合が多くあります。
購入手数料など暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を含む金額が取得価額となります。
例えば、200万円で暗号資産を購入した際に、手数料550円(消費税込み)も併せて支払ったという場合については、取得価額はどうなるでしょうか。
この場合の暗号資産の取得価額は手数料を加えた200万550円ということになります。
~次回に続く~
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