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暗号資産取引と所得税~②~

2022-09-23

前回に引き続いて、暗号資産取引に伴う所得税に関する問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

暗号資産にかかる所得申告に関する問題

①いつの収入とすべきか

暗号資産取引を行ったことにより生じた利益については、原則として売却等をした暗号資産の引き渡しがあった日の属する年分として計上します。
ただし、選択によって売却等の契約をした日の属する年分として計上することもできます。
なお、暗号資産取引により生じた利益は、①その暗号資産取引自体が事業と認められる場合又は②その暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合を除き、雑所得に区分されます。

②暗号資産の必要経費

必要経費に算入できる金額は、①暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用の額及び②その年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務において生じた費用の額です。
暗号資産の売却で必要経費となるものには、暗号資産の譲渡原価、売却の際に支払った手数料、インターネット等の回線利用料、パソコン等の購入費用などがあげられます。
もっとも、回線利用料やパソコン等の購入費用については、暗号資産売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り、必要経費として算入することができます。

③暗号資産の評価方法の提出

初めて暗号資産を取得した場合や異なる種類の暗号資産を取得した場合には、取得した年分の確定申告期限までに、納税地の所轄税務署長に対し、「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
暗号資産の売却等に係る譲渡原価の計算の基礎となる年末時点で保有する暗号資産の表丘額については、「総平均法」または「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされており、暗号資産の種類(名称)ごとに選定する必要があります。

暗号資産取引の所得について確定申告をしていない場合

暗号資産取引では、上記のとおり肌感覚として所得を得ていないような場合でも所得として計上される場合があります。
そのため、確定申告が必要であるのに申告を忘れていたり漏れてしまっていたりする場合があります。
申告漏れ等に気づいた場合には、確定申告期限前であれば直ちに申告漏れのない確定申告を行ってください。
確定申告期限後であれば修正申告をする必要があります。
これを怠っていると税務調査や査察調査の対象となってしまう場合があります。
また、無申告の額が多かったり、悪質性が高いと判断された場合には刑事事件に発展してしまう場合もあります。
そうならないためにも、しっかりと確定申告をしていることが必要ですが、もしも査察調査や刑事事件になってしまった場合には、早めに弁護士に相談することをお勧めします
なお、暗号資産については、所得税だけでなく、法人税など関係してきますし、暗号資産交換業を営む場合には資金決済法違反とならないように登録をする必要もあります。
いまだ法整備が追い付いていない部分もある分野ですので、不安がある方は一度専門家の相談を受けてみてください。  

暗号資産取引と所得税~①~

2022-09-19

近年、ビットコインなどの暗号資産と呼ばれる仮想通貨を利用した取引も活発に行われるようになりました。
本日と次回の2回にわたって、暗号資産取引に伴う所得税に関する問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

暗号資産取引を行った場合の所得の計算方法

暗号資産は現金と同様に、取引に用いることができますが、現金と違い暗号資産の資産価値は大きく変動します。そのため、暗号資産を購入した際の暗号資産の価値と暗号資産を用いて取引を行った際の暗号資産の価値が異なる場合があります。取引時の暗号資産の価値が購入時よりも上回っている場合には、その差額が所得として扱われることになるため、注意が必要です。
また、暗号資産を低額や無償で譲渡した場合には、実質的に贈与したと認められる金額を所得の総収入額に算入する必要がある場合もありますので、併せて注意が必要です。

①保有する暗号資産を売却(現金に換金)した場合

保有する暗号資産の譲渡価額からその暗号資産の譲渡原価等を差し引いた差額が所得金額となります。
例)5ビットコインを500万円で購入し、そのうち1ビットコインを120万円で売却した場合
譲渡価額(120万)から譲渡原価(1ビットコインあたりの価額100万に売却した数量1ビットコインを掛けたもの)を引いた差額が所得金額となります。
120万-(500万÷5ビットコイン)×1ビットコイン=20万
この例の場合には、20万円が所得金額となります。

②暗号資産で商品を購入した場合

保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したということになるので、商品を購入した場合の所得金額は①の場合と同様に、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
この場合、商品の価額=暗号資産の譲渡価額として考えることになります。

③暗号資産同士の交換を行った場合

保有する暗号資産Aを別の暗号資産Bと交換するということは、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したということになりますので、②と同様に、暗号資産Aの譲渡による所得金額を計算する必要があります。
例)100万円で購入して保有していた暗号資産Aで、120万円の価値がある暗号資産Bを購入した場合
120万(購入した暗号資産Bの価額)-100万(保有していた暗号資産の原価)=20万円(所得金額)

④暗号資産を低額又は無償で譲渡した場合

平成31年4月1日以降、個人が、時価よりも著しく低い対価による譲渡により暗号資産を移転させた場合には、その対価の額とその譲渡の時における暗号資産の価額との差額のうち、実質的に贈与したと認められる金額を雑所得等の総収入額に算入する必要があります。
「時価よりも著しく低い対価による譲渡」とは、時価の70%相当額未満で売却する場合をいいます。
また、「実質的に贈与したと認められる金額」は、時価の70%相当額からその対価の額を差し引いた金額と考えられます。
例)時価100万円の暗号資産を45万円で売却した場合
時価の70%相当額70万(100万×70%)-売却価額45万=時価の70%相当額との差額25万円
実際の売却価額45万+時価の70%相当額との差額25万円=総収入金額70万円
総収入金額70万-譲渡原価45万=所得金額25万円
という計算をして所得金額を出すことになります。

※暗号資産の取得価額
暗号資産の取得に際しては、手数料がかかる場合が多くあります。
購入手数料など暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を含む金額が取得価額となります。
例えば、200万円で暗号資産を購入した際に、手数料550円(消費税込み)も併せて支払ったという場合については、取得価額はどうなるでしょうか。
この場合の暗号資産の取得価額は手数料を加えた200万550円ということになります。

~次回に続く~

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