Archive for the ‘所得税・法人税’ Category

不法な利益も「収益」となる

2024-01-03
不法な利益

不法な利益を得ていた会社における問題について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 事例

東京都にある会社X社は、金銭貸付等を事業を営んでいたところ、利息制限法の制限を超える利率で貸付を行っていました。
X社は、令和○年分の確定申告において、その年に回収した利息分のうち、利息制限法の制限を超える部分については、法律上無効なものであるから、収益として計上しなかったところ、税務調査を受けることになりました。

2 前提として―利息制限法

業者が金銭を貸し付ける際、利息を付けるのが通常です。利息制限法は、その利息が、不当に高いものとならないよう、一定の制限を設けています。たとえば、100万円以上の金銭を貸し付ける場合、年15%を超える利息については、無効とされ(利息制限法1条各号)、利息制限法を超える部分の返済は、残存元金に充当されます。

3 収益の意義

法人(ここでは日本国内に本店または主たる事務所がある法人を前提とします。)は、「当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額」など一定の事項を記載した申告書を提出する必要があります(法人税法74条)。確定申告と呼ばれるものです。
法人の各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額から同年度の損金の額を控除した金額とされています(同法22条1項)。
そして、法人税法22条2項において、益金の額に算入すべき収益は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益」とされています。
紹介した事例においては、法律上無効な取決めに基づいて回収した利息が収益に該当するかが問題となります。
この点、判例は、回収した利息のうち、利息制限法所定の制限を超えた部分についても、収益に該当するものとしています(最判昭和46年11月16日刑集25巻8号938頁)。
よって、X社が、その年に回収した利息分のうち、利息制限法の制限を超える部分について収益として計上しなかったことについては、法人税を免れたものにあたり、その法人の代表者などは、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(または罰金を併科)とされます(法人税法159条1項)。

4 法人税違反における弁護活動

X社は、税務調査を受けている段階ですので、早期に、修正申告をするということが考えられます。
修正申告は、たとえば会社に顧問の税理士がいる場合には、その税理士に行ってもらうことになりますが、法解釈について、弁護士のアドバイスを要することも考えられます。
特に、紹介した事例とは異なり、不法・違法な仕事によって収益を得る事案というのは、他にも様々なものが考えられ、収益として計上すべきかどうかということを慎重に判断する必要がある場合もあります。
また、顧問の税理士がいない場合にも、税務調査における対応や修正申告を取り扱っている税理士を探す必要があります。
税務調査の結果、法人税の過少申告だと発覚した際には、税務署長などが正しい税金の額を納めるよう命ずることになります(更正処分など)。
もっともそれにとどまらず、免れた法人税の額や行為態様、期間などによっては、税務調査にとどまらず、刑事事件に発展する場合もあります。そうしたことが予想される場合には、脱税事件の経験のある弁護士に、早期に相談する必要があります。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、法人税法違反など多数の事件を取り扱っています。法人税法違反の疑いがあるとして税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

業務上横領と課税

2023-11-01

業務上横領によって得た利益についても課税対象となるでしょうか?犯罪行為によって得た利益に対する課税について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

福岡県福岡市にある会社で経理を担当していたAさんは、会社のために保管していた現金を着服し、1年間で合計4500万円ほど横領していました。
会社の売り上げと決算書の内容に不審な点があることから、会社に福岡国税局資料調査課から税務調査が入り、Aさんの業務上横領が発覚しました。
今後のことが不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用することにしました。
(フィクションです)

解説

業務上横領によって得た利益は所得税の課税対象となるか

業務上横領によって得た利益は、違法な行為によって得た利益といえるため、所得と言えるでしょうか。
この点について、所得税基本通達36-1は、「法第36条1項に規定する『収入金額とすべき金額』又は『総収入金額に算入すべき金額』は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」と規定しています。
したがって、本件のAさんが業務上横領によって得た利益についても所得として確定申告をする必要があるということになります。

一時所得か雑所得か

次にAさんが業務上横領によって得た利益が、「一時所得」なのか「雑所得」なのかが、税額を計算するベースとなる「課税所得金額」に大きな差がでるため問題となります。

①一時所得の場合
(一時所得の金額-必要経費-特別控除額)×2分の1=一時所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、(4500万-0円-50万)÷2=2225万円となり、2225万円が一時所得の課税所得金額となります。
※一時所得の金額から経費を差し引いた金額が50万円以上の場合、特別控除額は50万円
Aさんに他に収入がない場合には、総所得金額も2225万円となるため、所得税の税率は40%となります。
また、この場合の所得税の控除額は279万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は2225万×0.4-279万6000円=610万4000円となります。

②雑所得の場合
雑所得の金額-必要経費=雑所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、4500万-0円=4500万円となり、4500万円が課税所得金額となります。
4000万円を超えている場合の所得税の税率は45%控除額は479万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は4500万×0.45-479万6000円=1545万4000円となります。

このように、一時所得か雑所得かでは、所得税の額に2倍以上の差が出てしまうことになります。
では、本件のAさんの場合には一時所得と雑所得のいずれに当たる可能性が高いでしょうか。
この点について、最高裁は「所得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得および譲渡所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」と判示しています(最判平成29年12月15日)。
そのため、一時所得か雑所得かの区別は、ほかの8種類の所得に当たらないことを前提として、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」といえるか否かが主な基準となっているということができるでしょう。
本件のAさんの場合には、1度に4500万円を着服したのであれば、継続的行為とは明らかにいえないので、一時所得に当たるということになるでしょう。
一方、何回かに分けて着服していた場合には、行為の期間や回数、頻度そのほかの態様など判例が示している考慮要素をもとに判断していくことになり、一概にどちらに当たるということは難しいといえます。

一時所得に当たるのか否かについては、このように様々な考慮要素をもとに判断していくことになるため、一度専門家に相談してみるのがよいでしょう。

Aさんは今後どうなるか

Aさんは、会社のお金を業務上横領しているため、会社が警察などの捜査機関に被害届の提出や告訴をすれば、業務上横領の被疑者として取り調べを受けたり、刑事裁判で有罪の判決を受けて前科が付く可能性があります。
業務上横領の金額が多額ですので、会社と示談ができなければ実刑となる可能性が高いといえるでしょう。
一方、会社が被害届の提出など刑事事件化をしなかったとしても、会社から業務上横領によって失われた利益を返還するよう、損害賠償請求をされる可能性もあります。

このような会社との関係とは別に、Aさんは業務上横領によって得た利益について確定申告をしていないはずなので、無申告又過少申告についてのペナルティを別途受ける可能性があります。
確定申告期限内に一切の所得について確定申告がなされていなかった場合には無申告加算税、一部だけしか確定申告をしていなかった場合には、過少申告加算税がペナルティとして課されます。
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、無申告加算税又は過少申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
さらに、納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。

このほか、Aさんの場合には、税務調査が入っていますが、悪質性が高かったり脱税額が巨額になる場合には、査察調査に発展することもあります。
査察調査は財務調査と違い、強制的に調査をすることができ、最終的には刑事告発に至る場合が少なくありません。実際、査察調査から刑事告発される割合は約70%と言われています。

まとめ

Aさんのように犯罪によって得られた利益も課税対象になりますので、確定申告をしていなければ、業務上横領の罪とは別に所得税法違反など税法違反の罪にも問われてしまう可能性があります。
そのため、犯罪行為によって利益を得ている場合には、その犯罪だけではなく税金の問題についても考慮しておく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

金密輸が発覚すると厳しい処罰も

2023-10-18

金密輸について、発覚するとどのような処罰が考えられるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.金密輸に関係する犯罪

金密輸の事例としては、東南アジアなどで金を買い付け、日本に持ち帰って買い取り業者に売るというものがあります。
海外で購入したものを日本に持ち帰ることは輸入に当たるといえますが、金を日本に持ち帰る場合には、注意が必要です。
重量が1キログラムを超える金の地金(純度90%以上)又は②ほかのお土産と合わせて20万円を超える金の地金を携帯輸入する場合には、事前に税関で申告する必要があります。
このような場合に、無申告で日本に持ち帰ると、「関税法違反」として処罰の対象となります。
関税法違反となる場合には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはその両方の刑罰が科せられる可能性があります。

また、日本で売買することによって得た利益については、所得となります。
この場合に問題となるのは、消費税法、所得税法、地方税法です。
金を売った利益が所得となるため、所得税や住民税の確定申告が必要になりますし、売った場合には消費税の納税義務も生じます。
そのため、確定申告をしていなかったり、消費税の納付をしていない場合には、消費税法違反や所得税法違反、地方税法違反という罪に問われてしまう可能性があります。
この場合の罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科となっています。

2.手続きの流れ

金の密輸が疑われる場合、税関から通報され警察の捜査が開始されることもありますが、税務調査によって発覚する場合もあります。
税務調査は、所得隠しの疑いがあったりする場合に、確定申告の内容が適切かどうかを見極めるために行われるもので、任意調査です。
しかし、この税務調査で所得隠しが明るみになり、意図的に所得を隠していて悪質性が高かったり、無申告にかかる税額が多額に上ったりした場合には、国税局の査察調査を受けることになります。
査察調査は、強制調査として行われ、刑事告発を視野に行われます。
国税局査察部が会社などに立ち入り、必要な資料などを強制的に押収して聴き取り調査などを行います。
その後、刑事告発するかどうかが検討され、刑事告発すべきとなった場合には、検察庁に対して告発がなされ、以後は刑事事件として捜査を受けることになります。
多くの場合には逮捕されて捜査を受けることになり、その後刑事裁判を受けることになります。
刑事裁判では、有罪無罪のほか、有罪の場合には実刑か執行猶予判決か、罰金をいくら併科すべきかが決められます。
このように、脱税を疑われる場合には、税務調査から査察調査、刑事事件手続まで発展する可能性があります。

3.どのように対処すべきか

税務署の税務調査が入った場合には、まずは専門家に相談することをおすすめします。
なぜ税務調査が入ったのかを専門家である税理士や弁護士とともに検討して、査察調査に発展したり、刑事事件化してしまう可能性があるのかを確認してもらいましょう。
場合によっては、修正申告などで十分対応することが可能です。
しかし、査察調査や刑事事件に発展する可能性がある場合には、より慎重な対応が必要です。
告発をされないために、修正申告を行い未納の税額を早急に収めたり、聴き取り調査に対してきちんと対応したりできるかが重要となってきます。
また、刑事事件となって捜査を受けることになった場合には、逮捕されないための活動や不起訴獲得に向けた活動、さらには刑事裁判に対する準備なども早い段階から行っていくことが必要です。
特に査察調査が入った場合には、告発率は70%程度と言われていますので、刑事事件化を見据えて刑事事件に強い弁護士にも相談し、どのように対処していくべきか確認していくべきでしょう。
金密輸の場合には、悪質性が高いとして、比較的長期の懲役刑が科される可能性もありますし、併せて利益の3割程度の罰金刑も科される可能性があります。
刑罰とは別に、本来納めるべきであった税額に重加算税などの追徴課税も課せられることになるため、金銭的なペナルティが非常に重いものになります。
早期に弁護士や税理士などの専門家に相談して対応していきましょう。

【制度解説】累進課税制度とは

2023-10-04

所得税などに適用されている累進課税制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

累進課税制度とは

累進課税制度とは、課税対象の金額が増えるごとに税率が上がる制度のことです。
累進課税制度には、単純累進課税と超過累進課税の2種類があります。
単純累進課税は累進課税率を課税額全体に適用する方法です。
一方、超過累進課税とは、一定の金額を超過した分だけその超過した分に対応する累進課税率をそれぞれ乗じて計算する方法です。
日本では、超過累進課税の方法が採用されています。
日本で累進課税の対象となっている税金は、所得税、相続税、贈与税の3つです。

所得税の税率

課税される所得金額        税率
1,000~1,949,000円まで      5%
1,950,000~3,299,000円まで   10%
3,300,000~6,949,000円まで   20%
6,950,000~8,999,000円まで   23%
9,000,000~17,999,000円まで   33%
18,000,000~39,999,000円まで  40%
40,000,000円以上           45%

累進課税の計算例

超過累進課税の場合
①所得300万円の場合
195万円までは5%195万円以上の部分が10%の税率が掛けられます。
195万円×5%+(300万円-195万円)×10%=202,500円
20万2500円が所得税額となります。
②所得500万円の場合
195万円までが5%195万円以上330万円までが10%330万円以上650万円までが20%の税率が掛けられます。
195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(500万円-330万円)×20%=572,500円
57万2500円が所得税額となります。

単純累進課税の場合
①所得300万円の場合
300万円に対応する税率は10%となるため
300万円×10%=30万円(税額)
②所得500万円の場合
500万円に対応する税率は20%となるため
500万円×20%=100万円(税額)
となります。
超過累進課税に比べると単純累進課税の方が納めるべき税額がかなり高額になることがわかります。

所得税の速算表

これまで見てきたように、所得税の計算は超過累進課税をとっているため、累進課税が掛けられる金額ごとに計算が必要となり、非常に煩雑です。
そのため、速算表に基づく計算が便利です。
速算表は国税庁のホームページに掲載されています。
課税所得金額にそれに対応する税率を掛けたものから速算表に記載がある「控除額」を差し引けば、累進課税の段階ごとに各税率を計算して算出したのと同じ結果が得られることになります。
たとえば、課税所得500万円の場合には、500万円×20%-427,500円=572,500円となります。

課税される所得金額             税率   控除額
1,000円 から 1,949,000円まで       5%    0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで    10%    97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで    20%    427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで    23%    636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで   33%    1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで   40%    2,796,000円
40,000,000円 以上               45%    4,796,000円

所得税の計算は

これまで見てきたのは累進課税の基本的な内容です。
実際の所得税額の計算をする場合には、そもそも「課税所得金額」を算出する必要があります。
課税所得金額とは、課税がなされる所得金額のことで、年収から経費や給与所得控除金額などを差し引いて求められるものです。
どのような支出が経費として認められるのか、どのような場合に控除が受けられるのかなど分からないことがあれば、確定申告前に専門家に相談しましょう。

不正加担先に架空外注費を計上した法人税法違反事件

2023-09-27

不正加担先に虚偽の領収証を作成させ、架空の外注費を計上する方法により所得を秘匿し、法人税を免れていた法人税法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

Aさんは、エアコンの設置工事等を行っている会社(A社)の代表をしていますが、友人Xと共謀して、Xが経営している会社(X社)と取引事実がないにもかかわらず、X社に虚偽の領収証を作成させ、架空の外注費を計上する方法により、所得を秘匿し、法人税を免れていました。
A社には東京国税局の査察調査が入り、AさんとA社は法人税法違反の容疑で東京地方検察庁に告発されました。
(令和5年6月東京国税局査察部発表の「令和4年度査察の概要」に記載の事案をもとに作成したフィクションです)

架空外注費

外注費とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に発生する費用のことです。
外注費は経費として計上することで、法人税が課税される所得の額を低くすることができ、支払うべき法人税の額が減ることになります。
そのため、税金を安くしようとして存在しない架空の外注費を計上してしまうことが起きます。
架空外注費を計上する手口として多いのは、参考事件のように取引先などと通謀して虚偽の請求書や領収証を作成してもらい、それにより実際には存在しない外注をあったかのように偽装して経費計上する手口です。
このような手口については、税務調査によって発覚してしまいます。
外注の場合には、外注先の会社が確定申告をきちんとしているのかを調べたり、金銭の流れが実際にあるのかを口座情報などをもとに綿密に調べていきます。
また、外注費として計上する場合、消費税についても仕入額控除がなされることになるため、消費税の脱税についても問われる可能性があります。

仮装隠ぺい

架空外注費計上の手口として、取引先等と通謀して虚偽の領収証等を作成して行うものであった場合、仮装隠ぺい行為を行ったとして悪質性が高い事案に当たるとされる可能性が高いといえます。
通常、過少申告や無申告などの税務調査は過去3~5年の期間にさかのぼって行われることが多いですが、仮装員ぺが行われた悪質性の高い法人税脱税事案となると、調査期間が7年前までさかのぼられることになります。
また、税務調査にとどまらず査察調査が入る可能性も高くなります。
架空外注費計上の場合には、法人税の過少申告事案ということになるため、免れた税額が少額の場合には査察調査までならない可能性がありますが、悪質性が高いと判断された場合には、比較的少額でも査察調査が入る可能性もあります。

ペナルティ

架空外注費の計上により過少申告をしてしまった場合、過少申告加算税が課せられることになります。
また、仮装隠ぺい行為として悪質性が高いと判断される場合には、過少申告加算税に代えて重加算税が課せられることになります。
このほか、延滞税なども課せられ、非常に大きな金銭的負担がかかってきます。
また、参考事件のように、刑事告発をされる可能性もあり、刑事告発されると逮捕されてしまう可能性も出てきます。
告発後の捜査を経た結果、起訴されることになれば、刑事裁判となり、刑事罰が科せられる可能性が非常に高くなります。
仮装隠ぺいによる法人税逋脱犯の場合、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその両方の刑罰が科せられることになります。
多くの事件では懲役刑の他に罰金刑も科せられており、罰金の金額は免れた税額(逋脱額)の2~3割の金額となることが多いです。
この罰金は、重加算税などの追徴課税とは別に科されることになるため、追徴課税にとどまらず金銭的負担が非常に大きくなってしまいます。

架空外注を疑われたら

架空外注費の計上を疑われた場合には、早期に対応していく必要があります。
税務調査や査察調査への対応だけでなく、修正申告や予納などの行為をすることによって、告発を避けられる可能性もあります。
税理士だけでなく、弁護士にも相談して刑事告発も見据えた対応を早めに整えていきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料ですので、一度お電話下さい。

偽装一人親方は脱税に注意

2023-09-20

費用を安く済ませるために実際には労働者として扱うべき人を請負契約の相手方である一人親方と偽装している場合における税金関係の問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

偽装一人親方とは

一人親方とは、建設業などにおいて、業務委託や請負契約によって元請会社から仕事を任せられる個人事業主のことを言います。
特に建設業界においては、工事の完成に向けて人員の不足を解消するため、一人親方が多く活用されています。
一人親方は個人事業主ということになるので、原則として企業の労働者とはならず、自由に仕事を選べたり、好きなタイミングで仕事をできるなど、多種多様な働き方ができる点でメリットがあります。一方、社会保険の加入や就労時間の制限などがかからないという点で企業側にもメリットがあります。
偽装一人親方とは、本来は企業に属していたり企業の指揮命令下に置かれている労働者として扱わなければならない人を、指揮命令下に置き労働者と同じ待遇で労働させながら請負契約を結ぶなどして個人事業主としての体面を取り繕っている一人親方のことを言います。
なぜそのような偽装をするかというと、建設業では建設業許可の要件として労働者の社会保険加入が定められており、社会保険料などは企業が負担することになります。
個人事業主である一人親方であれば、社会保険加入は必要ないので、社会保険料などの費用を抑えることができます。
また、個人事業主である一人親方は、労働者に適用される労働基準法が適用されないことになるため、残業時間の規制や有給休暇の取得義務などの様々な規制を受けることがなくなります。
そのため、偽装一人親方が生まれているといえます。

偽装一人親方と税金

一人親方と業務委託契約や請負契約を結んでいる企業は、一人親方に対して業務委託料や報酬を支払わなければなりません。
報酬等は一人親方の所得となるため、通常は、一人親方が所得税等について確定申告をする必要があります。
企業側は一人親方に対して支払った報酬などは外注費として経費計上することで法人税を安く済ませることができますし、消費税についても仕入額控除が使えるため、安く済みます。
しかし、偽装一人親方の場合には、実際には企業に雇用された労働者といえるため、偽装一人親方に対して支払われた金銭は「報酬」などの名目であったとしても「給与」とみなされる可能性が高くなります。
「給与」となる場合、企業は「源泉徴収」義務が課せられており、給与から源泉徴収をし、源泉徴収税を納める必要があります。
そのため、源泉徴収をしていない偽装一人親方の場合には、企業側は所得税法違反となってしまいます。
その場合、不納付加算税を課せられたり、所得税法や法人税法、消費税法や地方税法違反として告発を受けてしまう可能性があります。
また、偽装一人親方側も他の企業からの委託も受けていたりする場合など自ら確定申告をしなければならないのに、それを怠っていれば、所得税法違反となってしまいます。

偽装一人親方を疑われたら

偽装一人親方かどうかについては、一人親方との契約内容、会社との関係、実際の労働内容など様々な事情によって判断されます。
一人親方が確定申告をしていないことから税務調査が会社に入ったり、内部告発などから発覚したりと発覚する経緯も様々なものが考えられます。
一人親方に対する外注費として計上した経費が税務署から「給与」として扱われてしまったという場合には、きちんと給与ではなく「報酬」であるということを主張していかないと、過少申告だけではなく、源泉徴収義務違反や消費税法違反などにもなってしまいます。
悪質な仮装隠ぺい行為とされてしまえば、刑事告発も考えられます。
そのような悪い結果とならないためにも、請負契約書をきちんと作成したり、事前に弁護士などの専門家に相談してリスクを予防することが大事です。
そして、もし偽装一人親方を疑われた場合には、税理士や弁護士といった専門家とともに、偽装ではないことや、悪質性が低いことなどを説得的に税務署や国税局に説明していく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、一人親方に関する税金問題にも対応しています。初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

ペーパーカンパニーは脱税を疑われやすい!

2023-07-19

ペーパーカンパニーは脱税を疑われやすいということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

ペーパーカンパニーとは

ペーパーカンパニーとは、一般的にダミー会社のように、登記上は存在するものの、その事業実態がない会社のことを指すものとして使われています。
しかし、登記上存在するものの事業は行っていない会社の中には、事業活動を行っていたが何らかの事情によって事業を休止しているだけの休眠会社や、特定の事業や特定資産保有のために設立された特別目的会社なども、ペーパーカンパニーの一種として考えられています。

ここで取り上げるペーパーカンパニーは、主に税負担を軽減するために設立された会社を考えていきます。

ペーパーカンパニーによる節税?

ペーパーカンパニーを税負担の軽減のために設立する主な理由は以下の3つが考えられます。
①法人税の軽減税率適用のため
法人税は法人の所得に応じて税額が決まりますが、資本金が1億円以下の中小企業の場合には、所得が一定額以下であれば軽減税率が適用されます。
そのため、複数の会社に利益を分散させて税率を下げることを目的として設立される場合があります。
②交際費の経費計上
中小企業の場合、交際費のうち接待飲食費の50%または年間800万円までは、交際費として経費計上できます。
このことを利用して、会社を増やして経費計上できる額を多くしようとして設立される場合があります。
③売却損で利益を減額
会社が不動産を持っている場合に、不動産の帳簿価格を下回る価格でペーパーカンパニーに不動産を売却することで、その差額が売却損となり、会社の利益から売却損を差し引くことで、会社の法人税算定の基準となる所得額を減らそうとする目的のために設立する場合があります。
また、ペーパーカンパニーの株式を親会社として保有している場合、ペーパーカンパニーの株式価格が下落した時点でそのペーパーカンパニーの株式を売却することでも売却損が出るため、同様に会社の法人税額を減らす目的でそのようなペーパーカンパニーを設立することもあります。

もっぱらこれらの目的のためにペーパーカンパニーを設立していると考えられる場合、もはや節税ではなく脱税として税務調査や査察調査を受ける可能性が高くなります。
しかし、ペーパーカンパニーの設立目的がどのようなものであるかは、実際に調査に入ってみないとわからないことも多くあります。
そのため、ペーパーカンパニーだと思われる会社を設立していると、税務調査を受けやすいといえるでしょう。

脱税を疑われたら

ペーパーカンパニーを利用して節税対策しようという触れ込みで、コンサルティングを受けた会社が、実際には脱税に当たるとして方法を指南したコンサルティング会社とともに告発された事件もあります。
休眠会社を持っているだけでは当然違法ではありませんが、設立以来事業実績がない会社であったり、事業実態に比して接待交際費が多く計上されていたりする場合には、脱税を疑われる可能性が高くなります。
いまだ税務調査の段階であったとしても、その調査でどのように回答するかやどういった資料を提出するかによって、悪質な脱税行為であるとして査察調査に移行してしまう可能性があります。
そうならないためにも、早めの段階から税理士や弁護士といった専門家に相談し、必要であれば修正申告を行ったり、必要な資料を準備したりして調査に適切に対応していく必要があります。
休眠会社を利用して取引を行った、節税のためにペーパーカンパニーを立ち上げたなど、不安に思われる方は、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では脱税に関する相談は初回無料です。

【制度解説】新NISAについて

2023-06-14

新NISAが,2024年1月1日から始まります。現行のNISAがどのように変わるのかその制度内容について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

NISAとは

Nippon Individual Savings Accountの頭文字をから作られた略称であり,少額投資非課税制度という個人投資家のための投資に係る税制優遇制度です。

NISAによる税の優遇を受けるには,証券会社や銀行にそれらの各金融機関が提供するNISA口座を選択して口座開設すればOKであり,制度の枠内で税の優遇を受けることができるものです。

この場合,個人投資家が,非NISA口座で株取引や投資信託をしたときには,それらの金融商品から得られた配当金や譲渡益に対し,一定の税率(20.315%)に基づく課税がなされますが,開設したNISA口座内で金融商品を取引した場合,それから得られた配当金や譲渡益が非課税となります。

新NISAの制度概要

次のような点が主な変更点です。

非課税投資期間の無期限化
現行では,イ:一般NISAが5年間,ロ:つみたてNISAが20年間と有期であるのに対し,新NISAではこの期間が撤廃されて無期限となりました。

年間投資枠の拡大
現行の120万円(イの場合)ないし40万円(ロの場合)から,新NISAでは,制度の枠自体が一本化された上で内部的に振り分けられ,それぞれ240万円(成長投資枠)と120万円(積立投資枠)の合計360万円となりました。

非課税保有限度枠の拡大
現行の600万円(イの場合,5年間分)ないし800万円(ロの場合,20年間分)から,新NISAでは生涯投資枠として,最大で合計1800万円(年間投資枠の5年分)と大きくなりました。

生涯投資枠は回復すること
さらに,新NISAでは,上記の合計1800万円の最大枠は,例えば1000万円分の株式を譲渡した場合,翌年には,枠は800万円ではなく1800万円に回復します。 

利用可能年齢,保有口座数
 これは現行と同じく日本に住む18歳以上の人(自然人)であること,NISA口座の保有は一人一口座しかできないことは変わりありません。

⑹なお,未成年者を対象とした現行のジュニアNISAは2023年で終了します。

貯蓄から投資へ

このようにNISAは,投資による収益を非課税とすることから,個人投資家のみならず,広く一般個人に対しても,投資を勧めてこれにいざなうものといえます。

そして,これは,政府を代表する岸田総理が,「新しい資本主義」を標榜して,国民一人一人に対し,保有の金融資産をほとんど利子を生じなくなってしまった貯蓄から,裁量取引によれば,比べ物にならないくらいの収益を生むことができる投資へと勧奨し,これにシフトさせることにより,個人の「資産所得倍増プラン」を実現させることにより,国税庁の提起した老後2000万円問題といった深刻な事態に対する一つの回答として推し進める制度といえます。

新NISA利用に伴う注意点

このように新NISAでは,国民一般の投資への関心を向けさせ,投資の実行を強く推進させるものとなっていることはお分かりいただけたと思います。
しかし,注意すべきは,新NISAの前提となる投資にはリスクが伴います。「投資に絶対はない」と言われるように,預金と異なり投資では,通常,元本保証もなく元本割れは当然のこと最悪,元本全消失に至る場合(ハイリスクハイリターン)があるということです。太利を狙わず,熟慮の上に慎重な投資活動となるよう心がけましょう。

また,生き馬の目を抜く金融市場において,今後,多種多様な金融商品が市場に多く供給されることが見込まれ,取引安全を保護する金商法の規制を潜脱した業者も出現し跋扈するなど,過大なあおり宣伝広告による金融商品等には十分な注意が必要となります。
正しい知識に基づき賢い資産運用になるようにしましょう。

もし,新NISAや金融商品をめぐる取引等に関し,迷いや疑問を生じた場合には,弁護士等に相談することをお勧めします。

【事件解説】仙台国税局が生コン業者を告発

2023-06-07

震災復興工事の生コン業者を仙台国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

東日本大震災の復興工事などで得た利益の一部を申告せず、計約8000万円を脱税したとして、仙台国税局は、所得税法違反容疑などで、生コンクリート運搬業を営んでいたA氏を福島地検に告発したと発表した。
同国税局によると、A氏は2018~20年、生コン運搬業で得た所得約1億4400万円を申告せず、所得税約5100万円と消費税や地方消費税計約2900万円の免れた疑いが持たれている。
福島県では、東日本大震災による津波被害の復旧工事で生コンの需要が高まっており、運搬業の収入も伸びていたという。隠した金は、遊興費や生活費などに充てていた。
(2023年4月27日時事通信ニュースより。一部改変)

生コン運搬業

本事件のA氏は、生コンクリート運搬業を営んでいたということですが、免れた税金は所得税や消費税となっています。
事業を営んでいる場合には、法人税ではないかと思われる方もいると思いますが、法人税は、字のごとく「法人」にかかる税金です。
そのため、基本的に法人税は会社の収益にかけられる税金といえます。
会社ではなく、個人で事業を営んでいる個人事業主の方には「所得税」が課せられることになり、本事件のA氏も個人事業主であったと考えることができます。
A氏は生コンクリートの運搬業を営んでいたということですが、運搬業としては、ウーバーイーツなどの宅配業も含まれており、そう考えると、会社に所属せずに個人で運搬業を営んでいる人が相当数いることが実感できると思います。

個人事業主の確定申告

個人事業主の方が、その事業により収入を得た場合には、所得税や消費税、個人事業主税などを納める必要が出てくるため、確定申告が必要となります。
もっとも、個人事業主ではあるものの、会社から委託を受けて事業を行っており、会社からお給料という形で支払いが行われている場合、会社が年末調整をしてくれていることがあります。
年末調整がなされている場合には、所得税の確定申告をする必要はありません。

所得税などの確定申告については、収入だけでなく、経費なども計上する必要があります。
開業届を出し、青色申告の承認を得ている方の場合には、複式簿記方式が採用されることになるため、経費として計上するものについての領収書等をしっかりと保管し、提出していく必要があるなど、確定申告の手続きが煩雑にはなるものの、控除額が白色申告と比べて多いなど、メリットもあります。
確定申告の仕方がわからないなどの場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。

刑事告発

本事件では、所得税法違反や消費税法違反で福島地検に告発がなされています。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。
国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約70%くらいといわれています。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合は執行猶予付きの判決が下されますが、罰金が併科される場合が多いようです。
罰金額は脱税額の20~30%くらいの金額とされる場合が多いです。
そのため、本事件では、有罪の判決が下された場合、所得税約5100万と消費税等訳2900万の合計約8000万円くらいの税金を免れているので、2000万~3000万円くらいの罰金が予想されます。

刑事告発を受けたら

脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、逮捕を避けることが出来たり、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を中心に扱っている事務所ですので、脱税事件の刑事手続にもしっかりとした対応ができます。
早急に弊所までお問い合わせください。初回の相談は無料です。

【事例解説】人気トレカ転売で申告漏れ

2023-05-31

トレーディングカード(トレカ)の転売で得た利益について税申告をしていなかったとして、大阪国税局から税務調査を受けた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

事件の概要

「遊戯王」や「ポケモン」など人気アニメのトレーディングカード(トレカ)を転売していた神戸市の男性3人と会社1社が2022年、大阪国税局の税務調査を受け、合計1億円の申告漏れを指摘されていた。
関係者によると、神戸市に住む男性3人は、17~21年、インターネットサイトや中古品販売店で購入したトレカをネットなどで転売し、利益を得ていたが、確定申告を怠り、合計約8000万円の申告漏れを指摘され、無申告加算税を含む合計約1900万円を追徴課税された。
男性3人は税務調査に対して「申告方法がわからなかった」などと説明したという。
また、トレカ販売会社については、国税局が調査した結果、2年間売り上げの一部を除外するなどして利益を圧縮して申告しており、仮装隠ぺいを伴う所得隠しがあったとして、重加算税を含む約600万円を追徴課税された。
(読売新聞オンライン2023年4月6日の記事より抜粋)

トレカ転売

トレカには人気アニメのキャラクターや著名人の写真などのカードやそれ自体が対戦ゲームの主要な使用品となるカードなど様々なものがありますが、共通しているのは、所持しているカードを他人とトレード(交換)することができるという点にあります。
このトレードはあくまで交換なので、基本的に同価値のカード同士を交換することがもともとの意味で、お金を支払て購入することは例外的な場合といえます。
しかし、全体総数が少なかったりゲーム的に非常に強いカードなどは「レアカード」と呼ばれ、お金を支払ってでも手に入れたいという人が多くいるため、最近ではインターネットサイトを通じて高額で転売されるということも多くなってきています。
新品であれば数枚入ったパックで数百円で販売されているカードが、レアカード1枚で1000万円以上で取引されることもあり、投資や転売目的で購入されることも多くなっています。

トレカ転売で得た利益

トレカ転売で得た利益については、所得となります。
もっとも、転売価格すべてが所得税の課税対象となるわけではなく、カードを取得した時にかかった金額(仕入額)については経費として差し引くことができます。
そのため、所得税の課税対象となるのは、「転売価格-仕入にかかった経費」という計算式によって算出された金額ということになります。
トレカ販売を会社として行っていた場合には、販売によって得た利益に対して法人税が課税されます。法人税の課税対象も仕入にかかった経費などを差し引いた金額になります。
また、所得税や法人税に加えて、消費税など別の税金もかかってくることになります。

トレカ転売利益の確定申告

トレカ転売によって得た利益について、20万以上ある場合には、確定申告が必要となります。
確定申告を怠っていた場合には、税務署の税務調査などを受けることになり、本来納めるべきであった税額(本税)に加えて、無申告加算税や延滞税といった追徴課税が課せられることになります。
また、本事件のトレカ販売会社のように、確定申告は行っていたものの、売り上げの一部を除外するなどして、利益を実際よりも少なく申告していた場合には、過少申告加算税が課せられることになります。
さらに、無申告や過少申告の方法が、仮装隠ぺいを伴うような悪質性が高い行為によって行われていたとされた場合には、無申告加算税や過少申告加算税に代えて、重加算税が課せられる場合もあります。
重加算税が課せられる多くの場合は、国税局による査察調査を経て課せられることになるため、査察が入った場合には高額の追徴課税がなされることを覚悟する必要があります。

査察調査が入った場合には、重加算税などの追徴課税だけでなく、検察庁への刑事告発がなされる可能性も考えておかなければなりません。
本事件のトレカ販売会社やその代表者が刑事告発をされたかどうかについては報道では明らかではありませんが、仮装隠ぺい行為によって法人税を免れていたということであれば、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその両方が課されることになり、罰金の額は免れた税額まで上限を上げることが可能となっています。
刑事告発をされても、必ず刑事裁判になるわけではありませんが、告発からの起訴率は約70%と言われており、高い確率で刑事裁判で罪に問われることになります。

税務調査を受けたら

トレカ転売を個人で行っていたとしても、利益を多く得ていれば確定申告が必要となります。
本事件では「申告方法がわからなかった」と男性らは説明しているようですが、そのような説明は確定申告をしないことを正当化する理由にはなりません
確定申告が必要か否か、必要だとしてどのように申告したらいいかを専門家に相談して検討してもらいましょう。
また、確定申告を忘れていたり、確定申告の内容が間違っていた場合には、早急に修正して確定申告をし直しましょう。
税務調査がすでに入っている場合には、税理士や弁護士などに相談し、専門家とともに調査に臨み、早めに修正申告をしたり、本税の納付を早急に行うなどの対応をすることで、査察調査を免れたり、刑事告発を免れられる可能性が高まります。

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