偽装一人親方は脱税に注意

費用を安く済ませるために実際には労働者として扱うべき人を請負契約の相手方である一人親方と偽装している場合における税金関係の問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

偽装一人親方とは

一人親方とは、建設業などにおいて、業務委託や請負契約によって元請会社から仕事を任せられる個人事業主のことを言います。
特に建設業界においては、工事の完成に向けて人員の不足を解消するため、一人親方が多く活用されています。
一人親方は個人事業主ということになるので、原則として企業の労働者とはならず、自由に仕事を選べたり、好きなタイミングで仕事をできるなど、多種多様な働き方ができる点でメリットがあります。一方、社会保険の加入や就労時間の制限などがかからないという点で企業側にもメリットがあります。
偽装一人親方とは、本来は企業に属していたり企業の指揮命令下に置かれている労働者として扱わなければならない人を、指揮命令下に置き労働者と同じ待遇で労働させながら請負契約を結ぶなどして個人事業主としての体面を取り繕っている一人親方のことを言います。
なぜそのような偽装をするかというと、建設業では建設業許可の要件として労働者の社会保険加入が定められており、社会保険料などは企業が負担することになります。
個人事業主である一人親方であれば、社会保険加入は必要ないので、社会保険料などの費用を抑えることができます。
また、個人事業主である一人親方は、労働者に適用される労働基準法が適用されないことになるため、残業時間の規制や有給休暇の取得義務などの様々な規制を受けることがなくなります。
そのため、偽装一人親方が生まれているといえます。

偽装一人親方と税金

一人親方と業務委託契約や請負契約を結んでいる企業は、一人親方に対して業務委託料や報酬を支払わなければなりません。
報酬等は一人親方の所得となるため、通常は、一人親方が所得税等について確定申告をする必要があります。
企業側は一人親方に対して支払った報酬などは外注費として経費計上することで法人税を安く済ませることができますし、消費税についても仕入額控除が使えるため、安く済みます。
しかし、偽装一人親方の場合には、実際には企業に雇用された労働者といえるため、偽装一人親方に対して支払われた金銭は「報酬」などの名目であったとしても「給与」とみなされる可能性が高くなります。
「給与」となる場合、企業は「源泉徴収」義務が課せられており、給与から源泉徴収をし、源泉徴収税を納める必要があります。
そのため、源泉徴収をしていない偽装一人親方の場合には、企業側は所得税法違反となってしまいます。
その場合、不納付加算税を課せられたり、所得税法や法人税法、消費税法や地方税法違反として告発を受けてしまう可能性があります。
また、偽装一人親方側も他の企業からの委託も受けていたりする場合など自ら確定申告をしなければならないのに、それを怠っていれば、所得税法違反となってしまいます。

偽装一人親方を疑われたら

偽装一人親方かどうかについては、一人親方との契約内容、会社との関係、実際の労働内容など様々な事情によって判断されます。
一人親方が確定申告をしていないことから税務調査が会社に入ったり、内部告発などから発覚したりと発覚する経緯も様々なものが考えられます。
一人親方に対する外注費として計上した経費が税務署から「給与」として扱われてしまったという場合には、きちんと給与ではなく「報酬」であるということを主張していかないと、過少申告だけではなく、源泉徴収義務違反や消費税法違反などにもなってしまいます。
悪質な仮装隠ぺい行為とされてしまえば、刑事告発も考えられます。
そのような悪い結果とならないためにも、請負契約書をきちんと作成したり、事前に弁護士などの専門家に相談してリスクを予防することが大事です。
そして、もし偽装一人親方を疑われた場合には、税理士や弁護士といった専門家とともに、偽装ではないことや、悪質性が低いことなどを説得的に税務署や国税局に説明していく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、一人親方に関する税金問題にも対応しています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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