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【事件解説】所得税不正還付指南で刑事告発

2023-03-15

所得税の還付を不正に受ける方法を指南したとして刑事告発された実際の事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

事件の概要

「納めすぎた税金を取り戻そう」と全国の会社員にSNSで呼びかけ、不正な還付申告による脱税の手口を指南していたとして、東京国税局査察部が、東京都新宿区のコンサルタント会社の代表者Aを所得税法違反の疑いで東京地検に告発した。
Aは、東京や埼玉、愛知、岐阜、大阪、兵庫、福岡、熊本など19都府県の会社員ら109人に、架空の副業で計約7億2900万円の損失を出したように装わせ、計約4300万円分の所得税の還付を不正に申告させた疑いが持たれている。
(令和5年3月1日、朝日新聞DIGITALの記事から抜粋)

所得税の還付

会社員の方などは、給与から所得税が源泉徴収されています。
この源泉徴収をされた所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納めすぎた所得税の返還を受けることができます。このことを所得税の還付といい、還付を受けるための申告を還付申告と言います。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。

会社員の方の場合には、給与から所得税が源泉徴収されているため、基本的には所得税の確定申告をする必要はありません。
しかし、副業をしている方で、その副業で損失を出してしまった場合には、その損失部分を所得から差し引くことができるため、損失部分を含めて確定申告をすることで、納めすぎた所得税の還付を受けることができるのです。

刑事手続

Aさんは、所得税法違反で刑事告発を受けています。
刑事告発を受けた検察庁は、Aさんを被疑者として取り調べ、その後起訴することになります。

査察部から刑事告発をする場合には、事前に査察部と検察庁で協議を行い、告発をするかどうかを決定することがほとんどです。
そのため、刑事告発されると7割を超える確率で起訴まで至っています。

起訴されると、公開の法廷で裁判が開かれます。
今回のAさんの場合、架空の副業で損失が出たように装って還付申告をすることを指南していたということなので、「偽りの方法により所得税の還付を受けた」ということになり、所得税法238条1項の罪に該当すると思われます。
同条で規定されている法定刑は、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科」です。罰金については、情状によって、還付を受けた所得税の額に相当する金額以下まで科すことができます(同条2項)。

Aさんの場合には、脱税を指南していたという立場になるため、実際に不正に還付申告をした人たちとの共犯関係にあるということになりますが、申告書作成の手数料を受領したりもしていたようなので、共謀共同正犯として処罰されることになるでしょう。

実際に不正に還付を受けた会社員の方たちは、国税局から所得隠しを指摘されて、大半が重加算税を含む追徴課税を受け、修正申告と納税に応じているということですので、Aさんに対する判決については、執行猶予が付く可能性が十分にあると考えられます。
しかし、かなり多数の人に対して脱税を指南していたこと、受け取っていた手数料の総額が高額なことなど悪質性が高い事案であるともいえます。
そのため、執行猶予が付かず、実刑判決を受けてしまう可能性もあります。
また、罰金の併科も受けることになると考えられ、不正に還付を受けた金額が約4300万円ということからすれば、1000万円近くの罰金も併科される可能性が高いです。

まとめ

今回は、実際報道されている事件をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の末吉弁護士に解説をしてもらいました。
末吉弁護士は、「所得税の不正還付については、国庫に対する詐欺のようなものなので、国税局も本腰を入れて調査しますし、告発もされやすい部類に当たるといえます。そのため、もし不正還付に加担してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して告発をさけるための活動をしていくべきでしょう」と語ってくれました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。

取締役の横領が発覚した場合の税務上の問題~②~

2023-03-08

取締役が横領をしていた場合の税務上の問題について、前回に引き続き弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

税務上の問題2~横領金と役員給与~

会社代表者が横領をした場合、横領金は役員賞与になるという考え方が一般的です。
あらかじめ金額を定めていたり、定期で支払われるものなど以外の場合には、役員賞与として会社の損金には該当しないとされています。
したがって、具体例②のBさんの場合には、代表者が横領しているため、横領金はそもそも損金に算入されず、法人税の減額はされません。
また、役員賞与は源泉徴収の対象となっているため、会社には所得税の源泉徴収義務まで課されていることになり、会社は2重に税金を取られてしまうことになります。
そのため、具体例②の場合であれば、Y社には過少申告加算税だけでなく、源泉徴収所得税の不納付加算税まで課せられる可能性があります。

では、具体例①の場合はどうでしょうか。
具体例①の場合、Aさんは代表者ではなく、経理を担当している取締役です。
しかし、経理担当取締役など一定の権限がある場合にも、役員賞与と認定された事例があります。
そのため、Aさんに対する役員賞与と税務署から指摘された場合には、Aさんに対して会社が賞与として支払ったものではないということを、実際の取締役の権限等に照らして主張立証する必要があります。

また、役員賞与ではなく役員に対する貸付であったという処理をすることも有効です。
貸付であれば、源泉徴収の対象とはならないため、2重に課税されることを避けることができます。
もっとも、そのような処理ができるか否かについては、実際の事案に即して検討する必要があるため、専門家にアドバイスをもらいましょう。

税務上の問題3~加算税~

具体例①も②も過少申告にあたるため、税務署の税務調査など調査が入った後であれば、X社やY社に対して過少申告加算税が課せられることになります。
また、役員賞与となる場合には、上述のように源泉徴収義務を果たしていないことになるので、不納付加算税も課せられることになります。
そして、具体例②の場合には、代表者が売り上げ除外をしているため、隠ぺいや仮装による脱税行為として、重加算税が課せられる可能性もあります。
具体例①の場合には、経理担当取締役が行っているため、会社ぐるみで行っていたと考えられてしまうと重加算税が課せられてしまう場合もあるため、会社の行為とは同一視できないなどの主張立証を行う必要があります。

もっとも、税務署などからの調査を受ける前であれば、修正申告をして正しい税金を納めることにより、加算税を課せられることを避けることができます。
会社内部での横領などが発覚した場合には、できるだけ早く専門家に相談し、調査が入る前に修正申告をしていくことが非常に重要です。

まとめ

会社代表者が横領をした場合には、その横領額については役員賞与として損金計上できず、過少申告加算税が課せられる可能性があるほか、源泉徴収を行っていないとして不納付加算税も課せられることがあります。
また、会社代表者ではないとしても、その人の立場によっては、同様の加算税が課せられる可能性もあります。
そのため、不正が発覚した場合にはできるだけ早く修正申告をして、本来納めるべきであった税金を納めていくことにより、加算税を課せられないようにしていく対策が必要となります。
不正が発覚した場合には、税理士や弁護士など専門家に早急に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料です

取締役の横領が発覚した場合の税務上の問題~①~

2023-03-01

取締役が横領をしていた場合の税務上の問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が2回にわたり解説します。

取締役の横領

取締役が会社のお金を横領した場合には、その取締役には業務上横領罪が成立します。
業務上横領罪は10年以下の懲役刑が定められており、警察に告訴することで、取締役に刑事処罰を受けさせることができます。
また、横領されたお金は当然会社にとって損害となるため、取締役に対して損害賠償を請求することができます。
さらに、取締役の横領により会社の資金繰りが悪くなったり、株式が下落するなどの損害が生じた場合には、当該取締役に対する責任を追及するだけでなく、株主から代表取締役やその他の取締役などに対して監督をする義務を行ったとして、任務懈怠責任を追及されることもあります。
このように、取締役が横領をした場合には、さまざまな責任を問うことができます。
では、税務上はどのような問題が生じるでしょうか。
具体例を参考に検討していきましょう。

具体例

具体例①
大阪市北区に本店を置く株式会社Xで経理を担当していた取締役のAさんは、X社から貸与されていた会社のクレジットカードを私的な飲食や息子に対するおもちゃなどの私的な目的のために使用していました。
しかし、Aさんは、私的に使用した部分について「接待交際費」などの名目で経費として計上し、X社の確定申告を行っていました。

具体例②
兵庫県西宮市に本店を置く株式会社Yの代表取締役Bさんは、Y社の売り上げの一部をBさん名義の個人口座に移し、私的に利用するとともに、個人口座に移した金額については売り上げから除外して確定申告を行っていました。

税務上の問題1~損金として計上できるか~

具体例①について

Aさんが会社から貸与されていたクレジットカードを私的に使用していたことは、Aさんが取締役であることから特別背任にあたる可能性が高いといえます。
そして、私的に使用しているにも関わらず、支払った金額について「接待交際費」と偽りの名目で経費計上していることから、実際には経費計上できないものを経費計上していたということになり、X社は過少申告をしていたということになります。
ここで、会社は損失を実際に被っているのであるから、損金として計上できるのではないか、過少申告とはいえないのではないかということが問題となります。
しかし、Aさんの不法行為によりX社は損害を被っていることになるため、X社はAさんに対して損害賠償請求権を取得しているといえます。
そうすると、損害賠償請求権はX社にとって利益となり、損失と利益を同時に計上するのが原則となっているため(最判昭和43年10月17日)、損金のみを計上することはできないことになり、過少申告となることは変わらなくなってしまいます。

もっとも、Aさんに対する損害賠償請求をしたとしても、Aさんに資力がない場合には、X社は賠償を受けられないことになってしまいます。
そうすると、X社としては、Aさんから賠償を受けられないのに、損金として計上できず、損しか残らないということになります。
そこで、最近では、相手方の資力等を考慮して、損害賠償請求権の実現性が客観的に疑わしい場合には、損失の発生のみを計上すればよいという考え方が有力となっています。
この考え方によれば、Aさんに資力がない場合には、Aさんから実際に返還された金額や返還を約束された金額を利益として計上し、それ以外の部分については、損金として計上できることになります。

Aさんの資力がどれくらいあるかや損金と益金の関係などの調査やアドバイスを受けるためにも、X社としては、早急に税理士や弁護士などの専門家に依頼すべきです。

具体例②について

BさんはY社の代表であり、Y社の売り上げを除外して個人口座に入金しているため、Bさんには業務上横領罪が成立します。
また、そもそも売り上げを除外して申告していますので、過少申告となります。
具体例②の場合には、代表者が横領をしているため、具体例①と違い後述のとおり役員賞与として損金算入ができません。

会社代表者が不法に会社のお金を着服していた場合には、早急に専門家に相談しましょう。

~②に続く~

入居者が賃料にかかる税金を納税しないといけない?

2023-02-15

不動産を借りた際に、賃料にかかる税金を借りた側(賃借人)が納税しないといけない場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【問題】


Aさんは、友人のBさんから「海外に1年以上出張することになったから、自分の家を借りないか?」と言われ、月20万円で大阪市北区にあるBさんの家を借りることにしました。
①Aさんが、Bさんの家を自分が住むために借りた場合
②Aさんが、Bさんの家を自分の趣味で集めた品物を保管する倉庫として借りた場合
③Aさんが、Bさんの家をAさんが代表を務める会社の名義で借りた場合
で、Aさんが賃料について納税する必要がある場合はあるか?

【解答】


Bさんが実際に1年以上日本に居住していない場合には、
①の場合には、賃料にかかる税金をAさんは納税する必要はないが、
②及び③の場合には、Aさんは賃料から所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収し、納税する必要がある。

【解説】

非居住者から不動産を借り受けた場合の源泉徴収義務

非居住者や外国法人から日本国内にある不動産を借り受け、日本国内で賃借料を支払う者は、原則としてその支払いの際20.42%の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
そして、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として賃料を支払った(源泉徴収した)月の翌月10日までに納税しなければなりません。(所得税法212条、213条など)
ただし、借主が個人で、借主が自分又は借主の親族の居住用のために賃借する場合には、源泉徴収する必要はありません。

非居住者とは

原則として、日本国内に住所がなく、かつ現在まで引き続いて1年以上日本国内にいない人のことを言います。
ここでいう「住所」とは「生活の本拠となる場所」のことをいうとされていますので、住民票がたとえ日本にあったとしても、1年以上海外で生活している長期出張中の人などは「非居住者」となる可能性があります。

Aさんの場合

自分が住むために借りた場合
借主であるAさんが自分で住むために借りた場合には、源泉徴収義務がないため、Bさんに賃料を普通に支払えばよいということになります。

品物の倉庫として借りた場合
Aさんの居住用として借りたわけではないため、AさんはBさんに賃料を支払う際に源泉徴収をする必要があります。
この場合、Aさんは、所得税及び復興特別所得税として賃料の20.42%にあたる4万840円を差し引いた15万9160円をBさんに支払い、さらに4万840円は翌月の10日までに納税する必要があります。

会社が借り受けた場合
会社(法人)名義で借りた場合は、どのような用途かにかかわらず、借主には所得税などの源泉徴収義務が課せられます。
そのため、②の場合と同様の処理を行う必要があります。

非居住者から不動産を賃借する場合の注意点

非居住者から不動産を賃借する場合には、居住用以外の場合には賃借人が源泉徴収を行ったうえで納税する義務があります。
そして、このことは仲介業者などに告知義務は課せられていません
そのため、賃貸人が国外にいるのに源泉徴収をせずに普通に賃料を払い続けてしまっており、税務署から滞納通知が届いてから初めてこの制度を知ったという人が多くいます。
また、借りたときには賃貸人が日本に居住していたが、途中から海外に移住してしまったような場合にも、その期間が1年を超えてくると源泉徴収する必要が出てきて、知らない間に税金を滞納しているという場合もあります。
この制度自体に問題があると思われますが、法律がある以上、知らなかったでは納税義務を免れません。
こういったトラブルに合われた方は、賃料を払いすぎていたということにもなるため、賃貸人に払いすぎた分を請求するなどの対応も必要になるでしょうから、税理士だけではなく弁護士にも相談して対応を検討していくべきでしょう。

【裁判例解説】所得税法違反で建設会社従業員に有罪判決

2023-02-01

単純無申告ほ脱罪により有罪判決が下された実際の事件を例に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

判決の概要

①事案の概要
大手建設会社に勤務していたAさんが、特定の下請業者を選定する見返りとして、下請業者から2年間で合計1億9500万円の謝礼金を受け取ったのに、その謝礼金及び各年の給与所得について確定申告を行わずに所得税を免れていた。

②判決
懲役1年及び罰金2000万円
懲役刑につき3年間の執行猶予
(求刑:懲役1年及び罰金2500万円)

③量刑の理由
マイナス事情
・ほ脱税額が2年間で合計8300万円を超え、多額
・ほ脱率が通算95%を超える高率
・当初から裏金になるとの認識
・遊興費等に費消
・Aさんが積極的に主導したわけではないが、偽装工作を行って課税を免れようとした
プラス事情
・犯行を認めて反省の弁を述べている
・起訴後に修正申告を行い、ほ脱税額の半分を超える金額の本税を納付
・残りの税額についても納税の意思を示している
・前科前歴がない

解説

①単純無申告ほ脱罪
今回の判決は、令和3年に仙台地方裁判所で実際に下された判決です。
同判決において適用されている法律は、「所得税法238条3項」とされているので、この事件は所得税法違反事件の中でも「単純無申告ほ脱罪」に当たるとして判断がなされたということができます。
「単純無申告ほ脱罪」は平成23年の所得税法改正によって新設された罪で、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。
全く確定申告をしていないものを無申告といいますが、無申告について所得税法では、「単純無申告ほ脱罪」のほかに、無申告ほ脱罪と単純無申告罪が規定されています。

無申告ほ脱罪(所得税法238条1項)
偽りその他不正の行為により(中略)所得税を免れ」た場合の罪で、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。
単純無申告罪(所得税法241条)
「正当な理由がなくて(中略)申告書をその提出期限までに提出しなかった者」は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされています。
単純無申告ほ脱罪(所得税法238条3項)
偽りその他不正の行為があったとは言えないまでも、所得税を免れる意思をもって確定申告をしていない場合に当たる犯罪です。

②量刑についての解説
今回の事件では所得の金額が2億円ちかくあり、ほ脱税額も8300万円と非常に高額なため、告発・起訴はおよそ避けられない事件であったといえるでしょう。
また、判決の量刑理由の中で「偽装工作」を行っていたと言われており、「偽りその他不正の行為により所得税を免れた」として無申告ほ脱罪に問われてもおかしくなかったと言えます。
しかし、偽装工作を主導したのはAさんではないといわれていることから、「偽りその他不正の行為」をAさんが行ったとは認定できなかったか、検察官がその立証が難しいとして単純無申告ほ脱罪での起訴を行ったかということだと思います。
判決では「強い非難に値する」とも述べられており、悪質性が高いと裁判所は判断しているということができますが、反省をし修正申告をして実際に納付をしたり納付する意思を示していることが執行猶予を付ける決め手となっているといえます。

罰金については、「この種事犯が経済的にも見合わないものであることを感銘させるため」として罰金刑を併科しています。
ほ脱事件においては、ほとんどの事件で罰金刑が併科されており、罰金額は、ほ脱税額の20~30%くらいの金額となることが多いです。
なお、単純無申告ほ脱罪における罰金刑は所得税法238条3項によれば「500万円以下」とされていますが、同条4項によって「免れた所得税の額が500万円を超えるときは、情状により(中略)その免れた所得税の額に相当する金額以下とすることができる」とされています。
そのため、今回の事件でも500万円を超えて、「2000万円」という罰金刑を課すことができているのです。

③執行猶予を得るためには
今回の事件で執行猶予を得られたのは、反省していることだけではなく、修正申告をして実際に納税をしていることが大きかったといえます。
脱税事件では、納税義務を果たしていないことが非難の対象となるため、修正申告をして納税義務を果たす姿勢を示すことが何よりも大事でしょう。
また、今回の事件では起訴後に修正申告をしているようですが、税務調査の段階から修正申告をして納税義務を果たしていくことで、査察や告発を避けられたり、不起訴を勝ち取れたりといったメリットが生まれます。

脱税事件では、なるべく早い段階から税理士や弁護士などの専門家に依頼し、税務調査や査察、刑事裁判などに向けた活動をしていくことが重要です。
脱税事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

YouTubeの収入は確定申告必要?

2023-01-25

YouTubeでの収入は確定申告が必要か、確定申告しないとバレるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

YouTubeでの収入

YouTubeに動画をアップして広告収入を得ているYouTuber(ユーチューバー)は、近年子供のなりたい職業ランキングに登場するなど一般的になりつつあります。
また、新型コロナの影響により、YouTubeで動画を配信して収入を得ている方も増えてきています。
そんなユーチューバーの方は、一部の有名な方々を除くと、ほとんどがYouTubeから広告収入を得ていると思います。
広告収入についても、所得税の申告が必要となるのは当然です。
もっとも、広告収入のすべてに所得税が課せられるのではなく、収入から必要経費や控除額を差し引いた残りが所得税の申告が必要となる「所得」となります。
そのため、収入の額が控除される額(基礎控除は48万円)以下の場合には「所得」がないことになり、申告は不要となります。

YouTubeでの収入は税務署にバレる?

YouTubeなどのインターネットを利用している取引については、国税庁が積極的に調査を実施しています。
国税庁が発表している「インターネット取引を行っている個人の調査状況」という資料によれば、平成29年度におけるインターネット取引の実地調査件数は2015件で、コンテンツ配信やネット広告に関する件数は274件を占めています。
また、国税庁は「電子商取引監視チーム」を配置し、インターネット取引を中心に扱う専門官が監視を強化しています。
このように、インターネット取引については、国税庁が常に目を光らせている分野といえます。

そして、YouTubeの収入については、
①再生回数が表示される
②広告収入は電子送金される

ということから税務署はユーチューバーが収入をどれくらい得ているのか把握しやすいといえます。
再生回数が多く、相当程度の広告収入を得ているはずなのに、確定申告がなされていないと税務署が調査に入ることになります。

YouTubeの収入を確定申告していないと

YouTubeの収入を確定申告していないと「無申告加算税」が課せられることになります。
確定申告をしていた場合よりも多くの税金を支払わないとならなくなります。
また、意図的に確定申告をせず所得を隠していたということになれば、「重加算税」の対象となってしまう場合もあります。
さらに、無申告には刑罰も定められているため、刑事裁判にかけられる可能性もあります。

バレないから大丈夫と安易に考えていると、急に税務署が調査に来て、多額の課税がなされる場合があります。
また、チャンネルの継続が難しくなる可能性もありますので、確定申告を忘れてしまっていたという方は、早めに専門家に相談して修正申告などをしていきましょう。

風俗嬢の脱税はバレると大変!!

2022-12-21

風俗で働いている女性が脱税をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

東京都新宿区歌舞伎町にある風俗店で風俗嬢として働いているAさんは、店から労働の対価として現金を手渡しでもらっていました。
Aさんは、店と雇用契約を結んでいるわけではなく、アルバイト感覚で風俗の仕事をしていました。
現金を手渡しでもらっていたこともあり、確定申告をしなくてもバレないだろうと考えて、確定申告をしていませんでした。
そうしたところ、Aさんが働いていた店に新宿税務署の税務調査が入り、Aさんも税務調査を受けることになってしまいました。
不安になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用することにしました。
(フィクションです)

解説

風俗嬢の脱税がバレる理由

風俗嬢は多くの場合、店舗に所属していたとしても雇われているわけではなく、法律上は個人事業主として扱われることになります。
当然、働いて得たお金は所得となるため、所得税などの納税義務があり、確定申告が必要となります。
しかし、手渡しで現金をもらっている場合などは、確定申告をしなくてもバレないと思っている人が多いのではないでしょうか。
風俗嬢の脱税がバレる原因としては、
①店に税務調査が入ってバレる
②高額な買い物(家や車など)をしてバレる
③客や同業者などからの密告でバレる
④SNSなどの投稿によってバレる
といったことが考えられます。

①店に税務調査が入ってバレる
店に税務調査が入る場合には、そこで働いている人に支払っている給料などは経費となるため、税務調査の対象となります。
税務調査が入るときには、事前に内偵調査が行われる場合が多く、店のサイトで出勤を調べたり、実際に客として接客を受けたりして、資料を収集していきます。
それらの資料から風俗嬢の収入が発覚し、風俗嬢にも税務調査が入る場合があります。

②高額な買い物をしてバレる
税務署は口座情報についても手に入れています。
特に、家や車などの高額な買い物をしている場合には、確定申告をしていないのにそういった高額商品をかえる収入があるのはおかしいと目をつけられてしまう原因になります。

③客や同業者などからの密告でバレる
国税庁では、課税及び徴収漏れに関する情報提供を受け付けています。
国税庁のホームページには情報提供フォームが設置されており、情報提供者のプライバシーも守られる仕組みになっています。

④SNSなどの投稿によってバレる
SNSなどに豪華な食事や高級ホテルでの宿泊などの写真や文章を投稿していると、そこから疑いをもたれて調査が入る可能性もあります。
公開されている情報については、いつも目を光らせられていると考えた方がよいでしょう。

確定申告をしていないことがバレたら

収入があるのに確定申告をしていないことがバレた場合、本来納めるべきであった税金を払うことはもとより、ペナルティとしての加算税についても支払わなければならなくなります。
過去には1000万円を超える加算税を支払わなければならなくなった例もあります。

確定申告をしていない場合の加算税としては、①無申告加算税と②重加算税が考えられます。
①無申告加算税については、支払うべき税額の15%(50万円を超える部分については20%)が加算されます。
一方、②重加算税の場合には、①無申告加算税に代えて40%が加算されることになります。
仮装隠ぺいがあった場合など悪質性が高い場合には、②重加算税が課せられる可能性が高くなります。
単なる申告忘れなのか、隠そうとしていたのか調査などでどのように応答するかによって大きく変わってくるので、専門家に早い段階で相談しましょう。

また、悪質方法かつ高額な脱税となる場合には、刑事裁判にかけられて刑罰を受ける可能性もあります。
多くの場合には、執行猶予が付されますが、その場合でも罰金刑を合わせて受けることが多いです。
罰金刑を受けた場合、罰金と本来納めるべき税金および加算税などをすべて支払わなければならなくなるので、金銭的な負担は非常に大きなものとなってしまいます。
刑事裁判になってしまうような案件かどうかも含め、専門家に相談してアドバイスを受けてください。

もし確定申告を忘れていたとしたら、早めに修正申告をすることでペナルティを最小限に抑えることができます
不安が少しでもあるのであれば、早めに相談してください。

架空外注費で法人税脱税

2022-12-14

法人税の脱税について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

土木工事会社の代表者であるAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした工事の外注費を支払って計上したうえ、個人事業主からキックバックを受けていました。
この方法で1億円を超える所得を隠していたAさんは、大阪国税局の査察調査を受け、法人税3000万円を脱税したとして、法人税法違反の罪で大阪地方検察庁に告発されてしまいました。
(実際の事件をもとにしたフィクションです)

脱税の方法

事例のAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした外注費を支払って計上し、その後個人事業主からキックバックを受けています。
Aさんがキックバックを受けた金銭は、Aさんの収入(所得)となるため、Aさんにはキックバックを受けた金額に応じて所得税の確定申告をする必要があります。
Aさんが、所得税の確定申告をしていなかった場合には、Aさんが所得税の脱税をしていることになるのは、わかりやすいと思います。

しかし、今回の事例では、Aさんは法人税法違反の罪で告発されています。
法人税とは法人つまり会社が得た収益に対してかかる税金です。
キックバックをAさん個人ではなく、Aさんの土木工事会社が受けていた場合には、会社の収益といえるため、キックバックの部分は法人税の対象になり、確定申告をしなければ法人税の脱税になるでしょう。
では、キックバックはあくまでもAさん個人が受けていた場合はどうでしょうか。
この場合、問題となるのは、架空や水増しした外注費を計上しているところとなります。
今回の事例では、外注費については、個人事業主に支払われています。
しかし、支払われている外注費のうち架空や水増しされた外注費は本来であれば支払われない経費ということになります。
そうすると、架空や水増しされた外注費の部分については、実際に支払われていたとしても、経費計上してはいけない部分ということになります。
そのため、会社が得た収入から架空の外注費を経費として差し引いて確定申告していた場合には、本来であればその架空経費の部分は差し引いてはいけない部分となるため、架空経費の部分も含めて課税対象金額に含まれることになります。
そして、架空経費の部分については、確定申告から漏れていることになるため、過少申告をしていたということになります。

法人税脱税のペナルティ

Aさん及びAさんの会社が受ける脱税のペナルティについては、大きく分けて①加算税、②刑事罰の二つが考えられます。

①加算税
Aさんの会社の場合には、過少申告をしていたことになるので、過少申告加算税が課せられることになります。
過少申告加算税は、新たに納めることになった税金の10%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)が加算されます。
もっとも、Aさんの場合には、架空経費の計上という悪質性が高い方法によって過少申告をしているということが言えるので、過少申告加算税ではなく、重加算税が課せられる可能性が高いです。
重加算税は、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する金額が課されることになります。

②刑事罰
Aさんは告発を受けているので、今後は刑事事件としての捜査や裁判を受けていくことになります。
統計上、告発された事件の約70%は起訴されています。
今回の事例では、偽りその他不正の行為により法人税を免れたといえるため、罰則は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」となります(法人税法159条1項)。
ちなみに、罰金の額については、脱税額が1000万円を超える場合には、脱税額まで罰金の上限額を引き上げることができるとされています(同条2項)。
また、今回の事例では、会社代表者であるAさんが行っているので、会社に対しても罰金刑が科せられることになります(同法163条1項)。
そのため、起訴される場合にはAさんだけではなく、Aさんの会社も併せて起訴されることになります。

法人税脱税を疑われた場合の対応

法人税の脱税を疑われた場合には、まず実際に脱税といわれるような行為をしていたかどうかを自分たちでも調査しておく必要があります。
そして、税務調査などの調査では、脱税とはならないという根拠を示していくことが必要です。
もし、脱税に当たる行為をしていた場合には、それが意図的なものかどうかが重要なポイントとなります。
単なる申告漏れなどの場合には、脱税額が高額であったとしても査察や告発を免れることができる場合があります。
その場合でも、調査に対してどのように答えていくかが非常に大切になるので、早めに専門家に相談して方針を決めたうえで、調査に臨みましょう。
また、早めに修正申告をして納税義務を果たすことも、処分を軽くするために必要な行為です。
税理士や弁護士などに依頼して、修正申告をして、早めに納税をしましょう。
もっとも、脱税方法が悪質であるとか脱税期間が長かったり脱税額が高額であったりした場合には、告発までされる可能性が高くなります。
特に脱税額が3000万円を超える場合には、多くの事件が告発されていますので、刑事裁判を見据えて税理士だけではなく弁護士にも早めの段階から関与してもらっておくと安心です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱っているので、刑事事件化を見据えた弁護活動も行えます。早めにご相談ください。

詐欺で得た利益と所得税~②~

2022-10-05

前回に引き続いて、詐欺によって得た利益と所得税の関係について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、ペナルティや刑事罰について解説します。

無申告のペナルティ

詐欺によって得た利益も課税対象となるため、一時所得か雑所得か関係なく、確定申告をして納税する必要があります。
Aさんは遊興費などにすべて使い切ってしまっていますが、だからといって申告をしないでいると、加算税や延滞税というペナルティを受けることになります。

①無申告加算税
確定申告期限内に申告をしていない場合、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税は、原則として、納税すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額になります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合、納税すべき税額は1545万4000円でしたので、約300万円が無申告加算税として本来納税すべき税額に加算されることになります。

②重加算税
仮装隠ぺいなどの方法により、無申告であることが悪質性が高いと判断された場合に、無申告加算税に代えて課せられます。
重加算税は無申告加算税の基礎となる税額の40%に相当する額が課せられることになります。
Aさんが本件詐欺で得た利益が雑所得とされた場合には、1545万4000円の40%が重加算税として課せられる税額となりますので、約620万円を本来納税すべき税額に加算して納めなければならなくなります。

③延滞税
納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
税率は、納税すべき日から2か月までは7.3%、2か月を過ぎると14.6%が本来納税すべき金額にかかってきます。

刑事事件化する場合

本件のAさんには、税務調査が入っていますが、悪質性が高かったり脱税額が巨額になる場合には、査察調査に発展することもあります。
査察調査は税務調査と違い、強制的に調査をすることができ、最終的には刑事告発に至る場合が少なくありません。実際、査察調査から刑事告発される割合は約70%と言われています。

本件のAさんが問われることになる犯罪としては、詐欺のほかに、所得税法違反と地方税法違反が考えられます。

①詐欺を問われる場合
Aさんが詐欺に問われる場合、一般的には被害者からの被害届などを受理した警察が捜査を行います。
Aさんが詐取した金額からすれば、逮捕されてしまう可能性が高いでしょう。
逮捕された後は、最大20日間に及ぶ被疑者勾留中に警察による取り調べなどが行われ、最終的には検察官が起訴・不起訴を判断します。
検察官が起訴するより前に、被害者に詐取金の全額を弁償し、示談が成立していれば、不起訴となる可能性もありますが、示談がなければ起訴される可能性が高いといえます。
起訴されると保釈が許可されない限り、身体拘束を受けたまま裁判を受けてもらうことになります。
Aさんの場合、判決が出る前までに被害金の全額弁償ができていれば、執行猶予付きの判決を受けることができる可能性が高くなりますが、被害弁償ができていなければある程度長期の実刑判決を覚悟しなければならないでしょう。
このように、詐欺に問われる場合には、警察の捜査を受けること、示談ができるかどうかによって処分が大きく変わることが特徴といえます。

②所得税法違反、地方税法違反に問われる場合
Aさんの場合、所得税の申告をしていないということは、住民税の納付も行っていないでしょうから、所得税法違反のほかに地方税法違反にも問われる可能性があります。
Aさんが所得税法違反や地方税法違反に問われる場合、基本的には査察調査ののちに国税局から告発を受けた検察庁が捜査を担当します。
逮捕される可能性も高いですが、逮捕された場合には、捜査を検察庁が担当している関係で留置される場所は警察署ではなく拘置所となります。
その後は詐欺の場合と同様に取り調べなどを受けて起訴・不起訴が決まります。
加算税を含めて脱税した税額のすべてを納付し終わっているといった事情があるなど事後的にでも悪質性を低くする活動ができた場合には、不起訴となる可能性もあります。
起訴をされた場合には、詐欺と同様の手続きで最終的には判決を受けることになります。
税法違反の場合の特徴として、懲役刑だけではなく罰金刑を併科することができることが挙げられます。
そのため、仮に懲役刑の部分に執行猶予が付されたとしても罰金刑が併科されて罰金刑部分に執行猶予が付されていない場合には、罰金は支払う必要があります。
このように、税法違反の場合には、検察庁が捜査を担当すること、示談ではなく税納付による被害回復を図ること、罰金刑を併科できることが特徴といえます。

まとめ

Aさんのように詐欺などの犯罪によって得られた利益も課税対象になりますので、確定申告をしていなければ、詐欺の罪とは別に所得税法違反など税法違反の罪にも問われてしまう可能性があります。
そのため、犯罪行為によって利益を得ている場合には、その犯罪だけではなく税金の問題についても考慮しておく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

詐欺で得た利益と所得税~①~

2022-09-28

犯罪行為によって得た利益も所得税の課税対象となるのでしょうか。
本日と次回の2回にわたって、詐欺の事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

大阪市福島区Aさんは、友人にうその投資話を持ち掛け、Aさんの話を信用した友人から投資に充てるためとして4500万円を預かりました。
Aさんは預かった4500万円を遊興費などに費消しましたが、友人をだまして得たお金なので、確定申告はしていませんでした。
後日、Aさんは大阪福島税務署から税務調査を受けることになり、今後のことが不安になったAさんは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用することにしました。
(フィクションです)

解説

所得税法における所得の意義

日本の所得税法上は、所得について明確な定義規定はありません。
しかし、すべての経済的利益を所得とする、いわゆる包括的所得概念を採用しているものと解されています。
すべての経済的利益が所得であるとすると、違法または無効な行為によって生じた利益についても所得に含まれることになります。
この点について、所得税基本通達36-1は、「法第36条1項に規定する『収入金額とすべき金額』又は『総収入金額に算入すべき金額』は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」と規定しています。
したがって、本件のAさんが詐欺によって得た利益についても所得として確定申告をする必要があるということになります。

一時所得か雑所得か

詐欺によって得た利益についても所得税の確定申告が必要な課税対象となることはわかりましたが、確定申告をするにあたっては、詐欺によって得た利益が「一時所得」か「雑所得」かが問題となります。
なぜならば、一時所得と雑所得では税額を計算するベースとなる「課税所得金額」に大きな差がでるからです。

①一時所得の場合
(一時所得の金額-必要経費-特別控除額)×2分の1=一時所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、(4500万-0円-50万)÷2=2225万円となり、2225万円が一時所得の課税所得金額となります。
※一時所得の金額から経費を差し引いた金額が50万円以上の場合、特別控除額は50万円
Aさんに他に収入がない場合には、総所得金額も2225万円となるため、所得税の税率は40%となります。
また、この場合の所得税の控除額は279万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は2225万×0.4-279万6000円=610万4000円となります。

②雑所得の場合
雑所得の金額-必要経費=雑所得の課税所得金額
という計算式で求めます。
本件のAさんの場合、4500万-0円=4500万円となり、4500万円が課税所得金額となります。
4000万円を超えている場合の所得税の税率は45%、控除額は479万6000円です。
そのため、Aさんに課税される所得税は4500万×0.45-479万6000円=1545万4000円となります。

このように、一時所得か雑所得かでは、所得税の額に2倍以上の差が出てしまうことになります。
では、本件のAさんの場合には一時所得と雑所得のいずれに当たる可能性が高いでしょうか。
この点について、最高裁は「所得税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得および譲渡所得以外の所得で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得は、一時所得ではなく雑所得に区分されるところ、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」と判示しています(最判平成29年12月15日)。
そのため、一時所得か雑所得かの区別は、ほかの8種類の所得に当たらないことを前提として、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」といえるか否かが主な基準となっているということができるでしょう。
本件のAさんの場合には、1度に4500万円をだまし取っているのであれば、継続的行為とは明らかにいえないので、一時所得に当たるということになるでしょう。
一方、何回かに分けてだまし取っていた場合には、行為の期間や回数、頻度そのほかの態様など判例が示している考慮要素をもとに判断していくことになり、一概にどちらに当たるということは難しいといえます。

一時所得に当たるのか否かについては、このように様々な考慮要素をもとに判断していくことになるため、一度専門家に相談してみるのがよいでしょう。
次回はペナルティと刑事罰について解説します。
~次回に続く~

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