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【捜査解説】損益計算法による立証(いわゆるPL立証)について詳しく解説

損益計算法によるPL立証について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。
損益計算法による立証(PL立証)とは
損益計算法による立証、いわゆるPL立証は、課税対象期間に発生した収益とこれに関する費用・損失について、親告金額と対ししてその増差計算をすることにより、その期間における逋脱所得金額を計算する方法です。
この方法によると所得の発生源が個別的に表示され、逋脱所得の成り立ちが明らかになりますが、取引の原資記録としての契約書や売上伝票等が破棄されたり、それらの電子データが改ざんされたりしていると、それらを補完する資料がなければ正確な損益計算を行って逋脱所得額を算出することは困難になります。
ですから、PL立証は収益と費用等の全容を確定できる証拠が存在することによって可能となるものなのです。
基本的には、
⑴ 正規の決算書類データ等が残されている場合
⑵ 裏帳簿データなど実際の取引が判明する書類等が残っている場合
⑶ 帳簿書類等のデータが完全になくとも、それと同程度に立証が可能な証拠が残っている場合
⑷ 間接証拠の積み上げにより収益と費用等を合理的に推計できる場合
においてPL立証が可能とされています。
修正損益計算書とは
PL立証においては、実際の所得金額を表す損益計算書と申告所得金額を表す損益計算書とを組み合わせて、各勘定科目ごとに脱漏部分を表示する一覧的な損益計算書を作成して逋脱所得額を計算しています。捜査実務では、このような損益計算書を修正損益計算書と呼んでいます。
この修正損益計算書は、起訴後、検察官の冒頭陳述で逋脱所得の内容をなす個々の勘定科目の内訳を記載した逋脱所得の内容説明及び税額の算出過程を示す穂脱税額計算書とともに公判に提出され、これに基づいて立証が行われます。
脱税事件で捜査を受けた場合には
脱税事件で起訴された場合、一般事件と比べ、上記のとおり、検察側の立証は、非常に専門的で技術的なものになります。こうした高度な専門性・技術性を要する脱税事件の公判に対応していためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。刑事事件の流れはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/muzai/
あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。
脱税して逮捕されたら勾留を回避できるのか

脱税して逮捕された場合において、その後、勾留を回避することができるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 逮捕後の流れ
脱税事件に限らず、逮捕された場合、釈放されない限り、検察庁、裁判所での手続があった後、勾留という手続に入ります。
起訴される前の段階において、犯罪の嫌疑を掛けられた人は被疑者と呼ばれますが、この段階での勾留を被疑者勾留などと呼ぶことがあります。
被疑者勾留においては、最初10日間、延長されて更に10日間、最大20日間の身体拘束を受けることになります。
この期間、被疑者や関係者への取調べや証拠物の収集などの捜査が行われます。
そして、勾留期間が満了になるタイミングで、検察官は、被疑者を起訴するかどうかを判断することになります。
2 勾留の要件とは
勾留の要件とは、勾留の理由と必要性に分けられます。
勾留の理由とは、①定まった住居を有しないこと、②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、③逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があることをいい、いずれかに該当する場合であっても、勾留の理由があるとされます。
また、勾留の必要性は、勾留の理由があったとしても、身体拘束をする必要性と勾留により被る不利益を比較し、前者が大きい場合、認められます。
このように勾留の理由があり、必要性がある場合には、被疑者は、勾留されることになります。
3 勾留を回避する方法
被疑者勾留は、検察官が裁判所に対し勾留請求を行い、それに対し、裁判官が勾留するかどうかを判断します。
そこで、勾留の理由がないことや必要性がないことを主張して、検察官に対し勾留請求すべきでないと交渉をすること、裁判官に対し勾留すべきではないと交渉することが考えられます。
具体的には、既に収集すべき証拠は収集済みであることから、罪証隠滅のおそれがないことを主張したり、被疑者には身元引受人を申し出ている家族がいることから、逃亡のおそれがないことを主張するということが考えられます。
また、勾留された場合でも、一度、裁判所に不服を申し立てる手続もあります。
4 脱税事件の特殊性
脱税事件においては、まず、事件関係者が多いことが想定されます。
事件関係者とは、共犯者だけではなく取引先や従業員など、今回の脱税に関わる人が含まれます。
事件関係者が多いということは、仮に、被疑者勾留をせずに釈放した場合、そうした事件関係者に接触し、口裏合わせをする可能性が高く、結局、これが、罪証隠滅のおそれに該当することになります。
また、脱税した額などによっては、初犯でも実刑の可能性がある事案があります。
そうした事案においては、実刑を免れるために、先ほど説明したような罪証隠滅行為に及んだり、逃亡を図ると判断され、勾留されるという判断もあります。
一方で、脱税事件においては、可能な範囲で早期に税金を納めていくということが重要となりますが、それを実現するためには、逮捕されている被疑者が対応することが不可欠な事案もありますので、釈放の必要性もあります。
また、これは脱税事件に限りませんが、幼い子どもを抱える家族であったり、被疑者自身が持病を抱え、勾留すると大きな不利益を被る場合もあります。
先ほど説明したようなことからすれば、事件関係者が少ないような事案や、実刑を回避できる可能性が高い事案には、早い段階で検察官や裁判官に交渉をすることで勾留を回避できる可能性もあります。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反、法人税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税事件の容疑を掛けられ、逮捕された方、その親族の方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
【裁判例解説】無利息で貸し付けたのに収益が発生?

無利息で貸付を行った際にも、利息相当額の収益を計上しなければならないかが争点となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 事例
株式会社X(以下、「X社」といいます。)は、子会社である株式会社T(以下、「T社」といいます。)に対し、その事業達成を援助する目的で、期間を3か年に限り、4000万円を限度として、「無利息」で融資する契約を締結しました。
そして、X社は、この契約に基づき、T社に対して、○年度において、2000万円を融資しました。
これに対し、税務署長Yは、X社の融資について、通常当事者間で行われる融資における利率による利息相当額を収益として計上する旨の更正処分をしました。
(なお、事例につきましては、実際の裁判例を若干修正、簡略化しています。)
2 争点~法人税法22条2項
法人税法21条1項において、法人の「各事業年度の所得の金額」は、「当該事業年度の益金の額」-「当該事業年度の損金の額」とされています。
その上で、同条2項において、益金の額に算入すべき金額には、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」により生じた収益を含むとしています。
こうした法律からすれば、X社のT社に対する融資は、無償による役務の提供として、利息相当額の収益が発生しているものとも考えることができることから問題となりました。
なお、現在、この点については、平成30年に法人税法が改正され、22条の2が設けられ、法律上の解決がなされていますが、この後紹介する裁判例は、またそのような規定がない頃の判断です。
3 裁判所の見解について
この点が問題となった大阪高裁昭和53年3月30日判決(判時925号51頁)は、X社が行ったのが無利息の融資であったとしても、X社には、通常、当事者間で行われる利息相当額の収益があり、その分を計上する必要があるとしました。
その上で、X社のそうした収益は、X社がT社に無償で給付(すなわち寄付)したであるとし、法人税法37条1、7項により、一定限度を超える寄付については損金計上できないとしました。
実際の判決文は、次のとおりです。
「資産の無償譲渡、役務の無償提供は、実質的にみた場合、資産の有償譲渡、役務の有償提供によって得た代償を無償で給付したのと同じである」とした上で、「営利法人が金銭(元本)を無利息の約定で他に貸付けた場合には、借主からこれと対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けているか、あるいは、他に当該営利法人がこれを受けることなく右果実相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的その他の事情が存する場合でないかぎり、当該貸付がなされる場合にその当事者間で通常ありうべき利率による金銭相当額の経済的利益が借主に移転したものとして顕在化したといいうるのであり、右利率による金銭相当額の経済的利益が無償で借主に提供されたものとしてこれが当該法人の収益として認識される」。
4 現在の法律―法人税法22条の2第4項
先ほども少し触れましたが、現在は、法人の資産の販売・譲渡、役務の提供において、原則として、その販売・譲渡をした資産の引渡時の価額、その提供した役務について通常得るべき対価の額に相当する金額を収益とするという法律が設けられています(法人税法22条の2第4項)。
5 予想される問題点・弁護活動
以上のような裁判例、法人税法22条の2第4項の規定からすれば、たとえば、無償で第三者に会社の資産を譲った場合においても、その資産の引渡時の価格を収益として計上する必要があることになり、これを怠ると、法人税法違反(場合によっては消費税法違反も)となります。
こうしたことは、税務調査の場面で問題になることが考えられますし、他にも脱税をしており、査察を受けている場面でも問題になることも考えられます。
もっとも、大阪高裁が指摘するように、①対価的意義を有する経済的利益の供与を受けていたり、②対価を受けることがなく利益を手離すことに合理的な経済目的がある場合には、収益として計上する必要がないという解釈も可能です。
そこで、こうした点が問題になった場合には、弁護士に的確なアドバイスを受け、仮に収益として計上する必要がある場合には、その旨の修正申告をするといったことが考えられます。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、法人税法違反など多数の事件を取り扱っています。法人税法違反の疑いがあるとして税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
【事件解説】東京国税局が不動産会社の実質経営者と公認会計士を告発

港区白金の再開発事業にからみ不動産業者の実質経営者と公認会計士を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
不動産の売買で得た所得を隠し、約1億700万円を脱税したとして、東京国税局査察部は、不動産会社A社(東京都港区、解散)の実質経営者B氏と関与税理士だった公認会計士C氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発していたことがわかった。
関係者によると、A社は港区白金の再開発事業にからむ不動産取引などで多額の利益を上げたが、架空の経費を計上するなどの方法で、2021年8月期までの2年間に計約4億3700万円の所得を隠し、法人税約1億700万円を脱税した疑いがある。
隠した所得は、実質経営者B氏の口座や実質経営者B氏が代表取締役を務める別法人の金庫で管理していたとみられ、公認会計士C氏は、不正と知りながらA社の税務業務を担っていたという。
取材に対し、実質経営者B氏は、「国税局の指導に従い、修正申告を済ませた。今後は適切に申告納税する。」と答え、公認会計士C氏は「職業会計人としての責任を感じている。」と答えたという。
(2024年1月29日、読売新聞オンラインの記事より。一部改変)
法人税は法人の所得に課される税金
本事件の実質経営者B氏は、不動産業を営んでいたということですが、免れた税金は法人税となっています。
所得税も法人税も、同じく、「所得」に対する課税です。すなわち、法人税は、法人の「所得」税です。
所得の金額は、具体的には益金の額から損金の額を控除した金額のことになります。
名義上の代表者と実質経営者の違いとは
法人税法において、名義上の代表者と実質経営者の違いは重要です。ここでは、それぞれの役割と脱税に対する処罰について説明します。
名義上の代表者は、法人の登記簿の役職であり、会社法やその他の法令に基づいて選任された役員です。名義上の代表者は、法人の経営に直接関与せず、法人の名義を借りているだけである場合があります。
実質経営者は、法人の実際の経営に従事しており、その意思決定に大きな影響力を持っている者です。実質経営者は、法人の利益や財務に直接的に関与しています。
脱税行為に対する処罰は、名義上の代表者と実質経営者とでは異なります。実質経営者が脱税を行った場合、法人の経営に直接的に関与しているため、脱税額によっては、処罰される可能性があります。一方名義上の代表者の場合、法人の経営に実質的に関与している場合であれば処罰される可能性がありますが、法人の名義を借りているだけの場合、処罰の対象となることは少ないです。
刑事告発
本事件では、法人税法違反で東京地検に告発がなされています。
脱税の方法には種々ありますが、本件では、架空の経費を計上し、実際の経費より多い経費にみせかけるなどの方法で、所得を少なくして脱税をしていたと考えられます。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定しますが、国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約80%くらいといわれています。
なお、今回の報道では、既に修正申告を済ませているとされています。
修正申告とは、確定申告で過小な申告を行っていた場合に、正しい内容に修正して申告するものです。告発された後、検察官が起訴するか否かを決めますが、その判断に際し、既に修正申告をしているかどうかということは重要な事実です。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合、法人の実質経営者等には執行猶予付きの判決が下されますが、懲役刑のみならず、罰金刑が課される場合もあります。
罰金の額は、法人税や所得税の場合、脱税額の20~30パーセントであるのが通常であり、本事例では、約1億700万円の法人税を免れたということから、2000~3000万円くらいの罰金額が予想されます。
刑事告発を受けたら
脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。
脱税事件において刑事告発されても不起訴となる場合について

脱税で刑事告発されたら必ず起訴されるのでしょうか、逆にいうと告発されても不起訴となる場合があるのでしょうか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
刑事告発と起訴
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始し、捜査が行われた結果、犯罪の嫌疑が認められれば、起訴されることになります。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
※脱税事件の流れについてはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_nagare/
判決
国税庁が令和5年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和4年度中の判決件数61件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています、このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
脱税で告発された場合、不起訴となる場合があるのか
既に述べたように、告発を受け、検察でさらに捜査が行われた結果、犯罪の嫌疑が認められる場合には、起訴されることになるのですが、検察統計によると、租税に関する直接税(所得税法、法人税法、相続税法、地方法人税法)関係の犯罪及び間接税(酒税法、消費税法)関係の犯罪を合わせた起訴率は、平成30年から令和4年の5年間をみるといずれも80%を超える高率で推移しており、90%を超えている年もあります。
国税局の査察部が調査を遂げた後、検察官と国税局の間で会議(告発要否勘案協議会)が設けられています。起訴率が高いのは、同会議で告発するかどうかの判断がなされ、検察官によって告発を受理することが認められた事件だけが、実際に告発に至っているという実情があるからです。
どのような場合が不起訴になっているのか
検察統計によれば、少数ながら、告発されても不起訴となっている者がいることも事実です。
ただし、脱税の共犯者等が不起訴になることはあっても、納税義務者が不起訴となることはまずありません。納税義務者は、脱税の主犯であり、脱税によって利益を得ていると考えられるからです。
起訴されない場合とは、納税義務者以外の者で
①経理担当者として脱税に協力し、納税義務者との間で脱税の共謀が認められるものの、特別な利益(脱税に協力したことのボーナス等)は得ておらず、納税義務者の指示に従っただけである者
②領収書や請求書等を偽造して脱税に協力しただけの者、すなわち、幇助犯にとどまる者
等の場合が考えられます。なお、この①,②の場合、脱税に協力していたとしても、そもそも告発されない可能性もあります。
逆に、②の場合のように、脱税への関与が小さいと考えられる者でも、その報酬の額によっては、起訴されることもあり得るので注意が必要です。
起訴されないために重要なこととは
起訴をするかどうかの決定権限は検察だけが持っています。そのため、起訴されないためには、検察に意見書を提出するなどして、起訴されないように積極的に意見を述べる必要があります。
具体的には、犯罪の嫌疑自体がないこと、嫌疑があったとしても脱税への関与が小さく、報酬も得ていないなど、起訴すべき事案ではないことを検察に対して積極的に意見し、かつ、実際に説得することができるかが重要です。
そこでは、こちら側の主張を根拠付ける資料を可能な限り収集し、検察に提供できるか等も重要なことになります。
最後に
脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
納税義務者でない場合、たとえ告発を受けたとしても、脱税事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れる可能性が出てきます。
【制度解説】青色申告制度

青色申告制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 青色申告とは
青色申告とは、税務署長の承認を受けて、青色の申告書を用いて行う納税申告のことをいいます。
各事業年度の所得に対する法人税や不動産所得・事業所得または山林所得を生ずる業務を行う個人の所得税などについて認められています。
青色申告は、帳簿書類を基礎とした正確な申告を勧めるための制度であり、青色申告を行うことに対する特典が用意されています。
2 青色申告における特典
青色申告を行うことによって享受できる特典には、次のようなものがあります。
青色申告を行った者に対しては、青色申告特別控除という制度が設けられており、簡単にいえば、支払うべき税金を減らすことができます。
また、所得税法・法人税法および租税特別措置法の規定の多くは、青色申告の場合に限って適用されることになっています。
こうしたことと同様に、青色申告と白色申告(通常の納税申告)を通じて適用される措置についても、青色申告を行った者により多くの利益が与えられているものもあります。
つまり、青色申告を行った者だけが税制上の優遇措置を受けることができるとされています。
その他、青色申告に対し、更正(間違った申告内容を正すことです)が行われる場合、推計によって行うことができないといった違いもあります。
3 青色申告を行うためには
先ほども少し説明しましたが、青色申告を行うためには所轄税務署長の承認を受ける必要があります。
この承認を受けようとする者は、一定の事項を記載した申告書を税務署長に提出する必要があります。
4 青色申告の承認の取消し
青色申告を行うために上記の承認を得たとしても、一定の事実が存在する場合には、税務署長は、その承認を取り消すことができるとされています(所得税法150条1項、法人税法127条1項)。
その一定の事実とは、
①その年における帳簿書類の備え付け、記録または保存が財務省令で定めることころ、または電子帳簿保存法の関係規定にかかる財務省令で定めるところによって行われていないこと
②その年における帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと
③その年における帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽しまたは仮想して記載・記録し、その他その記載・記録事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること
④確定申告書をその提出期限までに提出しなかったこと
⑤連結納税の承認取消(④、⑤については法人税法のみ)
が挙げられます。
なお、現金売上の一部等を除外した帳簿書類を作成した上で内容虚偽の青色申告書を提出し、法定納期限までに納付すべき税の一部を納付しなかった場合において、青色申告承認処分が過去に遡って取り消され、先ほど説明した特典がなかったもの(たとえば、青色申告控除が受けられなくなるなど)として、その分についても納付すべき税額に含まれるかが問題となった事案において、判例は、その部分についても納付すべき税額に含まれるとしています(最高裁昭和49年9月20日判決・刑集28巻6号291頁)。
過去に遡って、その分の税金を納める必要があるとすれば、その金額は高額になる可能性も十分あります。
税務調査を受け、結局、青色申告の承認が取り消される可能性が出てしまった場合には、少しでも負担を減らすことができる道を模索する必要があります。
また、税務調査の結果、脱税しているとされた場合、その金額などのよっては、刑事責任を問われる可能性も出てきます。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反、法人税法違反など多数の事件を取り扱っています。税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
所得税における所得の帰属について

所得税において所得が誰に帰属するか、すなわち所得の人的帰属の問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
実質所得者課税の原則
所得の帰属とは、ある所得があった場合にそれを誰に帰属すべきかという問題です。
所得税における所得の帰属について、所得税法12条に、実質所得者課税の原則と呼ばれる規定が置かれており、「資産又は事業から生じる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律を適用する」としています(なお、法人税法11条、消費税法13条にも同様の規定があります。)。
たとえば、その仕事の性質上、名義人の名義を借りて仕事をしている場合には、その名義を貸した名義人ではなく、借りた名義を利用して仕事をし、その利益を得ている人が申告、納税をする必要があることになります。
この規定の理解の仕方(解釈)には2つの見解がある
まず1つの考え方は、所得税法12条は、単なる名義人と法律上の真の所有者がいる場合に、法律上の真の所有者に課税することを定めたものと解する立場です。この考え方は、法律上の形式と法律上の実質を区別し、実質に即して帰属を判定すべきであるというものであり、法的帰属説といわれます。真の法律関係を明確にすべきことは、税法の場合に限らず全ての法領域において当然の要求ですから、この考え方によれば、実質所得者課税というのは税法独自の原則ではなく、当然のことを規定した確認規定ということになります。
もう1つの考え方は、所得税法12条は、法律上の所有権者と経済上「収益を享受する」者とがいる場合に、経済上「収益を享受する」者に課税することを定めたものと解する立場です。この考え方は、所得の法律上の帰属と経済上の帰属を区別し、経済上の帰属という面に着目して帰属を判定すべきであるというものであり、経済的帰属説といわれます。したがって、実質所得者課税の原則は、税法固有の原則であるということになります。
条文上はいずれの解釈も可能です。しかし、法的実質と経済的実質が異なる場合とは具体的にどのようなケースであるのか必ずしも明確ではありません。私法上の法律関係に応じて課税関係が決まる方が納税者の予測可能性が高まること等から、法的帰属説の考え方が通説とされています。
事業から得られる所得の帰属について
所得税基本通達12-2は、「事業主から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者(「事業主」という。)がだれであるかにより判定するものとする。」と規定しており、事業から得られる収益は、基本的にはその事業の事業主(事業を経営している者)に帰属すると考えられますいます。)。法的帰属説の立場からは、「事業主」とは、法律的な意味でその事業を実質的に経営している者(経営主体)だということになります。
しかしながら、事業主が誰かの判断は必ずしも容易なことではありません。特に親族による家族経営の場合の事業主の判定には困難が伴います。そのため、課税実務においては、通達でいくつかの判断基準が規定されています。
所得税基本通達12-5によると、生計を一にする親族間における事業(農業を除く)の事業主がだれであるかの判定は、まず、その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者を事業の事業主と推定します。
次に、誰がその事業の経営方針決定につき支配的影響力を持つ者か明らかでないときは、原則として、「生計を主宰している者」が事業主と推定します。
この点は、判例があり、歯科医師の親子が親の歯科医院でともに診療に従事していた場合の事業主の判断が争われた事案(親子歯科医師事件)において、裁判所は、ある事業による収入はその経営主体であるものに帰したものと解すべきとした上で、従来父親が単独で経営していた事業に新たにその子が加わった場合においては、特段の事情のない限り、父親が経営主体で子は単なる従業員としてその支配に入ったものと解するのが相当であるなどとして、医院の経営に支配的影響力を有しているのは父であり、その経営による本件収入は経営主体である父に帰すると判断しています(東京高判平成3年6月6日訴月38巻5号878頁)。この判決も上記通達と同様の考え方に立つものと考えられます。
最後に
誰に課税されるのかという判断を間違うと、課税されるべき人の確定申告が間違いであったということになり、過少申告加算税などのペナルティを受ける可能性があります。所得の帰属について迷った場合には、税理士ないし弁護士等の専門家に早めに相談しましょう。(課税処分に納得ができない場合には、こちらの記事も参照してください。https://datsuzei-bengoshi.com/fufukumousitate/)
確定申告をしなかったことが重大な犯罪になる場合とは

確定申告を怠った場合の刑事責任について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 事例
一人親方として、内装工事などを行っていたAさんは、売上の管理を怠っていたため、売上を、自身の名義の口座に入れてもらう場合もあれば、妻であるBさんの口座に入れてもらうようにしていました。
Aさんは、開業以来、自身の名義の口座に入った分のみについて確定申告を行ってきましたが、次第に、申告して納付するのは馬鹿馬鹿しいと考えるようになり、令和○年分は確定申告をしませんでした。
2 確定申告をしないとどうなる?
所得税の納税義務は期間の経過によって成立し、一定の確定手続を経て納付すべき税額が確定します。
納付すべき税額を確定させる手続が確定申告と呼ばれるものです(所得税法120条1項)。
会社員のように源泉徴収される人は、その収入のみであれば確定申告を行う必要はありません。
しかし、今回の事例のような個人事業主として収入を得ている人や、会社員であっても副業や投資などで収入があった人については、確定申告を行う必要があります。
正当な理由がなく確定申告を行わない人については、単純不申告罪として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するとされています(所得税法241条本文)。
また、故意に確定申告書等を提出しないことにより租税を免れた場合、単純不申告逋脱(ほだつ)罪として、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または罰金を併科)に処するとされています(所得税法238条3、4項)。
3 Aさんはさらに重い罪に問われる?
ところが、Aさんのような人が、上記の犯罪ではなく、(狭い意味での)逋脱罪(以下、単純に「逋脱罪」というときは、狭い意味での逋脱罪をいいます。)とされた事例があります。
この場合の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(または罰金を併科)とされています(所得税法238条1項)。
逋脱罪とは、「偽りその他不正の行為により」、所得税を免れた場合をいいます。
「偽りその他不正の行為」とは、逋脱の意図をもって、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行うことをいいます。
そうすると、Aさんは、売上の一部を妻名義の口座に入れてもらっていたにすぎず、税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行ったとはいえないようにも思われます。
しかし、判例は、売上を帳簿に正確に記載していたところ、その一部を仮名・借名の預金口座に入金保管した事例で、逋脱罪の成立を認めました(最高裁平成6年9月13日決定・刑集48巻6号289頁)。
この決定では、「仮名又は借名の預金口座に売上金の一部を入金保管することは、税務当局による所得の把握を困難にさせるものであることに変わりはなく、ほ脱の意思に出たものと認められる以上、所得秘匿工作に当たる」としています。
4 予想される問題点・弁護活動
ここで注意すべきなのは、売上を仮名や借名の預金口座にて入金管理していたことで直ちに逋脱罪に該当するわけではないと考えられることです。
当然ですが、たまたま手違いでそうした預金口座に入金されていたということであれば、逋脱罪が成立しない可能性もあり、結局はケースバイケースと言わざるを得ません。
Aさんは、税務調査や査察を受け、さらには検察官へ告発されるということが考えられます。
そうした手続の中で、税務署、国税庁、検察庁にどのように説明していくかというのは非常に重要になり、弁護士によるアドバイスを事前に聞いて、そうした調査などに対応していく必要があります。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反など多数の事件を取り扱っています。所得法違反の疑いがあるとして税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
【制度解説】通告処分とは

通告処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
そもそも通告処分とは何でしょうか
通告処分とは、間接国税の犯則事件(租税法に関する事件のことであり、個々の租税の賦課、徴収及び納付に直接関連する犯罪のことです。)で、情状が罰金以下の刑に相当する場合に、刑事手続きに先行して行われる一種の行政処分です。すなわち、通告処分は、刑事訴訟手続によらない行政上の科刑に代わる手続といえます。この処分は、かつては、国税犯則取締法に定められていましたが、現在は、国税通則法(2018年4月1日施行)に定められています。なお、関税法にも同様の規定が置かれており、間接国税扱いする地方税にも、この通告処分が適用になります。
ここで、間接税とは、税金を負担する人と税金を納める人が異なる税金のことであり、間接税の代表として消費税がありますが、租税犯則手続上、間接国税として取り扱われる消費税は、課税貨物に課される消費税です。
また、酒税やたばこ税等も租税犯則手続上、間接国税として取り扱われます。
通告処分に基づく納付を履行すれば、検察官による起訴を免れることができる。
通告処分において重要なことは、課税庁が罰金などに相当する金額などを通告し、納税者がそれを履行すれば検察官に告発しないとされていること、すなわち、その場合には、検察官による起訴を免れるという点です。
国税通則法上、国税局長・税務署長は、租税に関する犯則事件の調査により犯則の心証を得たときには、その理由を明示して、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を、指定の場所に納付すべき旨を通告しなければならないとされています。
通告処分を受けた犯則者は、それを履行するか否かは自由です。しかし、通告を受けた翌日から20日以内に履行しなかった場合、検察官に告発されます。
また、通告しても履行する資力がないときや、悪質な脱税など情状が懲役刑にあたると認められるときには、通告処分をせずに直に通告されます。
なお、所得税や法人税など税金を負担する人と税金を納める人が一致する直接税の犯則事件の場合、通告処分は適用されません。したがって、この場合、直ちに検察官に告発されます。何故、直接国税と区別して間接国税にだけ通告処分が認められているかですが、間接国税の犯則事件は直接国税の場合と比べると件数が多く、通常の刑事事件によるより、行政による簡便な手続による方が犯則者の利益にかなうため、と説明されています。
通告処分の手続
通告処分は、通告書を作成し、これを犯則者に送達することによって行われます。通告書には犯則の理由、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を明示し、指定の場所に納付するように書面で通告することになっています。通告処分は、通告書が犯則者に送達されたときに効力を生じます。
通告処分の問題点
行政権が、通告処分により、刑事訴訟手続によらない行政上の負担を課すことは、実質的に裁判を受ける権利を制限することにならないかという問題があります。この点は、最高裁の判例があり、最高裁は、通告処分の履行は、犯則者の自由意思に任されており、履行を拒否して、犯則事実の有無を裁判所で争うことができるので、裁判を受ける権利(憲法32条)を侵害していないとしています(最判昭和47.4.20・民集26巻3号507頁)。
最後に
脱税が発覚した場合、消費税等について通告処分に基く納付をすれば、検察官による告発・起訴を免れることができます。脱税について、刑事事件化するのを免れる方法などについてお悩みの方は、すぐに弁護士に相談しましょう。
【事件解説】海外取引をめぐる脱税事件の捜査を詳しく解説

海外取引をめぐる脱税事件の捜査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。
事件の概要
甲は、PC関連機器の製造販売等を目的とするA会社の代表取締役として、同社の業務を統括していたものであるが、A社の業務に関して法人税を免れようと企て、令和3年7月7日から令和5年6月30日までの2事業年度において、外国(C国)所在のX社からゲームソフトの版権を購入したと仮装して架空外注加工費数億円を計上するなどの方法により所得を過少に申告して法人税を免れたという海外取引をめぐる事案です(実在しないフィクションの事案です。)
甲は海外取引であればバレないと思っていた・・・
本件の脱税スキームは架空外注加工費の計上による期末利益の圧縮という極めてシンプルなものではありましたが、甲としては、海外の取引先であれば、査察は反面調査が難しいであろうし、検察の強制捜査も海外には及ばないだろうと考えていたので、かなりの自信をもっていたようでした。確かに、査察の調査も検察の捜査も、主権の及ぶ国内での活動が原則です。しかし、査察や検察は、そんなに甘いものではありませんでした・・・この事案、どのように脱税工作が暴かれていったのでしょうか・・・。
その内幕を見ていきましょう,
こうして事実は明らかにされていった・・・
甲は、査察に対して、X社からゲームソフトの版権を購入したのは事実であり、これによって計上した経費は正しい会計処理によっていると主張し、その主張に見合う契約書やその版権によって作成したソフトウェアのサンプルなども提出するなどしていました。
しかし,査察は以下のような事実をつかみました。
①A社がX社宛てに送金した資金の送金名目が版権購入代金などではなく、事務用品購入、家具購入などとなっていたこと
②上記①のX社宛ての送金の一部が、外国銀行の甲名義の預金口座に移されて、株式購入に充てられるなどしていたこと
③甲が提出したX社との契約書に記載された契約金額と実際の支払額が一致しておらず、契約金額自体の合理的算出根拠が判然としないこと
などの事実が次々と明らかになっていきました。
そして、これらの事実調査と並行して、国際的に企業リサーチを行っている民間信用調査機関に調査を依頼したところ、C国にX社の商業登記はなく、会社番号もC国の現地法人である別会社であることが判明しました。
告発、そして検察による強制捜査・・・
甲は、虚偽弁解を維持し続けたため、査察から刑事告発をされ、検察の捜査が始まりました。そして、甲は逮捕・勾留されて、検事による取調べにおいて事実を追及され、結局、「A会社に多額の利益が出ていたことから、今後の事業拡張の資金に充てようと考えて、海外取引による架空計上であればバレることもあるまいとの甘い見通しから今回の事件を起こした」旨の自白をするに至り、結局、起訴されて、有罪判決を受けました。
まとめ
海外取引を利用した脱税は、発覚し難いように思いますが、紹介した事案のように、国税局による査察調査や検察による脱税捜査は、そんなに甘いものではありません。いったん犯則嫌疑者としての容疑がかけらると、水面下において相当期間にわたって重厚な犯則調査が行われ、事実関係がどんどん暴かれていきます。
このような段階に至っては、もはや税理士だけでは対応できません。犯則調査は将来の告発、起訴にもつながる重要な局面ですので、少しでも早く刑事事件を専門に取り扱う弁護士に相談し、弁護士と税理士がチームを組んで対応できる態勢を立てた方がよいでしょう。
